書評<米軍が見た自衛隊の実力>
タイトルにはちょっと偽りありで、本命は「米軍匿名幹部の意見と著者の意見を総合した自衛隊改革案」といったところであろうか。国産兵器個々の性能あるいは部隊の練度といったものを評論するものではない。「戦力としては不確実性の高いミサイル防衛に予算をつぎ込むのはいかがなものか」「陸自は島しょ防衛能力を強化して”海兵隊化”せよ」「海自は潜水艦を増勢せよ」といった、ネット界隈ではお馴染みともいえる提案である。その手の議論は2ちゃんねるの軍板あたりで延々とループしているわけだが、本書がそれを実現するには予算の倍増と人員確保が必要である、と但し書きしている点は評価してもいい。
個々の主張はともかくとして、日本の安全保障体制の”ごまかし”もそろそろ限界であることは確かであろう。ソマリア沖の海賊対策としての護衛艦とP-3Cの派遣にしろ、法整備があまりにも稚拙。本ブログでいつも言っていることだが、現場のことがさっぱりと抜けているのである。経済面や人的交流において”国際化”や”グローバル化”を不可避としながら、安全保障体制だけはドメスティックなイデオロギーを貫こうとする姿勢は、あまりにも説得力がない。”生活の安全保障”とは某局某アナウンサーが使う言葉だが、それは国家あるいは地域間の安寧があってこそのことであることを、忘れてはならない。
初版2009/04 宝島社/ソフトカバー
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