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2009.01.13

書評<ヨムキプール戦争全史>

1970年代初頭、イスラエルはエジプトおよびシリアから二正面同時侵攻の奇襲を受ける。いわゆる第四次中東戦争である。本書はその第四次中東戦争=ヨム・キプール戦争について、公刊記録や当時の軍人・政治家への取材などをもとに、その勃発前夜から停戦にいたるまでを描いたノンフィクションである。戦場の最前線の戦闘から、当事者の背後の大国の外交まで、記録される分野は幅広く、また克明だ。主にはイスラエル側からの視点で描かれているが、それはエジプトあるいはシリアの記録が少ない故であり、戦争に対する視点はしごく公平である。

戦争はいつだって教訓の宝庫だが、第四次中東戦争も例外ではない。イスラエルの軍情報部が固定概念に囚われ、奇襲開戦の情報を否定し続けたこと。戦車の能力を過信し、諸兵科連合の基本を軽視し、多数の犠牲者を出したこと。対空ミサイルあるいは対戦車ミサイルが戦場の様相をまったく変えてしまったこと。あげていくとキリがないほどだ。本書はそうした結果からみた”俯瞰”だけではなく、最前線の兵士たちの激しい戦闘の様子も克明に描き、戦場の現場目線の記録としても一級のノンフィクションとなっている。

重厚で価格も高いが、現代戦に興味のある方には必携の歴史書だ。

初版2008/12 並木書房/ソフトカバー

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