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書評<人類の消えた世界>

一瞬にして、まではいかなくても、短期間で人類のみが地球上からいなくなってしまったら、地球にどんなことが起こるのか?地上には摩天楼が聳え立ち、地下にはトンネルが縦横に走るニューヨークのような大都市。人類の増加を支えてきた耕作地。現代文明を支えるコンビナート。影響が消え去るのに地質年代的な時間を要する放射性物質や化学物質。人類が開拓してきた土地はその手を離れるといかなることが起こるかをシミュレートする。

久々に読むのが止まらないノンフィクションだ。著者が世界中の様々な場所の専門家への綿密な取材を通して、人類がいかに地球の動植物相を変えてきたか、そして突然その手を止めたら、人類文明の象徴である様々な施設にどのようなことが起こるかを思考する。堅牢に見える巨大建築物はメンテナンスの手が止まればたちまち崩壊の危機に瀕し、肥料散布がないとやっていけそうにない耕作地はあっという間に自然に戻ろうとする。逆に、化学物質は紫外線などに影響を受けながらも、長い時間をかけてその痕跡をとどめる。どちらも、すでに現実に起きている事例だ。
著者はこのシミュレートを通して、結論を声高に訴えているのではない。自分としての捉え方はこうだ。人類は生誕の地であるアフリカから旅立って以降、様々なものを破壊し続けている。なのでとても脆そうに見える自然だが、その回復力や適応力は想像するよりはるかに高い。むしろ、脆弱なのは我々の文明の方だ。なので、人類が長きに渡って繁栄するために、何かを始めたり、やめたりするのに遅すぎることはない、と。
読む人によって結論は様々だろうが、とにかく本書に書かれている知識を知るだけでも、身近な建物や道路、田畑に対する見方が変わる一冊だ。

初版2008/05 早川書房/ハードカバー

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Comments

ディスカバリーチャンネルでも
似たようなシミュレーションを見たような記憶があります。
人間が自然のバランスを壊したことばかりが
世の中では強調されるようですが、
しかし
その人間が作った部分もそれなりにバランスは保っている。
ところがそのバランスは
常にメインテナンスを行うことで保たれている。
うーん、日頃気にもしていませんが、
考えてみると大事なことです。
直接関係ないのですが、
古い船舶を水に浮かべて保存する場合、
常にメインテナンスをしないと
たちまち傷んでいつか沈んでしまうとか。

Posted by: みに・ミー | 2008.05.14 at 22:05

 今日読み終わったトム・クランシーの「レインボー・シックス」、まさにご紹介の本が書いているような世界を実現させようとする集団が敵役でしたねぇ。もちろん自分たちはその世界で数少ない人間として君臨しようとするわけですが、現実問題として地球上にたった数百人が残ったところでたちまち大自然に飲み込まれてしまうでせうなぁ。

Posted by: KWAT | 2008.05.15 at 01:31

>みに・ミーさん
実質上”倒産”した北海道の夕張市では、様々な建物などが早速、メンテナンス不足や雪の影響で損傷したという地方ニュースが伝わってきています。人間の力など、そんなものなんでしょうね。

>KWATさん
”人口減らし”はときどき言われることですが、それなりの時間をかけて自然の方も合わせてきたわけですから、<レインボー・シックス>のあーゆーのは、まさに非現実的な”思想”といえるでしょうね。

Posted by: ウイングバック | 2008.05.15 at 15:02

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