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書評<倒壊する巨塔>

倒壊する巨塔〈下〉

9.11同時多発テロはなぜ起きたのか?なぜ防げなかったのか?本書はテロの首謀者とされるアルカイダのビン・ラディンと、それを阻止する側のFBIのジョン・オニールを中心に据え、その生い立ちから家族、思想信条などを徹底的に掘り下げることによりそれを解き明かしていく。特にビン・ラディンに関してはその思想信条の根源を2次大戦後まもなくの人物まで遡り、サウジアラビアあるいは中東を舞台とする”ローカル・テロリスト”からアメリカをターゲットにしていくまでを詳細に記述していく。

「なぜイスラム原理主義テロリストが生まれるのか?」「彼らは本当にムスリムの中で異端なのか」「彼らはなぜアメリカを敵視するのか」「「9.11テロはビン・ラディンがいなければ起こらなかったのか」などなど、9.11同時多発テロには今なお根本的な疑問がつきまとう。本書はその疑問にビン・ラディンの人物像にせまることにより、それを解き明かそうとしている。サウジアラビア、イエメン、スーダン、パキスタン、そしてアフガニスタン・・・流浪の旅のごとく彷徨う彼の人生の中で、どのような思想が彼の中に育ち、アルカイダを結成し、9.11テロにいたるのか。宗教に対して信心をもたないありきたりの日本人の自分が、その過程を理解できたとはいわないが、それでも目を通した類似書の中では、もっとも納得のいくものであった。
一方でアメリカ側。FBIのジョン・オニールの皮肉な人生は、なぜアメリカが9.11テロを防げなかったを端的に表している。FBIとCIAという巨大な官僚組織の長年に渡る軋轢。情報は組織を渡ることなく滞り、官僚は失点を避けるために互いの行動の邪魔をする。9.11テロの直後、初めて情報開示制限を解かれたときにFBIの捜査官が嘔吐するシーンは”アメリカの失敗”を象徴している。
原著は2006年に刊行され、ピュリツァー賞を受賞しているが、まさにそれに相応しい大作だ。

初版2009/08 白水社/ハードカバー

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