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2009.06.03

書評<ソビエト・ロシア戦車王国の系譜>

「ソ連は戦車に依って建ち、戦車に依って倒れた」とは、本書の前文に書かれている言葉である。第2次大戦時、T-34はドイツ軍の進撃を押しとどめ、国土を守った。冷戦末期、T-72およびT-64を中心とする機甲師団の大量配備が国家経済を圧迫し、連邦崩壊の遠因となった。

本書は第2次大戦後のソ連のMBT(主戦闘戦車)の歴史をまとめたものである。T-54/55、T-62、T-64、T-72、T-80、T-90と開発された順に豊富な写真と図解に詳細な解説を掲載している。車両についてだけではなく、それぞれがどのように時代を反映し、また時代にどのような影響を与えたかも考察しており、”系譜”のタイトルを名乗るに相応しい内容だ。

ソ連においても、航空機や艦船のいわゆる”世代”が変わるごとに、兵器としてのコンセプトが劇的に変わっていったが、MBTだけは結局のところT-34の延長線上にあった。これも本書で指摘されていることだ。125mm滑空砲も爆発反応装甲”コンタークト”もいわばデコレーションである。本書の最後に紹介されている開発中の車両が実際に配備されるのか?果たしてそれが陸戦を変える影響力を持つ車両となるか?”戦車王国の系譜”の今後はそのまま、陸戦の行方も占うことになろう。

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