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「大災禍」と呼ばれる、核爆発を含む多発的な紛争状態から立ち直った人類は、命を価値を最優先とする高福祉社会を実現していた。「Watchme」と名付けられた医療ソフトで常時健康状態を管理され、分子制御による投薬システムにより病気は消滅。その代償として人々は過剰な倫理を受け入れ、プライバシーといえばセックスのことぐらいしかない。主人公はそんな社会に辟易しながらも、世界保健機構の監察官となり紛争地帯に身をおく。紛争地帯にのみある自由を求めて。
そんな社会で、全世界同時に数千人が自殺する事件が起きる。目前で古い友人の死に向き合った彼女は、監察官として捜査に乗り出す。そこに人類の未来を左右する陰謀と、かつての親友を見出す。
どこかのSFに”僕たちの幼年期の終わり”というオビをつけたものがあったが、本書にこそ、その名が相応しい。長い進化を経て、意識をもった人間がどこに向かうのかを、逃げることなく描き切っている。衝撃的な処女作だったため、オリジナル2作目がいかなるものか期待が高かったが、まったく裏切られなかった。
極端な医療社会というSFガジェットは、人間一人ひとりがこなすべき”生きるために必要なこと”をどんどん外注に出す現代社会の延長線上に確実にあり、背筋が寒くなる思いがする。もちろん、ストーリーも秀逸。自己矛盾を承知で自分勝手に生きる主人公はどこか痛快で、謎ときももったいぶることなくスピーディーに進み、一気に読み切ってしまえる。前作は衝撃的ながらどこか消化不良だった結末だったが、本作はそれを払しょくしている。
士郎正宗著「APPLE SEED」という未完のマンガがある。舞台は第3次大戦後の荒廃した地球に建設された、オリュンポスという名のユートピア。人間の野蛮さを抑えつけているがゆえに、不安定要因も抱え込む。それを排除するには、人間の意識を制御するしかない。だがそれはすでに人間ではない。それゆえ、オリジナル遺伝子を守り続ける法律も制定する・・・このあたりで物語は途絶えている。不完全ゆえにユートピアを追う人間、ユートピアゆえに不安定になっていく人間。自意識と、生存本能と、社会的動物であることの葛藤を抱える、ヒトという生物の哀れさ。あるところまでは本作とテーマが同一である。まったく個人的な感想だが、本作はこの「APPLE SEED」に1つのケリをつけたように思える。80年代から求めていた物語への1つの回答。SF分野では、今年一番の収穫だ。
いうまでもなく、イタリアはカルチョの国である。また、都市国家の集合体というイタリアという国の成り立ちから、サポーター同士の”戦い”も熱い国である。本書はイタリアの各都市のクラブチームの歴史を辿りながら、イタリアのサッカー事情を解説する。
大ざっぱなタイトルで内容がむしろ分かりにくいが、イタリアにおけるダービー・マッチの魅力を解説した本といっていいと思う。ヨーロッパは各都市の対抗心が強いため、日本と比べてホーム&アウェイの有利・不利が現れるが、イタリアの場合はむしろ、同じ都市にあるチームが対決するダービーマッチの方にカルチョの歴史が反映されている。長い歴史の中で、常にトップ・リーグで敵同士のチーム。都市に君臨する古豪を打ち倒した新興チーム。外国人が影響を色濃く落としたチームなどなど。長い歴史と民族性ゆえ、数多くのドラマが積み重なり、ダービー・マッチが開催される。
というわけで、本の内容は悪くないのだが、前記したように、もうちょっとタイトルのつけ方に工夫が欲しい。”サッカーとイタリア人”というなら、むしろ昨今の審判買収事件など、カルチョの闇の部分を明らかにする方が、読者の興味をひくと思うのだが。
初版2008/12 光文社/光文社新書
平成に元号が変わって気がつけば20年。世界情勢、経済状況など、世界が揺れ動く20年でもあった。そんな中で日本では、オウム真理教はじめとした新興宗教のニュースが途切れなく続いている。宗教学者として、オウム真理教や統一教会、創価学会に直接・間接に関わった著者が、平成20年までの新興宗教と日本社会のかかわりを年代ごとに記録、分析したものが本書である。
自分が新興宗教というものに興味をもったのは1990年。高校3年の夏休みに悪友たちと勉強すると称し、田舎の公民館の談話室でワイドショーを見まくっていた。もちろん話題の中心はオウム真理教。以来、新興宗教にワイドショー的な興味を持ち続けているが、確かに新興宗教の話題が尽きることはない。本書は主に”年代記”といえるものなので、それぞれの分析はさほど深くはないが、社会状況の変化の中でどのような新興宗教が台頭しているのか、各々の宗教にどんな人がハマっているのかなど、スピードが速い時代だけに、その変化は興味深い。
ただし、各々の宗教と著者本人の関わりを文章に入れ込む必要があったのかは疑問。その方が解説書としての新書らしくなったとおもうのだが。
初版2008/12 幻冬舎/幻冬舎新書
ここ1年、何日かにいっぺん深夜に目が覚めて眠れなくなる。心を鎮めるため、NHK-BSの海外ドキュメンタリーあたりの落ち着いた映像をBGMにすると、なぜかもう1回寝つける。ヘンなクセ、つけちゃったなあ。
そんなこととは関係なく、ガネットは細かい部品を塗装。
フラップダウンのための支柱及びランディングギアはクレオスのスーパーステンレス、ターボプロップエンジンのエクゾーストはカッパー+ガイアのスターブライトジェラルミンの混色で塗装。スピナーはレッド、プロペラは先端をイエローに塗装後、マスキングしてフラットブラックを吹いてます。金属色はブラックを下地、その他はホワイトの下地に吹いてます。カッパーの金属粉がエアブラシの中に残り、洗浄にかなり手間を要しました。なんで今日に限って残っちゃったんだろう。
それと、キャノピーは中央がポコっと膨らんだヘンな形状のせいか、パーティングラインが派手に入っているので、400→1000→1500→2000番の順にサンディング、コンパウンドで磨いてます。
なんか、意外に作業時間を食うなあ。年内完成は難しそうだ。
<BARSERGAさん推奨>
成績優秀、運動神経抜群、ティーンズ誌のモデルになれるほど容姿端麗。パーフェクトな女子中学生である”オレ”の妹だが、隠れオタクであった。思春期特有の仲の悪い兄妹だが、あることをきっかけに妹の趣味に関わることになっていく。
基本的にはツンデレな妹と、ことさら平凡を好みながらも妹を助ける兄をニヤニヤしながら読む物語であるが、大きく2つのバックボーンが見える。1つは地方のオタクへの”ガイド本”のような面があること。1巻目のオフ会、2巻目のコミケと、地方の孤独なオタク(まあ、中高のころの自分ですが)にとってはいい感じのレポートである。もう1つは親バレ、友達バレをどう乗り越えていくかということである。オタクに対する偏見の目も薄れてきたし、大人になれば開き直りもするだろうが、まだまだ中高生にとっては厚い壁であろう。主人公の兄妹の父親をことさら厳格な警官、妹をモデル(一番オタクと相容れない人たち)にしているのも、自己肯定のドラマと意味を盛り上げるためであろう。
なかなかにいろいろと考えられたライトノベルだ。
初版2008/08 アスキーメディアワークス/電撃文庫
日本初のプラモデルが発売されて2008年は50周年にあたる。戦後まだ間もない時代に、日本初のプラモデル<ノーチラス号>はどのような経緯を経て発売され、全国の少年たちに新しいホビーとして広まったのか?<ノーチラス号>を発売したマルサン商店に関わった人たちの取材を通して明らかにしていく。
戦前すでに最新鋭とはいえないまでも、様々な工業技術を確立していた日本にとって、金型から射出成型されるプラモデルの開発は、さほど難しいことではなかったのかもしれない。本書で印象に残るのは、キットそのものよりもむしろ分かりやすい説明書の作成や、新しいホビーを開拓するために新たな販売網の開拓といったことの方である。何においても技術力が重視されがちな日本だが、売れなければ何もならない。
36歳になる自分にとっては、プラモデルは生まれたときからあるホビーであった。ユーザーとして、プラモデルを作る子供があまりいないことを憂うが、移ろいやすい子供向けホビーの分野では当然のことで、むしろ大人になっても延々とそれを続けられるだけの市場が形成され、定着したホビーになっていることの方が驚きなのかもしれない。そういう意味では、先達の努力と共に、模型の持つ魅力を再発見できる1冊である。
初版2008/12 アスキーメディアワークス/アスキー新書
映画<空へ ~救いの翼~>を見てきた。札幌の上映館はファクトリーのユナイテッドシネマ。
舞台は空自小松ABの救難隊。新米女性パイロット・川島遥風(はるか)は母が空自救難隊に搬送された経験を持つ。彼女は要救助者を救えなかったミッション、救ったはずの命が消えてしまうなどの挫折を経験しながら成長していく。同じ救難隊のF転(ファイターパイロットからの転換)パイロット、整備隊の女性整備士もまた、それぞれに挫折を経験しながらも、ともに励ましあいながら、困難な任務に就く。
以下、ネタバレありで感想を。
先行するコミック版、アニメ版に続く実写映画。オープニングで雷雨の中、山の影からKV-107が現れるシーンからワタシはもう泣いてました(笑)。これぞ空自救難隊、というシーンから始まるストーリーはコミックやアニメのいいとこ取りで、救難隊の苦悩や挫折を整備隊含めて描く堅実なつくりです。やや人物の掘り下げに難ありですが、時間的にしょうがないのか。もう1つ、伏線というかドラマの盛り上げ方にもうちょっと工夫があっても良かったかも。クライマックスは護衛艦<はるさめ>への着艦なのですが、たぶん素人さんにはその困難さが伝わってないのはないかと。前半に狭い突堤にUH-60を着陸させるシーンがあるんですが、その辺でもうちょっと救難隊のヘリの操縦の巧みさを演出していたら、もうちょっとクライマックスらしかったんですが。
映像的にはCGはごく少なく、迫力あるUH-60を見ることができます。ハリウッドの凝ったCGに慣れていると、かえって新鮮。FLIRの画像とか、海上に投下するマーカーなど、貴重なシーンもいろいろ登場。さらにSH-60Kも登場し、まあ自衛隊の協力も気合いが入ってます。
総じて堅実な映画なのですが、なぜか”自衛隊広報映像”ぽく見える。どうしてだろうと考えると、BGMが古風というか大袈裟なんですね。ニコ動やYoutubeにアップされてるプロモーション映像にどうしてもカブる(笑)。ともかく、見て損はない映画です。
HME2009に向けてのテーマが「1960年代」ということで、次はこんなのいってみましょう。
イギリス海軍の艦上対潜哨戒機であるフェアリー・ガネット。いわゆるマイナー機の部類ですが、新興メーカーから新金型で発売されるということは、モデラーには人気の機体ってことですね。
トランペッターのキットはランナー3枚と意外にシンプル。機体表面もシンプルなスジ彫りです。
まずはコクピットから。計器盤はデカールなし、しかし手書きする腕もなし、ということでフラットブラックを吹いた後、エナメルのホワイトでスミ入れしてます。
手抜きですがこれでよしとしよう。
それを組み込んで全体組み立て。
全体にすき間が空くほどでもない、されどピタリと合うわけでない、という感じなので流し込み接着剤を多用してテープで固定しています。プラが柔らかいのか、コクピットを挟み込まない後部胴体は接着してもヘナヘナなので、何か所かつっかえ棒を入れて補強しています。これでもまだ不安で、垂直尾翼の中あたりも補強を入れるべきでした。
ボックスアートはかっこいいんですが、やっぱ変ですね、このヒコーキ(笑)。でも、こういうお腹してる鳥っているよね。Gannet(カツオドリ)とは言いえて妙です。
フジミ1/72ダグラスA-4Cスカイホーク、完成しました。
A-4Cはエド・ハイネマンの手によるアメリカ海軍の艦上軽攻撃機です。艦上機なのに主翼折りたたみ機構をもたない小柄な機体ながら、軽快な運動性・高い信頼性・大きな兵器搭載能力を兼ね備え、1950年代末の配備から長く現役にとどまりました。
フジミ1/72のA-4シリーズ、実は胴体フォルムの捉え方に問題があり、胴体をイタレリとフジミのニコイチにするのが最善の解決方法だそうなんです。もちろん、ワタシにそんな根性はなく、キットをストレート組み。自分の仮組み不足もありますが、主翼付け根、エアインティーク近辺などビミョーに合いが悪く、修正が必要。ですが、機体が小柄のためかさほどの苦行ではありません。前縁スラット・フラップダウンはキットの標準仕様です。
塗装はVA-76"FightingSpirits"を再現。VA-76はA-4で唯一のMigキラーを出した部隊で、所属機はエアインティーク脇にスコアマークを記入しています。搭載兵器はAGM-62Aウォールアイを武器セットからチョイス。アメリカ海軍のスカイホーク、なぜか昔からマーキングのバランスが悪いと思ってたんですが、機体に対して国籍マークがデカ過ぎるんですね。
お手軽にすまそうと思ってたんですが、空中給油プローブを折ったりと、いつものごとく?トラブルの種は尽きず。完成したらそれなりに見えるのは撮影ブースのおかげです(笑)。海軍機はやっぱ見栄えするわー。
さて、次行ってみよー。
小規模なものはスターウォーズのライトセーバー、大規模なものはタイムトラベルやスターシップまで、SFには様々なガジェットが登場する。それは現在の科学の延長線上で可能なことなのか?できるなら、それは今世紀中にできることなのか?あるいはもっと先?本書はSFに登場する様々なガジェットをあくまで現実の延長線上で実現できるかを検討し、難易度レベル1~3までで判定する。
ありがちな企画といえば企画なのだが、著者は日系アメリカ人の理論物理学者であり、その科学的考察は正確だ。また物理学者ゆえか、我々SFファンのイメージとは異なる考察を提供してくれる。例えばカーボンナノチューブと反物質エンジン。カーボンナノチューブは今すぐにも実用化しそうだが、反物質エンジンはいかにもうさんくさい。ところが、著者の判定はどちらもレベル1。今世紀中には可能としている。こんなふうに、一般のイメージとは異なる、様々な分野の科学の進歩の違いも理解することもできる科学エッセイだ。
初版2008/10 日本放送出版協会/ソフトカバー
海自余市防備隊に「はやぶさ」クラスのミサイル艇が配備されたとのことで、さっそく見に行ってみた。あくまで仕事で近くまできたので、ついでです。
余市漁港の端っこにある余市防備隊。フィヨルド風にせまる山々、雪で白く染まるコンクリート、打ち寄せる白波と、フィンランドかスウェーデンの軍港みたいな雰囲気(行ったことないけど)。
ゲートがついた浮き桟橋に係留された「わかたか」くまたか」。そのゲートのおかげで写真は撮りにくいが、すぐ横の突堤から意外に近くで見ることができます。
第一印象は「こんな大きなフネだったのね」って感じ。軽快そうな船型なんだけど、人物対比にすると大きな船に感じる。日本海で活動するには、これくらいのトン数は必要なんでしょうね。
ブリッジ横の12.7mm機関砲はマウントのみ、ブリッジと煙突のスペースには搭載艇。煙突ってゆうか、タービン用のエアインティークっすね、このデカさは。
90式艦対艦誘導弾のコンテナの重ね方が2艇で不揃いなのはナゾ。
というわけで、雪が降る中のレポートでした。寒いけど、”雪の漁港”って雰囲気があるので、”仕事サボリ”じゃなしでもう1回、ゆっくり見たいっすね(笑)。
(今日、一番よく撮れた写真)
Hannantsで大きな買い物をすると、それで満足して手が進まなくなってしまうので、テンションが上がらなくても無理やり製作を進めます。
ということで、AC-47をアレコレしながら、アレコレ進めてたフジミA-4C、本日は全体塗装。
かなりサンディングしたので、まずは1000番のサーフェースで下ごしらえ。エアブラシシステムを入れ換えた後、サーフェサー用に0.5mm口径のエアブラシ買おうと思ってたんですが、0.3mmで全然OKです。
問題はA-4Cの方。成型色が白なので傷が目立たなかったのですが、グレーサーフェサーのおかげでアラが出る。てゆうか、サンディングと全然関係ないところまでガサガサなのね。金型の磨きようが足らないのだろうか?
ともあれ、どうしても目立つところをパテ埋めして1000番でもう一度サンディング、磨いたところにもう一度サーフェサー吹く。
塗装はいつもどおり、まずは陰影をつけるためパネルラインをフラットブラックで塗装。エアインティークとフラップやスラット部分をC327レッド、下面及び動翼をC316ホワイト、そして最後にC315ガルグレーを吹いています。
この後、手を滑らせて機体をヘンな風に掴んだら、空中給油プローブを折ってしまう事故。A-4、なんか繊細な部品が多くて一進一退です。
イタレリ1/72ダグラスAC-47"Spooky"、完成しました。
いわゆるガンシップは、ベトナム戦争で南ベトナム解放戦線のゲリラ戦術に悩まされたアメリカが、極地制圧用に火力を集中する攻撃機として開発しました。大量の弾薬を搭載して狭い地域に火力を集中するため、大型機の側面にミニガンなど搭載、定点を旋回する戦法がとられました。
固定翼で初のガンシップの受け皿として持ち出されたのが、既に古典機の域に入りつつあったダグラスC-47スカイトレイン。様々な通信機材と7.62mmミニガンを搭載し、ゲリラ狩りに駆り出されました。
イタレリの1/72ダグラスAC-47をストレートで製作。いわゆる運河彫りの大味なキットですが、ストレートで組む限りは大きな苦労はありません。ただ、大型機ゆえ、接着後の事後変形には注意が必要。コイツもそれなりに乾燥時間はとったのですが、パーティングラインが浮き上がっています。”枯らす”時間も必要です。あと、アンテナ類も設置位置がいまいち不明確なので、すごくテキトーにドリルで穴を開けて接着しています。
塗装はSEA迷彩をフリーハンドで。狙ったところより少し暗めになってしまいました。塗装図と箱絵の迷彩パターンがまったく違うわけですが(笑)、実機写真を見ると幸いなことに、実機に近いパターンに塗れているようです。
作り慣れていない旅客機ベースのキット。マスキングなどに苦労し、クリアーパーツに傷をつけてしまったりと失敗も多々ありましたが、それゆえ新しいノウハウは自分なりにいろいろと学びました。
ジェット戦闘機ばかり作ってきましたが、もう少し幅を広げても、と思う今日この頃です。
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