書評<アフリカで食べる/アフリカで寝る>
本書は朝日新聞記者である著者の2冊の文庫を合体、再発行したもの。テレビのドキュメンタリーにもなったそうで、購入されている方も多いかも。基本的には彼が書いた新聞の短いコラムをまとめたもので、概ね1980年代中盤~1990年代中盤あたりのレポートになっている。食べ物と寝る所=住居を実体験することにより、アフリカの様々な民族の人たちに触れ、我々あるいは欧米人の価値観や常識とまったく違う様子を描き出している。
東南アジアを旅行した時には必ずハラを壊す自分からすれば、同じ日本人とは思えないほど著者はタフである。吸血住虫を恐れながらも現地の魚を刺身で食べ、日本人が口にしない肉や野菜にトライする。実食のおかげで、そのメニューの背景にある文化、貧困、民族性、歴史などがよく伝わる。また、我々は”アフリカ”と一口に言いがちだが(アメリカの副大統領候補はアフリカという国があると思っていたらしいが)、民族によってまったく異なる文化と、それとは逆に植民地支配を受けたゆえの共通性がみえてくる。
10年以上前に新聞に掲載されたコラムのまとめが2008年に再出版されて、それに掲載されたレポートが、今現在のアフリカ諸国の現状を伝えるレポートとタイムラグがさほど感じられないことが、アフリカの最大の問題であろう。
初版2008/11 朝日新聞出版/朝日文庫
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