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2008.08.06

書評<サッカー戦術クロニクル>

モダン・サッカーは、1974年のワールドカップに前後して生まれた”トータル・フットボール”の系譜の途中にある。固定したポジションを攻守を行うのではなく、ポジションを崩しながらも前線から守備を行い、そして攻めていく。激しくも美しいサッカーの”理想”。本書はトータル・フットボールを軸にしながら、戦術がどのような進化を遂げていくかを解説していく。ポジショニングや選手がどのように動きながらゲームを進めていくかという戦術的な側面と、それを実行してきた監督や選手の個性という側面を、適度に織り交ぜながら歴史を辿っていくことにより、、活字にすると難解になりがちなサッカーの戦術を理解し易くしている。

著者の解説を読んでつくづく思うのは、トータル・フットボール以後、サッカーの戦術とは選手をはじめクラブの財政や国の政治情勢といった様々な背景に表裏一体であるということだ。例えば、一部の解説者は最新のフォーメーションを導入すれば全て解決、みたいな言い方をするが、むしろフォーメーションはプレイヤーの個性を最大限発揮するためにあるのだと、本書では感じさせる。確かに新たな戦術が生まれるたび、それに対抗する戦術が生まれる。だが、それを実行するのは選手たちであり、その力がなければ戦術など意味がない。戦術によって名選手が生まれるのではなく、名選手を際立たせるのが戦術である。

ライターによって事象の捉え方が極端に変わるのがサッカーの特徴の1つだが、人とシステムの捉え方のバランスがよく取れている好著である。

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