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2008.10.14

書評<図書館ねこ デューイ>


ある冬の寒い朝、アメリカはアイオワの田舎町の図書館の返却ボックスに、1匹の子猫が捨てられていた。その雄猫は、その日から図書館館長はじめとした職員を魅了し、デューイと名づけられて図書館にて飼われることとなった。デューイはやがて街の人々を魅了し始める。

いわゆる”動物泣かせもの”とは違って、本書はコーン栽培に支えられるアイオワの田舎町の歴史の物語であり、自らに降りかかる試練を乗り越える大人の女性の物語でもある。
昨今、アメリカの住宅バブルがはじけたことに起因する金融危機が叫ばれているが、その前に農地バブルがあったこと。ウォルマートを旗艦とした巨大チェーンに小さな街の商店街がいかに立ち向かっているか。そんなアメリカの庶民の街の姿がうかがえる。
デューイの”ママ”である館長は、自らも病気と闘いながら、デューイとともに図書館を改革していく。
とはいえ、やはり最大の魅力はデューイであろう。愛らしい仕草で人々の心を癒しながら、誇り高く媚びない態度。「マスターキートン」で「猫の瞳はあなたを映す鏡」という話があるが、デューイはデューイを求める人に応える、まさにそんなオス猫であった。本書はそんな図書館ねこの一生の物語である。
図書館のソファーで本を読んでいたら、トラ猫がヒザに飛び乗って寝そべる。そんな図書館が、オレも近所に欲しい。

初版2008/10 早川書房/ハードカバー

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