書評<できそこないの男たち>
有性生物の基本は”女性”である。様々な事実からそれは明らかであり、遺伝子レベルでも受精卵から男性が発現するキーとなる遺伝子が発見された。つまり、どの生物もオスは基本的にどこか不完全なものであり、生物学的にいえば女性は男性より弱い。ではなぜ、人間の男性は今のような社会的役割につくことになったのか?著者独特の推論を考察する。
著者の作品を読むと、同じ感想ばかりだがやはりこういわざるをえない。「なぜ生物学者がこんなに文章がうまいのか」と。分子生物学は難解なところも多い学問だが、生物学者たちのスキャンダルや、詩的なメタファーを交えて読者にそれを分かりやすく説明する。基本的に書き下ろしではないので、ややテーマが散漫ではあるが、一気に読ませる面白さがある。専門的にいえばやや突っ込みどころも多いが、類似の遺伝を扱った書物に比べればその科学的根拠はしっかりしており、読み物として一流であることは確かだろう。
初版2008/10 光文社/光文社新書
« 書評<たんたんたたた―機関銃と近代日本> | Main | 書評<自衛隊89式小銃> »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 書評<ベリングキャット ――デジタルハンター、国家の嘘を暴く>(2022.08.28)
- 書評<バルサ・コンプレックス “ドリームチーム”&”FCメッシ”までの栄光と凋落>(2022.05.25)
- 書評<冷蔵と人間の歴史>(2022.05.24)
- 書評<ザ・コーポレーション>(2022.05.23)
- 書評<狩りの思考法>(2022.04.19)
The comments to this entry are closed.
Comments