書評<ルポ資源大陸アフリカ―暴力が結ぶ貧困と繁栄>
宗主国からの独立から有余年、ようやくアフリカ大陸にも国際的な統計上は順調に経済成長している国が現れてきた。主にはレアメタルや石油に代表される資源の産出国だ。インドや中共などの新興国の旺盛な資源開発により、一定数の富裕層は確実に生まれてきている一方、全体を捉えればやはりアフリカ大陸は紛争と貧困が支配する暗黒大陸である。その差は”格差社会・日本”がアホらしく思えるほどだ。毎日新聞の特派員だった著者が、南アフリカ、ナイジェリア、コンゴ、ソマリアなど、グローバル化した世界市場の中でのアフリカをリポートする。
大新聞社の海外特派員といえば、豪邸にこもって外信をピックアップして本社に送るだけ、みたいなのがステレオタイプだが、本書の著者は混乱する紛争当事国に密入国してゲリラのリーダーにインタビューするなど、できるだけ紛争の実態にせまろうとしている。また”イスラムと土着宗教の争い”といった西欧の専門家のありがちな紛争原因の分析に先にあるものを知ろうとと取材を重ねたりと、ときどきテレビで見かけるレポートとは違うアフリカの現状を知ることができる好著だ。
ミリオタとしては、ゲリラたちの進化に驚く。テクニカ(日本製四駆の改造武装車両)に乗った民兵たちは衛星携帯電話やGPS、ネットを使いこなし、政府軍に対し神出鬼没に抵抗を続ける。彼らもまた、ネットワーク化された世界の住人の一人なのである。
初版2009/08 東洋経済新報社/ハードカバー
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