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2008.09.02

書評<零式>

舞台は架空の歴史を重ねた日本。アメリカ本土への”特攻”への報復として激しい核攻撃を受け、現実より植民地化されている。その管理された社会ゆえ、噴き出す国粋主義。
そんな社会の中で、主人公の少女は原始駆動機(リニアカー=外燃駆動機が一般化されたため、内燃機関がそう呼称される)を駆り、内なる破壊衝動を燃焼させる。彼女は荒廃したストリートで命を削りながら、管理社会を体現する”壁”を突き崩す術を探す。


ライトノベルという言い方は好きではないが、あえて言えば”ヘビーなライトノベル”。舞台設定や暴力的・性的な表現は”重い”が、物語の基本は”ガール・ミーツ・ガール”というライトノベルのスタンダードである。スピード感を強調した文章は、けっこうな量のページを急速に消化させる。ある意味で実験的な文章も数多く散見されながらも、それなりに説得力を持つ。
過酷な運命を背負った少女の焦燥。時代遅れのマシンで、最先端の冷たいテクノロジーに挑戦するときの高揚。戦争に侵された人間の狂気。そうした感情をラストに向かってマックスに持っていく著者の手腕はなかなかのものである。

初版2007/01 早川書房/ハヤカワ文庫JA

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