書評<アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない>
アメリカ在住の映画評論家である著者が、宗教右派・マスコミ、ブッシュ大統領など、とにかくデタラメな最近のアメリカの現在を取り上げたコラムをまとめたもの。
個々のコラムは時期的にはいわゆる”リーマン・ショック”以後の金融危機の直前までに書かれたもので、”お金持ち優遇税制”のもとで、思想や収入が極端に二分化していくアメリカ社会を人物や事件を通して見ていく。文体はしごく軽いが、そこにある事実は重い。アメリカが掲げるグローバリズムは、発展途上国だけではなく、自国民さえも搾取の対象であることが分かる。世界経済を混乱させるアメリカの国民は、80%の人がパスポートを所持していない皮肉。現在の共和党の副大統領候補さえも、まともに外国の土など踏んだことがない。そんな人たちが、世界の安全保障を左右するのである。
楽しく読めて、今後の世界情勢を考えると、やがて背筋が寒くなる。そんなコラム集である。
初版2008/08 文藝春秋
« A-1H Day1st | Main | 書評<鈴木亜久里の挫折―F1チーム破綻の真実> »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 書評<ベリングキャット ――デジタルハンター、国家の嘘を暴く>(2022.08.28)
- 書評<バルサ・コンプレックス “ドリームチーム”&”FCメッシ”までの栄光と凋落>(2022.05.25)
- 書評<冷蔵と人間の歴史>(2022.05.24)
- 書評<ザ・コーポレーション>(2022.05.23)
- 書評<狩りの思考法>(2022.04.19)
The comments to this entry are closed.
Comments