書評<エイリアン・テイスト>
ユカイア・オレゴンは失踪人専門の市立探偵だ。彼は失踪した人間のかすかな痕跡から、その後を追跡する特殊な能力の持ち主であった。彼自身も、その能力の由来が狼に育てられた過去にあったと思っていたのだが、その能力は、地球規模の災厄に関係していた。
”普通以下の人間”から、超常の存在への変身を妄想するとき、アメリカでは”人間の姿をした、人間ではない何か”に結びつくのに対し、日本では”自分の延長となる巨大ロボへの搭乗”へ結びつく・・・とかありがちなことを書こうと思ったんですが、日本にも伝統の”魔女っ子シリーズ”がありましたね。
ともかく、本作品は「スーパーマン」から連綿と続く”超人”の系譜上にあるフィクション。後書きを読むと、著者の他の作品には日本のアニメの影響が色濃く見られるそうだが、本書はむしろアメリカの伝統の方を感じる。主人公がその能力の割にはメソメソしていたり、そのくせ女をしっかり口説くし、と個性は感じられるものの、正直な話、ドラマのノベライズかと思うほど、あまり厚みが感じられない。アメリカ版ライトノベル、という感じでしょうかね。
初版2008/10 早川書房/ハヤカワ文庫SF
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