書評<港区ではベンツがカローラの6倍売れている>
格差社会といわれる2008年の日本。報道ステーションあたりでよく訊く言葉だが、自分なんかはお金持ちの生活なんて想像もつかないし、逆に底辺部分の生活が想像つかないという人もいるだろう。この本ではベンツやクルーザー、別荘など分かりやすいアイテムを軸に、日本の天と地を調べたものである。
そうは言っても著者は”フェラーリ教”の信者を名乗るお笑い系自動車評論家なので、そう深刻な感じの本ではない。坊ちゃん育ちと自負する著者自らの人脈を元に、エネルギッシュなお金持ちの生活をレポートしたり、ある種のモラトリアム感さえ感じられる西成を取材する。もちろん、著者の主観だけではなく、そのレポートの裏打ちとして、各種の調査数字も掲載されている。
著者独特の文体のせいもあって、ベンツに乗るお金持ちの方が実は追い立てられ、縛られて生活していたり、軽自動車にビンボー人がお気楽に生活しているようにも見える。確かに、”格差社会”とは著者がいうように日本が均質化した社会構成から、良く言えば自由に、悪く言えばバラバラになりつつあることの結果なのだろう。それは田舎の身内を見れば分かることで、叔父、叔母はみんな結婚し、子供ももうけている立派な大人だが、自分の従妹を見渡すと、海外旅行大好き40代独身女、オシャレな40代子なし夫婦、オタクな30代独身男(オレ)、南米男と国際結婚する30代女など、はぐれ者がたくさんいる。それはいいことなのか悪いことなのか。30年ぐらい経たないと、歴史の評価はできそうにない。
初版2008/02 扶桑社/新書
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