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書評<銃に恋して―武装するアメリカ市民>

いうまでもなく、アメリカは銃社会である。それは大学その他で乱射事件が起こって多数の犠牲者が出ても、結局変わらない。銃で武装するアメリカ市民のロジックはどこから来ているのか?銃を規制する法案が時限立法ぐらいでしか通らないのはなぜか?実際に銃はどのくらい手に入りやすいのか?アメリカ在住の著者が、実際のインタビューやガンショーを取材した経験を交え、一般の日本人とは異なる武器の価値観を解説する。


アメリカの銃規制の問題は、日本人留学生の殺害事件や数々の乱射事件の報道を通して日本にもよく知られるようになっている。だが、本書を含めて視点はおよそリベラル的であり、「銃を持つこと」の本質にせまってはいない。ミリオタとして、類似書を含めてあまり語られないことをいくつか指摘したい。
まず、「銃」の持つ本質的な魅力。機能美溢れる銃自体がある種の人々を引きつける。「人間を殺傷する」という実用的なことだけのために銃を持つのではない。本書では「コレクター」の存在を軽く流してしまっているが、その存在が「銃」自体の魅力を証明している。さらに、射撃はとてつもない集中力を必要とする”スポーツ”でもある。
次にアメリカの自然環境。東北や北海道の山奥にでも行かないと猛禽に出会わない、狭い島国とはまったく環境が違う。
最後にハンドガンとライフルの違い。本書でも少し触れられているが、同じ銃でも、コンシールド(隠し持つ)ことができるハンドガンとライフルはまったく別の存在である(威力や射程はいうまでもない)。

いわゆる”独立戦争”を経験することもなく、”国家に対する反感”はあっても”支配される”ことへの恐怖が希薄なこの国の価値観では、武器を語ること自体が軽くなってしまうのかも知れない。書評にもならないが、そんな個人的な結論である。

初版2009/02 集英社/集英社新書

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書評<ハチはなぜ大量死したのか>

近年、アメリカやヨーロッパで蜂群崩壊症候群(CCD)と呼ばれるセイヨウミツバチの集団死がたてつづけに発生し、北半球から1/4のミツバチが消える事態となっている。それは何も蜂蜜だけの問題ではなく、ミツバチに受粉を頼っている多くの植物群の崩壊も意味する。本書はミツバチの行動パターン、それに生殖活動を託す被子植物との相関関係に触れた後、CCDの発生の原因を探っていく。

以前、自然環境をまったく無視した北朝鮮の計画的な農業をせせら笑ったものだが(案の定、大飢饉に発展)、結局のところ資本主義もまったく同じようなことをしていることに愕然とする。単一作物を大量に栽培するためにミツバチを労働単位に組み込み、自然状態ではありえないような生活パターンや移動を繰り返す。農薬や寄生ダニなど、直接的な原因は数あれど、数億年かけて進化し、共生してきた関係を突然崩していることに著者は言及する。自分は過剰な環境保護主義者ではないが、自分たちの消費社会がいかに危ういか、あらためて考えなければならないとは感じざるをえない。
扱うテーマは固いが学術的な記述ではなく、養蜂家へのインタビューやミツバチを擬人化してその高度な社会行動を紹介するなど、サクサクと読み進めるので興味がある方はぜひどうぞ。

初版2009/01 文藝春秋/ハードカバー

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書評<動的平衝>

生物を構成する細胞は常に新陳代謝しているのに、我々は我々の姿を保っている。これを生物学の用語で「動的平衝」という。考えてみれば不思議なことで、例えば皮膚の細胞はなぜ皮膚であることを繰り返すのか、記憶はなぜ保持されているのか、疑問はつきない。本書は「動的平衝」をキーワードにし、ダイエットや病気などについて新たな視点を提供する。

「生物と無生物のあいだ」がベストセラーとなった分子生物学者である著者の雑誌連載をまとめたもの。「動的平衝」は分子生物学者としての著者のメインテーマである。本書はそれに「時間」を絡めていく。気の遠くなるような時間をかけて現在の姿に進化した人間だが、20世紀以後にわずかな時間で急激に自らを取り巻く環境を変化させた。それゆえ、その弊害が様々なところで現れている。産業革命以後の人間はとにかく「生き急ぎ」だと感じる。
それと、「動的平衝」とはやや離れるが、バイオビジネスに関するコラムも興味深い。シンガポールなどは新たな産業の中心の1つにバイオビジネスを据え、巨大な研究施設を建設し、世界中から学者をかき集めている。それに対する著者の考えはやや懐疑的だ。今度はここらへんを掘り下げた著作を読みたい。

初版2009/02  木楽舎/ハードカバー

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F-4EJ Day4th

週末は岩手で会議の予定だったんですが、大雪で新千歳空港一時閉鎖のため、仙台へのフライトがキャンセルされ出席中止。キャンセル待ちに並ぶマナーの悪い大人を見て、「八つ当たり、カッコワルイ」と思う今日この頃。

そんなわけで会社の事務所を自主雪はねした後、F-4EJの全体塗装。年度末に引退する三沢の青ファントムでいきます。青ファントムは意外とパターンが細かいのと、同系統のカラーの迷彩は境い目がハッキリしている方がいいと思っているので、型紙を使います。
意外と説明書を拡大コピーした型紙についてコメントしてくれる方が多いため、作業手順をアップしてみます。
自分の場合はレドーム、エビのしっぽを先にエアブラシしてマスキングした後に全体塗装。
まずは全体を淡い方のブルー(C72ミディアムブルー+ブルー各種混色)を全体に塗装、塗装図を拡大コピーしたものを貼りつけていきます。
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ハセガワの最近の塗装図は親切に「側面(75%)・上下面(55%)に縮小しています」とか注釈があるので、それに合わせて拡大コピーしています。ボカシを出すため、両面テープでこよりを作って、少し浮かせて貼り付けてます。両面テープはかなりの確率で塗装を持っていかれるので、手の脂で接着力をかなり落とします。かといって、マスキングテープあたりでこよりをつくると、今度は接着力が弱過ぎるんだよなあ。それと、ファントムは複雑な曲線のため、側面は2枚コピーを用意して貼り合わせています。それでもって濃い方のブルー(C14ネービーブルー+ブルー各種混色)を吹きます。
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どんなに気をつけても、上の写真の吹きこぼしが出るのでエアブラシでタッチアップ。ヘタクソな自分はあっちを吹き直すとこんどはこっちが、みたいなことがあるので、エアブラシをコンプレッサーに2本繋いで、交互に吹き直します。
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一応、これで全体塗装は終了。
それにしても、このブルーは難しい。ハセガワの指示はC72とC14のビン生だけど、確実に違う気がするので手持ちのブルーを加えて混色。淡いブルーは鮮やかにするためコバルトブルー、濃いブルーは暗さを出すためエクストラダークシーグレーを添加。淡いブルーを全体に吹いた段階ではまだ鮮やかさが足りなかったかと思ったけど、濃いブルーを重ねるとコンストラストのせいか、許せる範囲に落ち着く。キリがないので、このへんにしときます。

あと少しだけど、次の週末も仕事なんだよなあ。またキャンセルにならないかな(笑)。

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書評<見る>


我々はいわゆる五感のうち、視覚に頼るところが大きい。だが、眼という器官と、「見る」という行為は謎と脅威に満ちている。本書は多種多様な生物の眼を分析し、眼に関する進化の謎を追求し、視覚という行為とはいかなるものか、「眼」と「見る」ことについて、多角的に検証する。

学問というのは何においても横断的なものだ。なので「眼」と「見る」ことについて、広範囲に知識を提供しようという試みは評価できる。だが、広範囲ゆえに「眼」に関して基本的な解説が足りなかったり、様々な専門用語が解説なしで飛び出したり、バランスが悪いことこのうえない。
何よりも、「眼」に関わる科学者たちへのリスペクトが足りないと思う。例えば進化論でいえば、スティーブン・グールドはじめとした専門家の検証を自分の求める答えを与えてくれない、ということで切って捨てている。我々は視覚に感覚の多くを依っているが、今我々が持っている「眼」のために、「全体」が進化したわけではない。
「宇宙創成」の著者サイモン・シンなどは多岐に渡る学問を繋げるのがうまく、科学者たちとその学説を過不足なく(素人読者に向けて)適切に紹介する。「宇宙創成」を読んだ後だけに、そのあたりの著者の力量は如実に感じる。

というわけで、進化論・大脳生理学・生物内部の化学的反応・視覚や錯覚についてなど、それぞれの専門書を読む方が建設的でしょう。

初版2009/02 早川書房/ハードカバー

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F-4EJ Day3rd

またまたロングノーズ・ファントムを作ってるんですが、ちょっと自分の記録として。
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1/72のASM-1およびASM-2のPTM弾。できるモデラーさんから見たら、なんのことはない塗り分け。ですが、マスキングの繰り返しながらエアブラシ、吹き直しをしないで一発でコレが決まった時に、プラモに本格復帰して5年、ようやくここまでできるようになったかと一人で感慨にふけってしまいました。どこの何が、ってわけじゃないんですが、自分の中でブレークスルーがあったってことで。
てゆーか、この写真ではじめて吹きこぼしに気づいたよ!まだまだ道のりは長いな(笑)。


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F-4G Completed

ファントムⅡが好きなモデラーさんなら分かってくれると思うんですが、ファントムⅡを1機作ると中毒になって、連作せざるをえなくなってくるんです(笑)。なので、F-4Eに続いて、ハセガワ1/72F-4Gを作ってました。
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様々な航空攻撃任務のなかで、もっとも危険なのがSEAD(対空防御網制圧)でしょう。通常の戦闘爆撃機より高度なRHAWS(レーダー警報装置)と搭載し、その任務にあたる専用機をアメリカ空軍ではワイルド・ウィーゼル(野生のイタチ)と呼称しています。F-4Gはいわゆるワイルド・ウィーゼルⅤ、5代目にあたります。F-4E後期型(前縁スラット装備)の20mmバルカン砲を下ろしてAN/APR-47 ELSを搭載。その電子機器の価格は機体価格のゆうに数倍するといわれています。
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ハセガワ1/72のキットを、F-4Eと同じくMMDのメンバーから譲っていただいたものをストレート組み。AGM-88 HARMはアカデミーの1/72のキットからランチャーごと流用しています。中毒症状のため(笑)、接着剤の乾燥時間が短く、一部に接着ヤセが出てしまったのは激しく後悔。みなさん、流し込み系接着剤を使用の際には乾燥時間を十分に取りましょう。
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塗装は最後期のカウンター・シェイドを選択。クレオスH307の上から、フリーハンドでH305を吹いています。機種近辺はマスキングテープをカットして塗装。湾岸戦争時を意識して、スミ入れおよびシャドーをきつめに入れています。
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代々のワイルド・ウィーゼル機は独特の雰囲気がありますが、現在のSEADにあたるF-16CGはHTSポッドを搭載しているのみです。基本的な電子機器の能力向上や、脅威の低下など要因はあるのでしょうが、いずれワイルドウィーゼルの名を継ぐ魔改造機が現れてほしいものです。

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書評<宇宙創成>

宇宙創成〈下〉 (新潮文庫)

現在、我々は地球が太陽の軌道を周回し、太陽は天の川銀河の辺境に位置し、天の川銀河を含めた宇宙がビッグバンによって生まれたことを常識としている。だが、この科学的見地にたどり着くのに、多くの時間が費やされた。物理理論をうちたて、それを観測によって検証する。天球が運動していることに人類が気づいて以降、その繰り返しによって今日、前述した理論に行きついた。本書はコペルニクスの時代に遡り、ビッグバン理論にたどり着いた宇宙論の歴史を辿る。

天文学の基本は軌道計算だ。それは物理学であり、幾何学である。そして”天球の回転(byコペルニクス)”から恒星の成り立ちまで、広く宇宙を理解しようとすると、多分野の物理学の知識が必要となる。本書は宇宙の謎を解こうとした物理学者の”戦い”を中心に記述し、数式を最低限に抑え、たとえ話を多用することによって宇宙論を解説していく。なので数学な苦手な自分でも、物理学を多少なりとも理解しながら、過去どのように研究が進んできたかを知ることができる。「E=mc²」を多少なりとも理解した気になったのはこの本がはじめてです、ハイ。
もう一つ本書で特筆すべきなのが、個性あふれる物理学者たちのエピソードである。気難し屋、目立ちたがり屋、求道者・・・見下していた化学者に妻を寝取られ「闘牛士ならともかく、化学者とは・・・」とつぶやいた学者、自分の屋敷のメイドたちを観測記録の分析係に転職させた学者(しかも彼女たちは優秀な天文学者となる)などなど。
理論と人間くさいエピソードが交錯する、魅力的なビッグバン宇宙論の歴史書だ。

初版2008/01 新潮社/新潮文庫

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中華民国に行ってきた

名目は研修、実態は観光旅行で中華民国に行ってきました。
ミリオタは御承知のとおり、台湾は国民党の蒋介石が流れ着いた地。様々な思惑から日本も中華民国を国家と認めておらず、出入国カードにも「入国」ではなく「入境」とあり、国際情勢の複雑さを感じさせます。
台北市が主な滞在先だったわけですが、日本車が走っていて、高層ビルが立ち並んでいて、都市高速もあって・・・とごく当り前なアジアの先進国で異国情緒はあまり感じられず。滞在中、ずっと曇天だったこともあって気温もさほど高くなくごくフツーに過ごせました。
滞在中は
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故宮博物院に行ったり、
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小龍包を食べたりと、ごくフツーに観光旅行。
印象に残ったのは巨大建築2つ。
まずは今のところ世界一の高層ビル、台北101
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低い雲のせいもあって、まさにバベルの塔。
そして国父・蒋介石を偲ぶ中正記念堂
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中には巨大な蒋介石がドーンと着座。
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さぞかし神格化されているのかと思ったが、同行の現地人ガイドさんはこの場所が嫌いとか。学生のときのサッカー部時代、周辺を走り(約4km)、89段の階段を昇るのがランニングコースだったのがトラウマだそうだ。ま、ガイドさんの持ちネタの1つなんだろうけど、子供のランニングコースにするくらいだからそんなに荘厳な場所でもない、ってことなんだろうな。

ホントはこの後、市内にビル1軒まるごとホビーショップみたいな場所に行きたかったのですが時間なし。とはいえ一般的な旅行記だけじゃこのブログらしくないので、書店で買ってきた当地の軍事雑誌を紹介。
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2冊ともいわば<軍事研究>みたいな雰囲気。中味もかぶってます。
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IDFこと経国戦闘機、初飛行20周年だそうですよ奥さん。
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アメリカに公然と反抗する国、ベネズエラが関係が悪化する前に購入したF-16Aの技術が中共に流失したとされるウワサを心配したり、
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中共の原潜戦力が着々と強化され、S-LOC(海上交通路)が脅かされるのを心配したり。軍事的なプレッシャーが桁違いなのをヒシヒシと感じます。それなのに若い日本人ときたら、台湾が国かどうかも知らずに・・・おっと、オジーチャンみたいなグチになっちゃいましたね。ま、観光客が行きそうなところは片言の日本語が通じますし、ちょっと南方の血が入った女の子はカワイイし、気楽にリフレッシュできました。
個人的には、ミラージュ2000が遠くからでもいいから見たかったのですが(笑)、また別の機会に。

追記;帰りのエアチャイナのエアバスA320、ファーストクラスに王貞治元監督が搭乗。そのせいか、エコノミーも各席にモニターがついた高級仕様。VIP様々ですな。ちなみに、成田経由ホノルル便。貨物室かどっかに隠れて、そのままワイハーに行きたかった・・・。

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書評<機械仕掛けの神>


翼を回転させることによって揚力を得るヘリコプターの着想は古い。だが信頼できるエンジン、回転翼のトルクの打ち消しの方法など、種々の問題がその実現を妨げてきた。実用として使うことができるヘリコプターがようやく開発されたのは第2次大戦前夜のこと。乗客1人をやっと運ぶことができるヘリコプターが、やがてタービンエンジンを得て大型化し、ベトナム戦争を転機に軍民ともに不可欠なものとなる歴史を、アメリカを中心に本書は紹介していく。

ヘリボーンをはじめとして、ヘリコプターは今や軍隊に欠かせないビーグルであり、需要ももちろんそちらの方が圧倒的である。本書にもベトナム戦争の活躍を中心に詳述されているし、ベトナム戦争でヘリパイロットが大量に要請されることがなければ、いかに広いアメリカといえど、ヘリコプターはなかなか普及しなかっただろうことは容易に想像できる。
それでも、本書で面白いのはむしろ民間でのヘリコプター開発と普及への努力であろう。実用ヘリコプターの”父”の一人、シコルスキーはアメリカで同じロシア難民の援助を得ながら、ヘリの開発を続けた。第2次大戦後、そのシコルスキーをはじめとして、数々の技術者とメーカーがヘリを自動車の次の”夢の乗り物”として普及をはかろうとしたが、騒音や高い運行コスト、そして事故により彼らが夢想するような時代は訪れることはなかった。だが、名パイロットによる救難活動などにより、現在ではヘリは官公庁などで必要不可欠なビーグルになった。技術者はメカと戦い、パイロットは空気と戦う物語。本書は技術開発史というよりは、一種の冒険の書であろう。

初版2009/01 早川書房/ハードカバー

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