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書評<アイの物語>


わずかな数の人類が、ゆるやかな滅びの時をおくる未来の地球。それは人間に背いたアンドロイドたちとの戦争の結果であった。
荒廃した地球で、”語り部”と呼ばれて村々を旅する少年が、アンドロイドに捕まるところから物語は始まる。そのアンドロイドは、少年に物語を語り始める。決して、真実の歴史ではないと告げて・・・。


以後、ネタバレありで感想を。
本書でアンドロイド・アイビスが語るのは、AI(人工知能)の進化の物語である。それは、まず子供相手のおもちゃの延長であったAIを取り上げた物語から始まり、やがて人類の言葉では表記できない複雑な感情を持つAIたちの物語になっていく。その組み立ては見事としかいいようがない(最終章は特に、よくよく考えて一言一句が組み立てられているのがよく分かる)。
そして本書で著者が語ろうとしていることは2つ。
1つめは人の愚かさ。AIたちは常に論理的であろうとする。すべての人が論理的であろうとするなら、その帰納するところは”共存”しかありえないのに、人類は争いをしかけ、差別し、感情にまかせて行動する。論理的であれば、”人類に反旗を翻す”なんてことは、ありえないのだ。
2つめはフィクションの力。”良識的な人たち”は過剰に”実話”を求める。なぜアプリケーションやネットの中には、”真のコミュニケーションがない”と決めつけるのか?人の心を動かす力があれば、フィクションであろうとノンフィクションであろうと関係ない。
この2つのことを中心として、その他様々なテーマを取り上げながら本書は紡がれる。マン・マシンインターフェイスが、マン・マンインターフェイスを上回り、やがてマシン・マシンインターフェイスになっていく物語。著者のテーマがうまく織り込まれた、一級のSFである。

初版2006/06 角川書店/ハードカバー

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