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2008.07.10

書評<シー・パワー>

海上交通路を障害なく使用することを確保し、その妨害は実力をもって排除すること。いわゆる制海権を確保するためのシー・パワーとは、いかなる国家戦略のもとに成り立ち、その歴史を重ねてきたか?本書はその初歩的な教科書である。マハンをはじめとする古典的な海上戦略論の基本をまず押さえ、そこからシーパワーの歴史、我が国におけるシー・パワーの発展とその断絶、また潜水艦や水陸両用戦、空母保有の得失など、各論を展開している。
本書を読んで感じることは2つ。1つめは本書に限らず、現代のシー・パワー論の半分くらいはほぼ、アメリカ海軍の戦略となることである。空母保有国は多々あるものの、一国でその空母を”戦争”に投入できるのはほぼアメリカ海軍だけだし、大規模な着上陸作戦を展開できるのもアメリカ海軍だけである。シー・パワーを語る場合、アメリカとそれ以外に分けて考えなければならないが、本書ではそこまで達していない。少数の空母や強襲揚陸艦を有するイギリスやフランスの戦略を紹介してもよかったと思う。
2つめはそのアメリカ海軍が保有する空母機動艦隊と水陸両用艦隊、そして将来に向けてのシー・ベーシング構想が、その存在理由に長々と説明がいることである。本書の各論でそれが論じられるが、必死でその存在理由を探しているように感じられる。もちろん、柔軟な対応のためにこれら通常戦力が必要なわけだが、空軍との予算獲得の戦いに不利を感じるのもまた確かだ。
とまれ、海上戦力の関する考察の基本論としてはよくまとまっている本書は安全保障の教科書として最適であろう。

初版2008/05 芙蓉書房出版/ハードカバー

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