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2008.04.15

書評<機関銃の社会史>


本書でいう機関銃とは、連射できる自動火器のことを広く捉えている。その原理の発明と実用化から、その能力を発揮した第1次世界大戦までを中心に、機関銃がいかに革命的な兵器として登場し、人類社会の歴史そのものを変えてしまったかを辿る。

機関銃の作動原理そのものの発明は決して新しいものではない。だが、治金技術や機械技術の発達により実用化されたのは、アメリカの南北戦争前夜のことだった。だが、既成の価値観に凝り固まったヨーロッパ各国の将軍をはじめとした士官たちは、機関銃の登場を重要視しなかった。戦争とは騎士道精神のもと、一対一で人間同士がぶつかるものだという価値観は、機関銃がアフリカの植民地の暴動を鎮圧するのに威力を発揮しようとも、人種差別という偏見も加わり、覆されることはなかった。
それが変わったのは、第1次大戦であった。産業革命がそれまで騎士のものだった戦争を国家同士の総力戦に変えていたことに、将軍たちは気づいていなかった。小数が配備されていた機関銃は、産業革命によって発達した機械技術の発達により完成の域に達しており、兵士たちの一斉突撃を容易に防御した。その現実を見た軍人たちは、産業革命によって発達した大量生産ラインに機関銃の増産を指示した。死傷した兵士の補充は、これまた産業革命によって発達した鉄道により、従来より容易に、大量に達成される。その兵士たちは、頑迷な士官たちの命令により突撃を敢行して機関銃により命を落とす。この3年も続いた凄惨な悪循環の中心にいたものこそ機関銃であった。戦争は、社会は、機関銃により永遠に変わってしまったのだ。
現代の目から見れば、銃火器の発達の歴史の流れの中に埋没している機関銃の登場が、いかに戦争を変え、歴史を変えたかを本書は明かしている。題目が”社会史”であるのはダテではない。

初版2008/02 平凡社/平凡社ライブラリー

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