書評<テスタメント・シュピーゲル1>
西暦2016年、オーストリアの国際都市ミネアポリス。機械化された肉体を武器に重犯罪者たちと対峙する”特甲児童”たち。繰り返されるテロリストたちとの戦闘が、彼女たちを消された過去へ導く。記憶から抹消された暴走、自分たちの過去に纏わりつく大きな犯罪の影。チームを組んでいた3人の少女がそれぞれの過去と立ち向かうため、独自の捜査活動をはじめる。
レーベルの枠を超えて、同じ世界で2つの物語を紡いできた「シュピーゲル・シリーズ」の最新刊。クライマックスに向かうにあたって、2つの物語を1つに統合した新章突入第一弾、という形になっているが、本作に関してはほぼ<オイレン・シュピーゲル>の登場人物たちの視点で物語が描かれている。
内容はネタバレになるのでふれないが、よりシリアスなミステリーになっている感が強い。また、本来は脇役であるはずの彼女らの上司、大人たちが信念を貫いて行動する場面が印象に残る。ここらへんは本来の想定読者層ではないおじさんの自分の読後感か、それともこれが最後のライトノベルと公言する著者の変化か。何にせよ、長い物語で主人公の成長とともに、著者も変わっていくのも当然であろう。
なお、あまり登場しない「スプライト・シュピーゲル」の面々だが、それでも鮮烈な印象を残す。こちらがわの物語の決着も、また楽しみである。
初版2009/12 角川書店/角川スニーカー文庫
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