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2009.04.01

書評<戦争報道 メディアの大罪>

冷戦終了後、溢れ出る民族対立から三つ巴の内戦を招き、NATO軍の軍事介入にまで至ったユーゴスラビア紛争。NATOがユーゴスラビア紛争に介入したのは、セルビアによる大虐殺や”民族浄化”と呼ばれる集団レイプの報道が一因である。それが欧米のPR企業の手によるプロパガンダであったのは<戦争広告代理店>などのノンフィクションでよく知られるところである。だが、現地の記者たちがクロアチア政府やボスニア政府の発表を鵜呑みにすることなく、情報の裏取りをすれば”セルビアが悪役”というような一方的なイメージが作られることはなかった。著者はユーゴスラビア報道でピューリッツァー賞を取った記者らにその責任を問う。また、セルビア正教と対立するヴァチカン、そのヴァチカンと深い関係にあるドイツの行動なども疑義を挟んでいく。

ここ日本では、Jリーグの選手たちの存在もあってセルビアはその距離の割には身近な国であり、またその距離ゆえ、ユーゴスラビア紛争は比較的冷静に報道されていたように記憶している。だが、欧米では違ったようだ。本書を読んで、ユーゴスラビア紛争の影にある宗教対立の問題が欧米では報道されていなかったことを初めて知ったし、ヨーロッパのニュースでさえバルカン半島の複雑な歴史をあまり報道していなかったのも初めて知った。そして”偏向”というにはあまりに一方的な報道。センセーショナルなスクープを狙うがあまり、プロパガンダに嵌まっていくメディア。今や戦争の武器の一つであるメディアの危険さを記した1冊である。

初版2008/03 ダイヤモンド社/ハードカバー

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Comments

 管理人殿、厚木基地「日米親善 桜祭り」に行ってきました!!

 今年は昨年と違って寒く、基地前に到着したときはすでに去年よりも長い列ができていました。しかしボクはカバン・バッグなしの計装備なので、
 荷物検査なしで簡単に早く入れました。今年は写真が少ないですが、アップしておきます。

http://6001.teacup.com/sei/bbs?BD=3&CH=5

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