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2009.12.04

書評<ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争>

綿密な調査に基づくノンフィクションを上梓したきた著者の遺作となる長編である。朝鮮戦争について、マッカーサーはじめとするアメリカ・北朝鮮・中国の指導部層の動きと、戦場で凄惨な戦闘を繰り広げる兵士たち、両面から掘り起こし、その後の世界にもたらしたものを示唆する。

前線の兵士の戦闘についての記述も多数あるものの、それは地上戦に限定され、例えば華々しい仁川への上陸作戦についても、戦闘そのものよりも作戦実施に至る経緯の方が詳しく記述される。なので、あくまで朝鮮戦争の政治的な動きを追った長編ということができるだろう。その主題は第一に、極東で王様の如く振る舞うマッカーサー率いる東京司令部と、装備も覚悟も不足した兵士たちが戦う戦場の、悲惨なまでにかい離した現実認識への批判である。勝者のいない朝鮮戦争で、あえていえば勝者は毛沢東であるわけだが、それゆえの悲惨な独裁政治も後日談として描かれ、マッカーサーや毛沢東に代表される独善的な指導者が、その独善ゆえに判断を誤り、誤算を続けていくかがよく理解できる。
著者は「ベスト&ブライテスト」でベトナムで泥沼にはまっていくアメリカ政府の指導者層を描いたが、本書はそれに繋がる作品となる。そして現在の対テロ戦争まで、歴史というものはどうしてそこまで繰り返されるのか?そうした疑問を強く感じさせる読後感であった。

初版2009/10 文藝春秋/ハードカバー

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