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書評<メシアの処方箋>

地球温暖化により氷河が溶け出したチベットの高地で、土砂災害をきっかけに”ノアの方舟らしきもの”が発見される。その中から出てきたものは、ハスの花模様が描かれた木簡だった。木簡に書かれた模様がDNAマップであることを突き止めた主人公は、”知りたい”という衝動に突き動かされるまま、ネットで知り合った専門家たちとともに、ホモサピエンスのDNA情報を改変した”救世主(メシア)”を生み出そうとする。

最初は方舟からもたらされた情報を解読するミステリー、中盤は主人公たちが生命倫理と葛藤しながらも救世主を生むべく突っ走る工程を描き、最後はアクションと人間にとっての癒しや救いの意味を問う。いろんな要素を詰め込んだSFだ。ネタバレになってしまうが、救世主といっても、壮大なものが出てくるわけでもない。人間と関係性が持てる存在であり、それがもたらす救いや導かれる理想も我々が普段感じられるものだ。あくまで等身大の人間が中心にいる、まさに著者独特の”青春SF”である。
今回の物語の周辺情報である遺伝子に関する専門用語も、事実として感じられるくらいにリアルに、それでいて物語の邪魔にはならないように簡略化しながら使っていくそのバランスは秀逸だ。


初版2007/05 角川春樹事務所/ハルキ文庫

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