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2008.04.01

書評<軍事とロジスティクス>


古来より戦争計画において何より大切なのは”補給”である。特に第1次大戦以後は消耗戦かつ総力戦であり、補給の問題をかかえていない軍隊など存在しない。本書では、補給をもっと広い範囲の意味を持つ”ロジスティクス”に置き換えて、アメリカを中心に、現代の軍隊がどのような手段を持って展開し、その前線の部隊に対してどのような手段で補給しているのかを解説していく。
とはいっても、アメリカ軍が民間に比べて特別、高級なシステムを持ってるわけではない。たとえば、ワタシの勤めているとある食品メーカーに置き換えてみる。本社工場は広島だが、商品は埼玉や名古屋、そして札幌に保管する。これが”事前集積”である。工場→倉庫→得意先という商品の流れはバーコードで逐一追い、入荷日時や行き先の変更に対応できるようにする。これがアメリカ軍のいうところの”RFIDタグ”である。民間では、倉庫の在庫を過去のデータから自動発注するところまで進んでいるが、さすがのアメリカ軍もそこは導入検討中のようだ。ロジスティクスは、こんな風に身近に置き換えると分かりやすい。

本書の指摘で重要だと思うのは、進む軍の業務の民間委託が果たして経費節減になっているのか、ということである。現代戦は後方も前線もなく、危険が少ないとされ民間委託される補給部隊ももちろんターゲットになる。そうなると、保険代金その他で軍そのものが輸送を担当するよりも高くつき、さらに危険が増大すれば民間人は仕事を放棄することもありうる。このようなリスクと国家安全保障を天秤にかけることができるか?個人的には大いに疑問だ。

初版2008/03  日経BP社/ハードカバー

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