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2008.08.02

映画<スカイ・クロラ>を見てきた

押井守監督の新作<スカイ・クロラ>を見てきた。

テクノロジー・レベルはおそらく1960年代。しかしながらタービン・エンジンは実現していない架空の世界。民間会社がショーとしての戦争を戦い、人々はブラウン管を通して戦争が何たるものかを感じながら、平和を維持している世界。そして、その戦争の担い手が、キルドレと呼ばれる思春期から年齢を重ねない”子ども”のパイロットたちである。主人公、カンナミ・ユーイチは小さな基地に配属されたパイロットである。その基地司令はクサナギ・スイトという名の同じくキルドレだった。戦闘を繰り返しながら、ユーイチは謎が多い彼女との距離を縮めていく。

以下、ネタバレありで感想。自分は押井守信者なので、割り引いて読んでください。

まずストーリーから。カントクの作品としては例外的にメッセージが明確に伝わる作品である。なにせ原作でさえ言外に匂わせるだけのメッセージを登場人物たちが明確に伝えてくれる。少なくともブラウン管の中ぐらい、戦争をしていないと平和を実感できない世界と、それを構成する大人たちの愚かしさ。”永遠に繰り返す日々”を演じる”永遠に思春期の子供たち”の苦悩。今の現在の日本には「いつまでも子供でいたい若者」と「いつまでも子供でいてほしい親」で溢れているが、それが本当に実現すれば、いかなる葛藤が待ち受けているのか。監督が「若者たちへのメッセージ」というのも納得である。
次に作画。原作のハードカバーの表紙は「様々な色の空」だが、本作も徹底的に空の色にこだわっている。映画館から出たあとに空を眺めてみたが、現実の曇り空の方が、圧倒的に情報量が少ないと思えるほどだ。空中戦の描写も凄まじい。全体として”飛行機を追う別の飛行機のカメラ”とパイロット・ビューで構成された映像は迫力に溢れ、”キメ”のシーンはスローモーションになるサービスぶりだ。個人的にはやりすぎの感がなくもないが。
総じて、エンターテーメントとして優れた作品に仕上がっている。やはり、カントクには別のシナリオライターがつくべきであることの証明だ。


ただね、観客動員的にはたぶんツライことになりそう。郊外のシネコンで土曜日の真昼間から見る映画では確かにないが、公開初日である。なのに悲惨なほどにガラガラ。宣伝効果って、あんまりなさそうだね。


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Comments

娯楽性の高い佳作(傑作ではない)と思うんですが、
観客動員では苦戦してますねー。

『エヴァンゲリオン』や『もののけ姫』以降、
観た後に「結局、どんな話だったんだ?」と思うような説明不足のアニメが多い中、
本作はわかりやすく作られています。

>つけめんデリックさん
こんばんは。
最近のカントクの作品にしては珍しく、画ではなくストーリーが印象に残る作品でした。
ただ、今どきの浮動客を呼ぶほどには、ナンパにできてないんですよね。難しいところです。

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