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2008.04.23

書評<チャーリー・ウィルソンズ・ウォー >

ときはアフガニスタンで、ムジャヒディンたちがソ連軍に絶望的な抵抗を続けていた80年代。”チャーリーズ・エンジェル”と呼ばれる美人秘書たちを侍らせ、スキャンダルをたびたび起こしながらも、選挙区の人々にはなぜか愛されるアメリカ下院議員、チャーリー・ウィルソンは、とある女性との出会いにより、心に秘めていた正義を呼び起こし、ムジャヒディンたちを支援することを心に決める。議会や予算委員会で巧妙に振舞いながら、ムジャヒディンたちを支援する予算を取りつけるチャーリー。その途上、彼は支援の実行部隊であるCIAの中でも異端児であるガストと出会う。2人が出会った後、ムジャヒディンたちへの支援は急速に変化し始める。


近日公開の映画ではハリウッドらしく骨抜きにされているようだが(予告編と本編にエラく落差があるらしいとの情報も)、原作となる本書はアフガニスタンでソ連を撤退させたムジャヒディンたちの戦いの影で繰り広げられた、アメリカ議会とCIA内部の戦いの実相を、2人の男を中心に描いた硬派なノンフィクションだ。なにせ読了に1カ月かかった(笑)。
共産主義者たちを苦戦させるためにムジャヒディンたちをアメリカが支援していたのはよく知られている話だが、本書はそれがたった1人の、類い希なる個性を持った下院議員を中心に廻っていたことを明らかにする。
意外な事実の指摘もある。それはウィルソンはじめとするアメリカ当局の上層部の人たちが、ムジャヒディンに魅せられていたことだ。アメリカが、ソ連を倒すための手段として彼らを利用していたことには違いないが、イスラムの戦士を支援する理由は決してそれだけではなかった。

9.11同時多発テロ後、アメリカのいう”テロとの戦い”の主敵が、アメリカがアフガニスタンで育てたムジャヒディンである皮肉がときどき指摘される。それがアメリカ人の”悪意のエゴ”ではなく”善意のエゴ”でもたらされたという、2重のアイロニー。”チャーリーの戦争”をとおして、そんなことが透けて見える気がする。

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