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書評<妙なる技の乙女たち>


今から約50年後の世界。カーボンナノチューブを使用したテクノロジーが開発され、それを使用した軌道エレベーターが実現。本格的な宇宙開発が始まっている時代。
軌道エレベーターが設置された東南アジアのリンガ島の海上都市には、それに伴って様々な業種・国籍の企業が進出していた。そこに生まれたのは民族も宗教も異なった人々の生活空間だ。この物語は軌道エレベーターを中心に、様々な職業に就く女性たちのオムニバスである。現状に不満を抱えるデザイナー、楽天的な保母さん、海上都市を行きかう水上タクシーのパイロット。プライドと現実の葛藤を抱えながらも、前向きに生きる女性たちを描く。

軌道エレベーターの行き着く先ではなく、その麓で働く人々を主人公に据えた”現実の未来”が見えるSF。主人公の女性たちの職業は現在のそれと延長線上にあるが、そこにうまくSF的な要素を盛り込んでいる。女性たちが主人公であることよりも、彼女らのその前向きな姿勢が眩しく見える(特にオッサンには)。
その女性たちの生き方も含めて、楽観主義的な物語かと思うとそうではない。本書で描かれる未来の地球は、カーボンナノチューブの開発によりいわば”宇宙開発バブル”が起きている状況だ。画期的なテクノロジーの開発により宇宙に本格進出しても、その熱もやがては醒め、人々は重力井戸に戻っていく。月着陸、スペースシャトルと続いた熱が冷め、宇宙開発が停滞している2008年現在のように。そうならないために突破すべき壁は何か。”現実の未来”を描きながらも、人類が宇宙に定着するためにやるべきことを示唆した、著者らしいバランスの取れたSFだ。

初版2008/02  ポプラ社/ソフトカバー

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