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2008.08.12

書評<生命と非生命のあいだ>


この大宇宙に我々以外の生命は存在するのか?真剣に議論すればするほど、その可能性は薄くなっていく。だが、生命そのものの定義を捉え直せばどうなるか?本書はまず地球上の生命を新たに定義し、そして太陽系の各惑星、またその衛星に生命が存在するかを探っている。
第一部は生命の起原と定義。地球上の生命は1個の細菌の至るまで、DNAという設計図からつくられた”親類”であり、いわゆるところの炭素生命である。そして代謝しながら生命を維持し、増殖し、進化していく。DNAではなく、この「代謝しながら生命を維持し、増殖し、進化していく」を中心に据えると、長らく論争の的になっていた「ウイルスは生命か否か」というテーマをはじめ、生命の範囲は拡がりを見せる。この根拠は昨今の主流である”RNAワールド(DNAの前段階としてRNAから生命が発展してきたという説)”と、海底の極端な環境に住む嫌気性細菌の存在である。DNAは我々のいわばセントラル・ドグマであったが、それを転写し、情報を運び、タンパク質を実際に作るRNAもまた、生命に不可欠な存在である。硫黄を栄養分とする嫌気性細菌は、我々の持つ生命のイメージとは程遠いが、それでも我々の遠い祖先の系統樹の中にある。このように、生命の幅はどんどんと広がっているのだ。
第2部はそれに基づき、太陽系の生命の存在を探る。宇宙探査が進んで以来、太陽系に生命が存在すると信じている人はめっきり減ったが、前述のように生命を定義しなおすと、火星や土星の衛星であるタイタンといった星に生命の存在が疑われるようになってくる、というのが筆者の主張だ。
おもしろいのは、NASAの探査機が生命を他の惑星に持ち込んでいるのではないかという可能性。パンスペルニア説(生命の起源は宇宙から運ばれたという説)を我々は自ら実行しているのかも知れない。

このように、2つの視点から”生命とは何か”を問い直しているのが本書だ。本書の主張はたぶん、”常識的”にみれば異端なのだろう。それでも、火星やタイタンにそこはかとなく生命がいるような気もしてくる。他の正統派の科学書と比較して読むとまた面白い。

初版2008/05 青土社/ハードカバー

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Comments

RNAとは確か、DNAをコピーしたもので、そのRNAを元にたんぱく質(アミノ酸)が生成されると聞きました。DNAは簡単なよっつの塩基で成り立っており、(アデニン・グアニン・シトシン・チミン)決まった法則で組み合わさっており、これに従って様々な種類のたんぱく質が作られます。

天体に生命体といえば、月面に残された「サーベイヤー3号」のカメラが一年くらい置かれたものから、連鎖球菌が検出され、月にも生命体がいると話題になったことが一時期ありました。
しかし、地球から持ち出された微生物で、月が汚れた物と断定されました。

地球以外の生命体はまだまだ謎が多く、今後の調査を待つしかありませんね。

レスありがとうございます。
F-18はドタキャンになりましたか。北海道に行くホーネットは多分、海兵隊のレガシーホーネットでしょうかね?残念です。
米軍基地のイベントは、フライトがない代わりに、たくさんの出店が並び、アメリカンフードやクラシック・コカコーラを飲み食いで楽しめます。
ちなみに4・6の厚木では、「VFA-195ダムバスターズ」のオリジナルDVDが2000円で販売され、これがすごい迫力、パイロット・空母関係者が撮影しただけあって、ほかのビデオではなかなかみられないすごさでしたね。

横田が待ち遠しいですなあ。

>きよかずさん
宇宙の生命体というテーマは別にして、DNA万能主義からRNAへ研究の対象が移っているような気がします。生命科学の研究も、トレンドがあるのですね。

今年の札幌ページェントは主催者の土建会社の不祥事により、どうやら開催がなさそうです。実機を見る機会が減るのは、なんにしても残念ですね。

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