書評<たんたんたたた―機関銃と近代日本>
日本でいえば明治時代に前後して、歩兵が使う小火器は自動火器の時代となる。様々な口径、様々な作動方式の機関銃がヨーロッパあるいはアメリカで発明され、現在の小火器の基礎はこの時代に作られた。日本でも様々な機関銃が輸入され、その後に正式なライセンス生産あるいは違法な「見取り」と呼ばれるコピー品の生産が始まる。日露戦争以後の帝国陸海軍に導入された機関銃を後継別に辿り、当時の日本の工業力で何ができたか、何ができなかったかを示唆する。
外部動力に頼らない機関銃の作動方式は大別して2種類ある。反動利用方式と、ガス圧利用方式である。燃焼ガスのエネルギーを次弾装填に用いるガス圧利用方式に対し、完全にパーツの噛み合いで作動する反動利用方式はそのパーツの公差への要求が桁違いに高い。旧軍はついに完全な反動利用方式の機関銃を手にすることができなかった。それは基礎工業技術の欠如であり、戦場での戦略・戦術以前の問題として、国家が維持する技術力の段階で、日本の敗戦が必然であったことが分かる。一部の優秀で、先見性のある技術者の存在がなまじ「欧州に追いついた」と感じさせたことは、どこか寂寥感を感じさせる。
翻って現代。どの国の小銃メーカーでも、そのパーツ製造に日本の優秀なマニシング・マシンが不可欠になっている。この事実だけでも、日本があの敗戦から以下に多くのものを学んだかが分かる。
初版2209/07 光人社/光人社文庫
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