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書評<海の底>

基地祭が開催されていた海自横須賀基地に、突如ザリガニに似た巨大な甲殻類の大群が上陸する。逃げ惑う人々が次々と犠牲になる中、なんとか警察は防衛線を形成する。その惨事の中で、停泊中の海自潜水艦に逃げ込んだ子供たちがいた。自衛隊に実力行使を許可するか否か、政府が相変わらずのグダグダな対応で時間を浪費する中、彼らははたして生き延びることができるか?


物語の舞台設定自体はありがちな怪獣ものだが、魅力的なキャラクターを配置して読者を引きつける”大人のライトノベル”。ストーリーは潜水艦の中で若い海自の士官候補二人と子供たちの間で展開される物語と、頭の固い警察官僚組織を巧みに操る個性豊かな警察幹部の物語の2つを軸としている。子供たちが密閉空間でそれぞれが成長する物語は最終的に気分を爽快にし、個性的なリーダーシップを発揮する警察内部の物語は、現場と幹部のすれ違いに悩む組織人なら少なからず共感するところがあると思う。その他、態度は頼りないがその聡明さで謎を解決していく科学者や、ネットワークの強さを発揮するミリオタ集団など、とにかく人物の書き方がうまい。あっという間にラストまで読んでしまうこと請け合いの作品である。

初版2009/04 角川書店/角川文庫

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書評<魚のいない海>

歴史上、人類は漁業テクノロジーの発展と共に、様々な漁場で様々な魚類を消滅に追い込んできた。いわゆる過剰漁業である。現在ではクジラはいうに及ばず、様々な魚種の漁獲量が国際条約などにより制限されている。それでも、なかなか一度崩れた生態系は簡単には元に戻らず、漁業資源は減少の一途を辿っている。本書はフランスを中心としたヨーロッパの状況を中心に、漁業の歴史や漁獲量の統計方法を踏まえ、漁業資源の減少の原因が果して過剰漁業によるものであるかを検証し、さらに別の要因も探っていく。

著者はフランス人なので、上記のように本書はヨーロッパから見た漁業の歴史と現状を検証するレポートである。なので、日本人の視点からだと「今さらクジラ捕るなとかマグロ獲るなとかよく言えるな」というのが第一印象だ。産業革命に前後するように、欧州でもいくつもの漁場を過剰漁業で潰しているのである。結局、漁業もまた既得権益なんだろう。
本書は又、現状の漁業と狩猟の本質的な違いを指摘する。漁業は陸上動物を狩るのと違い、網で目的外の魚を大量に混獲したり、海底を根こそぎすることによって生態系を簡単に狂わせてしまう。これに昨今の環境破壊も追い打ちをかける。後に残るのはクラゲだけ、という結末になりかけないのが現状だ。巻末に日本の漁業の現状も追加で掲載されているが、状況は似たりよったりである。

ところで、今年の早春、北海道ではもはや戻ってこないと思われたニシンの群れが再来した。本書では荒れてしまった漁場の不可逆性について悲観しているが、そうでもないようである。海はまだまだ分からないことが多い。

初版2009/03 NTT出版/ハードカバー

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F-16C Block52 Day2nd

今日の札幌はなんと雪ですよ、奥さん。4月の後半に雪が降ったのは久しぶりではなかろうか?
もちろん、インドア派の自分にはそんなことは関係なく、F-16Cの細かい部品塗装。

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現用機の脚回りはガイアの現用機限定色「ギアホワイト」でずっと塗装してたんだけど、ついに使い尽くす。これ、使い勝手がよかったんだけど、市場ではもはや見かけず。どこかで売ってねーかなー。
それと、全開であまりにやっつけパーツではないかと感じたノズルですが、アイリスのハセガワF-15用が流用できそうなのでそれを使うことに。

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アイリスのパーツそのままだと、もう一段階ノズルセクションがあるので、そこから切断しサンディング。直径は修正なしでピッタリです。このノズル、なぜか採用国ごとにカラーがバラバラなので、実機を参考にアイリス版がクレオスの黒鉄色、内部のダイバージェントノズルをメタルカラーのステンレスで塗装しています。

ところでメキシコ付近で豚インフルエンザのパンデミックが発生しかけているそうで。こういうときはインドア派の勝ちですな(笑)。

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書評<俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈3〉>

成績優秀・運動神経抜群、さらに容姿はギャル系雑誌の読者モデルをつとめるくらいに端麗という完璧超人のオレの妹。だが、その隠れた趣味はアニメ鑑賞とエロゲーであった。その妹が、ケータイ小説とやらを書き始めたらしい。それが思わぬトラブルを招くわけだが・・・・。

自分はこのシリーズ、”オタク業界の周辺地図”紹介のライトノベルと思っているのだが、第3弾の部隊は創作と出版の現場。いわゆるケータイ小説と同人2次創作をメインに据えて、それぞれの特徴や”売り物になるのはどんなものか”を登場人物たちに代弁させている。結論としては、オタクたちが忌み嫌うスイーツ(笑)たちが読むケータイ小説も、同人誌も同じくらい”イタイ”ってとこですかね。お互いの感性が理解できないんだから、安易な批判だけやってればいいってものでもない、とは確かに思うところ。本作に出てくる架空の出版社の編集さんはケータイ小説とライトノベルのどちらも担当という設定なわけだけど、それが一番スゴイと思う。自分に合わない文章を読むほど苦痛なことはないわけで、やっぱり読書と書評は自分の趣味の範囲にしておくべきだと痛感。そんな斜め上の読後感でした。

初版2008/04 電撃文庫/メディア・ファクトリー

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F-16C Block52 Day1st

前作、F-16Eが”ありえた未来”だとすると、”これが現実”ということで、次もF-16を作って並べてみましょう。

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アカデミーの1/72ロッキード・マーチンKF-16Cのキットを使ってポーランド空軍仕様のF-16C Block52 Advancedにします。早速、製作を開始。

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昨年、F-16CJに続いて発売された新キットなので、モールドや合いなどに大きな問題は無し。エアインティークもちゃんとMCIDでないパーツが付属しています。ただ、エグゾーストノズルだけはいただけない出来。

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機体のモールドに比べて、やややっつけ仕事。塗装の都合も考えて、アイリスのF-16A/B用パーツのように、アイリスカバーと中のノズルを別パーツにできないもんかねえ。すでにCMKあたりから各種ディテールアップパーツが発売され始めているので、今後はそれに期待しましょう。
しっかし、ポーランド空軍までがF-16の最新バージョンと最新PGMを配備してNATOに加盟してるんだもんなあ。ロシアが警戒するのも分かるわ。

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書評<ガニメデの優しい巨人><巨人たちの星>

<星を継ぐもの>の続編として<ガニメデの優しい巨人>が第2作、<巨人たちの星>が第3作となる。<巨人たちの星>のラストに初めて「星を継ぐもの」というフレーズが登場するところから、著者が最初から3部作を意図していたと思われる、<ガニメデの優しい巨人>はいわゆるファースト・コンタクトを描き、<巨人たちの星>は全2作に色濃かったミステリー色から一転、星間規模の謀略を描いている。

おそらく本シリーズが初出したときから言われていることだろうが、シリーズを重ねるに従って著者の科学への絶対的な信頼と、人類の可能性の肯定が読み取れる。原著が出たときには既にアポロ計画も一段落し、公害問題などもあって科学技術への楽観的な信頼が薄らいでいた時代のはずだ。それでも、著者の科学技術と人類のフロンティア・スピリットへの信頼は揺るがない。そういう意味では、無神論者の自分にまさにぴったりと合う古典シリーズであった。

ちょっと蛇足。トミノ御大が再編集した<機動戦士Zガンダム>3部作のサブタイトルの1つが「星を継ぐ者」であった。本書を読んで初めて、TVシリーズでは悲劇的だったラストが映画版で変更された意味、タイトルとの関係がようやく理解できた。名著はやっぱり目を通しておかなくちゃいけませんね。

初版1981および1983  創元SF文庫/東京創元社

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F-16E Completed

LoneStar製ガレージキット、1/72ジェネラル・ダイナミックスF-16XL改めF-16E、完成しました。

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1980年代初頭、イスラエル空軍は念願の国産戦闘機であるラビ開発計画をあきらめる代替案として、F-16Aを導入したが、航続距離や兵器搭載量にやや不満を持っていた。アメリカ空軍と違って、それを空中給油や機数で補うのは簡単なことではない。そこで目をつけたのが、ジェネラル・ダイナミックスの社内プロジェクトであったF-16XLである。胴体を延長し、クランクド・アロウ翼に主翼を変更したF-16XLはF-16Aの不満点を解消した、まさににイスラエル空軍が求めていたものであった。イスラエル空軍はこれをF-16Eとして100機あまりを導入、以後電子機器をバージョンアップしながら、数々の実戦に投入された。

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というような架空の歴史を前提として、ZAWAさんちのレジンキットであるF-16XLを小改造してイスラエル空軍バージョンを製作してみました。基本はハセガワのF-16を使用するコンバージョン・キットですが、機体の方はエア・インティーク以外はほぼレジンのムクです。脚関係など機体関係のパーツはハセガワのキットから、武装関係はアカデミーのF-16のキットから持ってきて、JDAM、LGBおよびLANTIRNを装備させてやってます。それと排気ノズルはアイリスの別売パーツです。

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塗装は同じくデルタ翼のクフィルの後期迷彩パターンを参考にフリーハンドで吹いています。どのカラーもクレオスのイスラエル迷彩色をほぼビン生で、迷彩の境目をはっきりさせるためにエアを絞って、エアブラシのノズルを近づけて塗装。デカールはスカイデカールから"1stJet"のマーキングを持ってきてます。

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ヤフオクで価格の吊り上がったレベルのF-16XLを探す必要をなくすくらい、高レベルのキットなのですが、そこはやはりレジン。国産のインジェクションキットを作り慣れた身としては、やはり気泡など表面処理が一番大変でした。ここはやはり経験と根性ですね。それと架空設定するにあたり、パイロン位置などを正確に設定しなかったため、完成優先でごまかしが多数あり。ここらへんも安易に砂漠迷彩するだけじゃダメだったと痛感するところです。
とりあえず習作ということで、本命はリリースが予告されている複座型の方とします(笑)。

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書評<宇宙消失>

2034年、地球の夜空から星々が消えた。謎の暗黒の球体が太陽系を覆ったのである。この”バブル”を巡って、人類は恐慌に陥るがやがて日常に戻り、33年が経った。
元警官で探偵のニックは、ある失踪した女性の捜索を請け負う。彼女を追ううちに彼は量子論の観測者問題を巡る壮大な事実に出会うことになる。

マイブーム”名作SFを読もう”ということで、「星を継ぐもの」の後に本書を読むと、自分が許容できる最新科学がどのくらいかが分かった(笑)。本書の冒頭の、脳に直接アプリをインストールしたりするいわゆる”サイバーパンク”が分水嶺、メインテーマである量子論は”もうお手上げ”だ。量子論そのものが”センス・オブ・ワンダー”で、それに”壮大な事実”が積み重なると、理解するだけで手いっぱい。フィクションというか、教科書を読んでる気分だ。
ずっと昔、SF創成期から、科学が進歩するたびに現れる新たなスタイルのSFをそのたびに”面白い”と感じることができる、真の”SF猛者”を尊敬してしまう。そんなヘンな思いが素直な感想だ。

初版1999/08 創元SF文庫/東京創元社

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書評<星を継ぐもの>

ときは21世紀も中盤。人類はようやく政体統一とまではいかないまでも世界的な平和を享受する段に達し、かつての軍事費は宇宙開発に向けられていた。
すでに金星や火星、そして木星にも到達しようとしていたとき、月で真紅の宇宙服を着た男性の死体が発見された。それは明らかに人類の姿をしていたが、年代測定の結果は驚くべきものだった。”彼”は5万年前に亡くなっていたのである。果たして”彼”は何者か?調査が進むたび、謎が深まっていく。


定期的に2ちゃんねるでスレッドが立つ「このSFだけは読んどけ!」を見るごとに、名作と呼ばれるSFを読んでいるのが、本書はなぜ今まで読まなかったのか後悔するくらい、期待を外さない作品だった。
月に残された”宇宙人の遺体”の調査が、いつの間にか人類の歴史の定説を覆していく驚き。それは地学・生物学・進化論をしっかりとベースにしており、まるでフィクションの違和感がない。なぜ数々の類人猿を押しのけて、人類だけが地球上の生物で特別な存在になったのか、フィクションであるはずの本作の説を信じたくなるほどだ。
ストーリーも抜群だ。主人公たる物理学者のハントが最終回答を出したと思ったら、ライバルが見事にそれをひっくり返すどんでん返し。最後の最後までプロローグの伏線を回収しない物語の組み立ては、ミステリーとしても一流である。
原著は1977年上梓。だが、SFといえども名作はまったく色褪せないことを証明する作品だ。

初版1981  創元推理文庫/東京創元社


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F-16E Day5th

ここんとこ、ずっと風邪をひいてました。自分のパターンはパッと熱が出てパッと下がるというパターンが多かったのですが、歳をとったせいか、喉が痛いのを引きずってました。なので久々のエアブラシ吹き。
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F-16Eにフリーハンドでイスラエルの砂漠迷彩を塗装。レドームにC307、下面にC308を吹いた後にマスキング。同じデルタ翼ということでクフィルの後期パターンを参考にC313イエロー→C310ブラウン→C312グリーンの順で吹いて、バランスを見ながら修正。エアを絞ってノズルを近づけて境界をハッキリさせてやります。
その後、スミ入れして事前に組んでおいた搭載兵器を接着しようとすると・・・トラブル発生。適当に合わせておいたパイロンの間隔がせまく、クリアランスがとれない!下面のダボ埋めとダボ開けをして全面やり直しか、展示会で裏返す見物客はいない、ということでごまかすか・・・検討中です(泣)。

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書評<戦争報道 メディアの大罪>

冷戦終了後、溢れ出る民族対立から三つ巴の内戦を招き、NATO軍の軍事介入にまで至ったユーゴスラビア紛争。NATOがユーゴスラビア紛争に介入したのは、セルビアによる大虐殺や”民族浄化”と呼ばれる集団レイプの報道が一因である。それが欧米のPR企業の手によるプロパガンダであったのは<戦争広告代理店>などのノンフィクションでよく知られるところである。だが、現地の記者たちがクロアチア政府やボスニア政府の発表を鵜呑みにすることなく、情報の裏取りをすれば”セルビアが悪役”というような一方的なイメージが作られることはなかった。著者はユーゴスラビア報道でピューリッツァー賞を取った記者らにその責任を問う。また、セルビア正教と対立するヴァチカン、そのヴァチカンと深い関係にあるドイツの行動なども疑義を挟んでいく。

ここ日本では、Jリーグの選手たちの存在もあってセルビアはその距離の割には身近な国であり、またその距離ゆえ、ユーゴスラビア紛争は比較的冷静に報道されていたように記憶している。だが、欧米では違ったようだ。本書を読んで、ユーゴスラビア紛争の影にある宗教対立の問題が欧米では報道されていなかったことを初めて知ったし、ヨーロッパのニュースでさえバルカン半島の複雑な歴史をあまり報道していなかったのも初めて知った。そして”偏向”というにはあまりに一方的な報道。センセーショナルなスクープを狙うがあまり、プロパガンダに嵌まっていくメディア。今や戦争の武器の一つであるメディアの危険さを記した1冊である。

初版2008/03 ダイヤモンド社/ハードカバー

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