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書評<キラー・エリート―極秘諜報部隊ISA>

アメリカにはいわゆる諜報機関が数多くある。CIA(中央情報局)、NRO(国家偵察局)、NSA(国家安全保障局)などなど・・・。それは技術的手段や、国家レベルあるいは軍が求める情報の違いゆえである。そのなかで専門家にもあまり知られることがなかったのが特殊部隊の尖兵ともいうべきISA、あるいはアクティビティと呼ばれる部隊である。イラン大使館人質救出失敗事件を機に発足したこの組織は、デルタなどの実行部隊にさきがけて現地入りし、SGINTやCOMINTといった電子情報収集やHUMINT(人的諜報活動)を駆使して情報を収集する。堅い官僚組織の軍にあって、エリートでありそれゆえ疎まれる存在の彼らは解隊の危機もあったが、時代は変わった。重厚長大な通常戦争から、不正規戦を中心にした長い戦争への移行である。特殊部隊を信奉するトップの後押しを受けて、彼らは”戦場”を闊歩する。

イラン人質救出作戦の失敗から、アメリカの特殊部隊は2つの教訓を得て、それに対応する。1つは作戦行動にあたって、自前で情報を確保すること。1つはアメリカ4軍の特殊部隊を統合し、軍同士の根深い対立から距離をおいてスムーズに作戦を実行すること。前者がISAの設立、後者がSOCOM(アメリカ特殊作戦軍)の発足である。本書はイラン人質救出作戦以後のISA設立から、直近のイラク戦争までのISAの活動を解説するものである。アメリカ特殊部隊が活動するところ(あるいはそうウワサされる場所)には常に彼らの影があった。また、特殊部隊が軍の中のはぐれ者ではなく、作戦行動のメインストリートを歩く存在になる過程を描くものでもある。
彼らの活躍は確かに目覚しいが、軍の幹部が彼らの存在が疎ましいのも分かる気がする。それは本書の巻頭で、アメリカを泥沼のイラク戦争に導いた人物の一人であるラムズフェルドを、ある意味で賞賛していることに象徴される。自分のような一般的なミリオタも含めて、冷戦時代の価値観を引きずった人間と、特殊部隊の側の人間とは思考回路が異なるのである。”不正規戦の時代”といわれて久しいが、我々シビリアンの思考も変わらなければならないことを示唆している。

初版2009/11 集英社/集英社文庫

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