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書評<不安な兵士たち>


本書はフランス人の女性社会学者が、丹念な取材と数多くの自衛官へのインタビューを元に、自衛官たちの内面と自衛隊そのものが持つ特殊性を研究したものである。
いうまでもなく、自衛隊は憲法違反の存在であり、戦後長らくは日蔭者に甘んじてきた。また、軍隊としては解散させられながら、国防の機能を復活させるために、旧軍の伝統を一部引き継いでいる。このように根本的な矛盾を抱えた、総勢24万人もの組織の存在は、社会学者の研究対象として興味深いことは理解できる。
とはいえ、自衛隊が抱える問題は、小難しく解釈すればするほど、他国の軍隊や我々の所属する一般社会の組織の抱える問題に近づいていく、というのが読後の印象。自分たちの仕事へのプライドをどう担保するか?軍隊という組織の中では、まだまだ異分子である女性問題。どこの軍隊でも、どこの会社でも、まだまだ普遍的な問題だ。
冷戦終結後、軍隊の存在感が相対的に薄くなっている現在(もちろん、アメリカ以外のハナシ)、こうして自己の存在矛盾に長いこと悩んできた自衛隊の方が、むしろ社会の変化に素早く馴染んでいるのではないか?というのが多分、本書の結論。不祥事の問題はあれど、昨今の自衛隊の変化を見ているとなるほどな、とは思う。
本論とは別に印象に残ったのは、著者が各駐屯地の歴史資料館をずいぶんと重視していること。著者は、そこに旧軍との繋がりと歴史の作為的選択を見出している。駐屯地祭りに顔を出しても、そんなに重要視されているようには感じられないんだけどなあ。
ともあれ、リベラルな社会学者から見ると我が自衛隊がどう見えるか?それなりに興味深い研究書です。

初版2008/03 原書房/ソフトカバー

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