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2010.01.31

C-17 Day1st

バッカニア製作の件、前言撤回させてください。CMR製とはいえ、いざパーツを見ると難度が高い。こりゃオレのレベルで3ヶ月でモノになるものではありません。来年向けにします。
というわけで、その代わりに手持ちでは大物の部類に入るこのキットで行きましょう。
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ドイツレベルの1/44ボーイングC-17AグローブマスターⅢです。1/144とはいえ、そこは60tあるM1エイブラムス主力戦闘戦車をも搭載できる巨人機。北海道在住の際はとても持ち込めなかったので、いい機会です。
早速、製作に入りましょう。
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このキットは胴体が内側・外側の2重構造で、内部が再現されています。なぜか輸送機や輸送艦の貨物搬入・搬出シーンが好きなので、ここはもちろんカーゴベイ・ドアをオープンにして製作。そのために、床面や下面胴体の切り離しが必要になります。その他、コクピットや脚収納庫などランナーから切り離して組み立てて塗装。
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F-22もそうでしたが、脚は収納庫に事前に接着しておく方式。構造上、しょうがないということもあるのですが、破損の心配や全体塗装の際のマスキングがしずらいのが難点。脚自体も機体の大きさにたいしてやや華奢。今後がちょっと心配です。
カーゴデッキの床はクレオスのスーパーメタリック・ステンレスにデカールで複雑な構造を再現。1/144なのでこのくらいで十分でしょう。胴体の内壁は下部をC317グレー、上部をノーマルのシルバーで塗り分けてます。
考えてみると、モデラーに出戻ってミニスケール製作は初めてかも。慎重にコトをすすめましょう。

2010.01.30

E-2C Completed

ハセガワ1/72グラマンE-2Cホークアイ、完成しました。
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E-2Cはアメリカ海軍の艦載早期警戒機として開発されました。太平洋戦争時の特攻機から始まる、空母機動艦隊への経空脅威に対する海軍の回答が強力な機上レーダーを搭載する早期警戒機でした。水平線越えあるいは低空侵入する敵機を探知するために機体背部に回転式レドームを装備するE-2は、その後の同種の航空機のお手本となりました。
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キットはハセガワ渾身の新金型製品をストレートで製作。シャープなスジ彫りが施されたパーツの合いにまったく問題なし。注意点は非常にテールヘビーなため、オモリを多めに仕込むことくらい。今回は案の定オモリが足りなかったため、ノーズギアの収納庫から釣り用のオモリを押し込んでいます。
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組み立てに手がかからない分、塗装は多量のマスキングテープと手間が必要となります。今回はエデュアルドのマスキングシートを使用して手抜きしていますが、それでも主翼と尾翼の前縁などは思ったより手間がかかります。エデュアルドのマスキングシート、標準装備でもいいくらい重宝です。
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E-2Cは”プアマンズ・AWACS”として各国空海軍で使用されており、今回はスカイ・デカールを使用してイスラエル国防軍仕様にしてみました。外形上の違いはコクピット上の空中給油プローブで、A-4スカイホークのキットのものを流用しています。塗装は上面C307・下面C308の制空迷彩。既に退役した機体ですが、今回の製作にあたってググッてみると、メキシコ空軍がイスラエル国防軍から中古のE-2Cを購入してるんです。もしかしたら実機はまた飛んでるのかも。
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今回はコクピット内のアンチグレアを塗り忘れるというアクシデントがありましたが、なんとかそれを突破して完成。整形したクリアパーツを引っぺがすという強引な作業でしたが、やればできるもんです。
こうなるとイスラエル迷彩の攻撃機ではなく、制空迷彩のF-15A/Cが並べたくなりますね。今年中にはなんとかしよう。

2010.01.23

E-2C Day7th

静岡県浜松市では、内袋にでもレジ袋をゴミ出しに使っちゃダメになるとか。こういう行き過ぎな分別は、まったくの机上の空論だと思う。我が静岡市まで、派生しなければよいが。
そんなこととは関係なく、E-2Cはデカール貼りまで。
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Hannantsから取り寄せたSky'sDecalを使って、イスラエル国防軍の192Sqn仕様にします。ただ、デカールの質が悪くパリパリと割れてしまうため、面積の多い部分はキットのデカールを使っています。おかげで予想外に時間を食ってしまいました。
デカールの乾燥を待ってトップコートを吹いて完成とします。


2010.01.19

書評<クライフ公認 「トータル」フットボーラーの全貌 >

サッカー界のカリスマといえば、その代表となるのがヨハン・クライフであることに異論は少ないと思う。選手時代はその卓越したテクニックと戦術眼で”トータル・フットボール”を生み出した一人であり、監督としてもバルセロナでいくつものタイトルを獲得している。今もオランダのサッカー界あるいはバルセロナで影に日向に大きな影響力を持っている。本書は彼の周囲の人間あるいは本人のインタビューを通して、プライベートを含めたクライフがどんな人物かを浮き彫りにしている。

自分が所属していた瀬戸内の小さな島の中学校のサッカー部でさえ、ナンバー14のユニフォームは常に中盤のエースがつける番号であった(決してナンバー10ではない)。それほどクライフの影響力は絶大だ。サッカーの面だけではなく、人としてのその個性は、多くのエピソードを生み出している。本書は本人公認でありながら、クライフのマイナス面も含めて紹介されている。
印象的なのは、そこかしこで見られる”騙し(フェイク)”が彼の人生の折々で見られること。”クライフ・ターン”とは、ただのフェイント・テクニックではなく、彼そのものを表しているのだと感じる。

初版2009/12 東邦出版/ソフトカバー

2010.01.18

書評<無人機とロボット兵器>


グローバルホークやプレデターの例をあげるまでもなく、すでに相当数の無人機がイラクやアフガンの戦場に投入されている。偵察・観測など、従来から無人機を投入している分野に加えて攻撃任務にも用いられており、今後はさらに多くの無人兵器が開発・投入されるだろう。本書はアメリカ海軍や海自で運用された無人ヘリ、DASHの失敗に始まる1960年代以後に開発された無人機について解説、将来の戦場を予測していく。

強固な核武装論者であったはずの著者が、無人兵器積極導入論者に宗旨替えしたらしい。本書は事実あるいは業界内のウワサを交えて無人兵器を紹介している。特に目新しい情報はないが、そこかしこに見られる中国への警戒感は著者らしい。隣国の脅威に対し、自衛隊あるいは海上保安庁への無人機導入がいかに有効かを主張している。
本書のもう一つの特徴は「ディーゼルエンジンへの異常な愛情」だ。無人機のエンジンとして航空機用あるいは車両用ディーゼルの搭載が提案されているのだが、その記述が長いこと長いこと。ヨーロッパはじめとしてディーゼルエンジンが見直されているのは分かるが、本筋とはまったく関係ないと思うのだが。

初版2009/12 並木書房/ソフトカバー

2010.01.17

E-2C Day6th

コクピットのアンチグレアを塗り忘れて組んでしまい、放置状態だったハセガワ1/72E-2C。思い切ってパーツを剥ぎ取り、塗り直すことにしました。
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力技で剥ぎ取っているため、もちろんクリアパーツは再利用できず、メーカー取り寄せにてパーツを補充。
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しっかりとマスキングしてアンチグレアをエアブラシにて塗装。
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裏面を塗装したパーツを接着。溶きパテで隙間を埋めてサンディング。そして機体色のクレオスC307を吹いてます。
アップには耐えられませんが、やや離れて鑑賞すれば大丈夫な程度には回復。ここで妥協して、スミ入れ、フィルタリングしていきます。

2010.01.14

書評<まんが パレスチナ問題>

とかく、日本人にはパレスチナ問題は分かりにくい。なにせ紀元前、ユダヤ教の成立時まで時を遡らなければならないし、いっけん宗教対立にみえるパレスチナ問題が、結局は土地を巡る問題だったり、事情が錯綜するからだ。本書は、その何千年にも渡るユダヤの歴史の入門書に最適だ。マンガとはいってもいわゆるコマ割りしてあるものではなく、挿絵のように差し込まれており、風刺画みたいなものだ。

本書を読むと、つくづくもユダヤ教を巡る問題は難しいと思う。個人的には、西欧諸国の二枚舌あるいは三枚舌ともいえる外交手法が、現在の不安定な状況を生み出したと考えるが、そもそもユダ教徒に選民意識があり、歴史のおりおりの機会に同化を拒んできたことにも原因があるのではないかとも感じる。本書の趣旨としてはキリスト教もユダヤ教もイスラム教も神は同じであり、当事者それぞれのエゴを抑えれば対立の解消もありえるとしている。が、それもあくまで部外者の見方であろう。

初版2005/01 講談社/講談社新書

2010.01.13

書評<蘇る零戦~国産戦闘機vs.F22の攻防>


新聞を読んでて不思議なことのひとつが、F-22をハイフンを除いてF22と表記すること。本書の著者はタイトルからも分かるように新聞界の出身であり、軍事の専門家ではない。
なので、例えばF-22について、しょっぱなから間違いが見られる。F-22のいわゆるステルス性能は敵地への侵攻能力のためではなく、絶対的航空優勢を獲得するためである。その基本的な誤解が、グアムや嘉手納へのF-22展開を、対北朝鮮政策に結びつける誤解へ結びつく。F-22の太平洋地域への展開はアメリカ空軍のグローバルな遠征の一環であり、記憶に新しい嘉手納への初展開時の遅れは、当時の対北朝鮮交渉への気遣いではなく、技術的な理由である。
ということで、すでにここで読む気が失せてしまう。本書は航空自衛隊へ自国の戦闘機の採用をせまるアメリカ政府と、なんとか自主開発を進めようとする防衛庁内局などとのせめぎ合いを取り上げているわけだが、しょっぱなの誤解が、本書全体におよんでいるのではないかと判断せざるをえないのである。例えば、空自幹部への取材一つとっても、なにか曲解が存在するのではないかと思ってしまう。パラパラとめくると技本のATD-X(先進技術実証機)に関する情報もあるので、非常に惜しいとは思うのだが。

初版2009/10 新潮社/ハードカバー

2010.01.12

書評<天地明察>

安井算哲、またの名を渋川晴海は将軍様お抱えの碁打衆の一人であった。碁打衆でありながら、算術や天文学の方に魅力を感じる彼は、やがて日本全国の天測を命じられる。長い旅の後に待っていたものは、改暦という天下の大事業であった。彼は果たしてその事業を成し遂げることができるのか?

ライトノベル界の売れっ子の一人が初めて執筆する歴史小説ということで、Amazonでもずっと入荷待ち状態の人気ぶり。個人的に時代小説を読むには知識不足なのだが、大雑把な歴史の流れが分かっていれば十分に楽しめる作品となっている。基本的には渋川晴海なる人物の成長物語であり、安寧の時代に生まれた武士、跡目を継ぐ可能性の少ない立場の彼が、良き師に恵まれ、大事業に挑んでいく姿を描く。フワフワした主人公が、自分のやるべき事業を見つけていくストーリーは、さわやかな読後感を残す。
歴史小説ではあるが、テーマは天測や改暦という”天体の運行”に関わることであり、ここらへんは”宇宙大好き!”であるラノベの読者を引き込むことを意識しているのかとも感じる。また、後に渋川の妻となる武家の娘との交流は、ラノベでよく見られる気弱な主人公とツンデレ娘の典型的なやり取りだ。著者の狙いや意図がよく見える作品でもあった。。

初版2009/12 角川書店/ハードカバー

2010.01.10

ホイホイさん Completed

気がつけば、1月も9日ですよ、奥さん。すでに2010年のSHS合同展示会の告知もあり、正月気分を吹っ飛ばすべく、2010年のモデラー生活開始。
今年のSHSは、これでいくつもりです。
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いつぞやの円高ユーロ安時に購入した、CMRの1/72バッカニアS.1。慣れないレジンキットなので、早めに手をつけていきます。
洗剤液に漬け込んで離型剤を落としている間、気分転換にコレ、いきましょう。
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コトブキヤの原寸大<一撃必虫ホイホイさん>。同名のマンガに登場する”殺虫用インターセプト・ドール”の組み立てキット。無表情でクールなのがいいのです。
キットとしては箱も大きくパーツも多めで、そこそこ時間がかかるのかと思ったですが・・・。
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正味5時間くらいで完成です。いわゆるイロプラキットのうえ、エプロンの文字や目はすでに塗装済み。なので今回はクレオスの新商品、フラットベース・なめらかスムースを吹き付けてあるのみ。このフラットベース、ブラックにふいてもさほど粉ふきが目立たず、いい感じです。
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ただ、ブラックのパーツはゲート処理跡が目立つので多少ヤスって、コンパウンドで磨いてあります。さすがにここらへんは、バンダイあたりと違いますかね。
あと、武器はさすがにグレー一色なので、ソードとハンドガンおよびホウキをそれっぽいカラーで塗装しています。
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コトブキヤのキットを組むのは初めてだったんですが、もうガレージキットメーカーに域をとっくに超えてますね。さすがです。Amazon見るとシリーズ化するみたいなので、ちょっと楽しみかも。
んじゃ、次いってみよう。

2010.01.09

書評<完全教祖マニュアル>

ややくだけたタイトルと文章ながら、宗教の本質を考える新書。”あなたが教祖になる方法”としながら、宗教の発生、その伝播をはじめとして、宗教につきものの巨大建築物や宗派対立あるいは他宗教排斥などを解説する。ときおり世界の3大宗教の実例を交えるため、それらの宗教の”なぜ”を知ることもできる。
本マニュアルによると、科学を信仰の基本としながらも、フシギな存在も認める自分は”ハードコア無宗教”となるようである。ちょっとだけ誇らしい気分になった。

初版2009/11 筑摩書房/ちくま新書

2010.01.08

書評<犬の力>

DEA(アメリカ麻薬取締局)の捜査官、アート・ケラーはメキシコでの捜査で部下を失い、復讐にも似た捜査を続ける。だが、一度回り始めた悪事の歯車は止まらない。繰り返される裏切りと殺人。そこに、南米での革命ドミノを恐れるアメリカ政府の工作活動が絡み、事態は複雑化していく。70年代から00年代まで、30年にならんとする執念の捜査を描くフィクション。

物語の印象としては映画「トラフィック」に似ている。復讐に憑かれ、強引な捜査を進める捜査官。麻薬カルテルの中で、裏切りを繰り返しながら幹部に上り詰めていくディーラー。街場のワルからのし上がっていくギャング。ヘロインやコカインをとおして、彼らの個別のエピソードがときおり絡み合いながら終端に向かう。30年に渡る物語ながら、まったく失速することのない、みごとなほどの疾走感だ。
その背後に蠢くのがCIAのエージェントだ。革命ドミノの阻止といいながら、野盗に等しいゲリラを支援し、麻薬ディーラーと取引する。イラン・コントラ事件やノリエガ将軍逮捕などの史実からして、まったくのフィクションではないだけに、麻薬ディーラーたちとどちらが”巨悪”か分からなくなる存在が、物語を分厚くしている。
久々に、読むのが止まらなかった作品。評価が高いのもうなづけます。

初版2009/08 角川書店/角川文庫

2010.01.07

書評<有坂銃>

日本の銃火器開発の歴史の中で、海外にもその名を知られる有坂茂章。有名な三十八年式歩兵銃の原型となる三十年式歩兵銃を開発し、またその時代の野砲などの開発でも、その中心となった人物である。本書は彼と彼の開発した銃火器を通して、明治から日露戦争にかけても歴史の一端を垣間見ることができる。

陸上兵器体系の基礎となるライフルと野砲は、意外なほど高度なテクノロジーに支えられている。先進国のコピーをすればいいというものではない。冶金学や火薬学などを適切に用いなければ、姿かたちは同じでも、ただのガラクタである。本書の主役である有坂は、海外からの情報を基本に、自らのアイデアを取り入れつつ、日露戦争はもちろん、太平洋戦争まで使われるライフルや野砲を設計した。平時から試行錯誤を繰り返し、いざ戦時ともなれば、現場からの声に早急に答える技術開発に没頭する。わずかな改良が傑作兵器となり、わずかな齟齬が現場で不評を招く。そこに、欧米と比べれば開発途上であった2次大戦以前の日本の技術力の限界と、日本人の兵器に対する態度が見え隠れする。著者による「とにかく”見栄”を要求する姿勢」という分析は概ね正しく、また現代まで続いていると思う。「存在することではなく、使えることが大事」という某大臣のセリフは、その組織だけではなく、ライフル一挺から適用されるものである。

初版2009/10 光人社/光人社文庫

2010.01.06

書評<英国のダービーマッチ>


少しでもサッカーに詳しい人なら、英国のダービーマッチのアツさはよく知っていると思うし、そこにはイギリスの階級社会やキリスト教の宗派対立が反映されていることも知っているだろう。だが、著者は部外者が抱きがちなその見方を否定しないまでも、単純すぎると指摘する。それでは、マンチェスターあるいはリバプールといった街でどのようなことが原因で、同じ地区にあるチームがいがみ合うことになってしまっているのか?本書はオフィシャルな情報だけに頼ることなく、サポーターたちのインタビューなどを絡めて、英国8都市のダービーマッチがどんな歴史を持ち、現状に至るかを解説する。

日本では”ホーム&アウェイ”の概念でさえ希薄なのに、ダービーマッチともなると、なかなかその真相は理解し難い。それもそのはずで、本書を読むと、100年以上の歴史の中の”恨み辛み”があってこそ、はじめて”ダービー”といえるのだとつくづく思う。よく言われるような宗教差別やチームの出自ゆえの対立もある。だが、スター選手の移籍をはじめとした、クラブを巡る事件の積み重ねがダービーマッチをアツくする。近年では、プレミアリーグのその金満ぶりに群がる富豪たちへの逆恨みなど、事態はますます複雑だ。
サッカーはそのプレーそのものが面白いのはもちろん、その周辺のカルチャーも興味深い。本書を読むとその思いがますます強くなる。

初版2009/09 白水社/ハードカバー

2010.01.05

書評<偉大なるマントーバ>

サッカーにまつわる寓話、つまりフィクションの短編を6編集めたもの。スポーツライターである著者が、オーソドックスなスポーツノンフィクションあるいはインタビュー形式と様々な文体でサッカーに纏わる物語を創作している。
とはいえ、それぞれの短編は下敷きがある。例えば第1章「リベロ」は、おそらくは2006年のドイツ・ワールドカップにおいて、主人公のようなリベロがいればよかった、という著者の願望であり、第2章「大戦術家の訓話」はオシム前日本代表監督はじめとした世界の有名ディレクターたちの残した言葉をそれっぽくまとめたものである。
はっきりいうと、「もしオレがスポーツライターだったら」という夢想を抱くライター志望の人間なら書けそうな文章ばかりなのだが、経験だったり見聞だったりにキャリアの違いが見え隠れし、そこがライターを生業にする人間とシロウトを分ける境界線だったりすると思う次第。プロになるのも、なかなか難しいものです。

初版2009/08 東邦出版/ソフトカバー

2010.01.03

書評<空軍創設と組織のイノベーション>

第一次世界大戦後、航空機が戦争に与えたインパクトはとてつもなく大きく、様々な航空機による戦略理論が提唱された。それを受け、第2次世界大戦との戦間期にドイツあるいはイギリスといった国で空軍が創設されることとなる。
日本でも空軍創設に関する議論が巻き起こったが、陸軍と海軍の意見の隔たりが原因で頓挫。皮肉にも敗戦の色濃い太平洋戦争後期に、日本本土爆撃が激しくなってから、防空の必要上からそれが一部実現する。一方、敗戦後の再軍備にあたり、比較的スムーズに航空自衛隊は誕生した。この2者の違いはどこにあったのか?組織のあり方、状況判断、政治的上位者の介入などを検討し、それを解明していく。

空軍創設がテーマということなのだが、実際にはタイトル後半の”組織のイノベーション”が主題であり、その意味ではビジネス書なんかに近い内容。ちょっと不思議なスタンスなので検索してみると、この「ストラテジー選書」シリーズ自体が軍事とビジネスの戦略をクロスさせて考える、みたいな感じらしい。
なので、空軍創設にまつわる歴史やエピソードはほどほどに、そもそも新しい組織の立ち上げとはいかなるときに必要になるのか、どんな抵抗にあうのか、その抵抗を拒否するにはどんな方法があるのかといった組織論に終始する。ミリタリー的なものとして読もうと思うと、そこらへんはちょっと退屈。そこをがんばれば、航空自衛隊が旧軍のどんな失敗を踏み台にして立ち上げられたかが理解できる。

本書だけの感想ではないのだが、日本の太平洋戦争敗北の一因として、陸軍と海軍の対立は大きかったとつくづく思う(そもそも、開戦もここらへんに主要因が潜むと個人的には思う)。おのおのもプライドも大切だが、どうか自衛隊はこんなに愚かな官僚同士の対立をして欲しくないものである。


初版2008/12 芙蓉書房出版/ソフトカバー

2010.01.02

書評<富士山噴火>

美しい富士山は活火山であり、噴火による被害を想定した、いわゆるハザードマップが作成されてされている。火山の噴火による被害は火山灰の降下、マグマの流出、火砕流など様々なものがあり、本書は世界の活火山の噴火による実例と、ハザードマップをもとにして、富士山噴火でどのような事態が起きるかを解説している。事例解説は平易に、想定される事態は冷静に解説されており、非常に役に立つものである。

静岡市に引っ越して2ヶ月、伊東市を中心にした起こった群発地震にビビり(静岡市は震度2が1回あっただけだが)、急きょ購入してみた。
結論から言うと、富士山の西側である静岡市は案外と大丈夫そうである。これは周辺の地形や上空の偏西風の影響が大きく、むしろ東京を含む関東一円の方が火山灰降下などの被害が大きいと想定されている。怖いのは東海地震や東南海地震との連動だ。そうなると、経済的な問題含めて地域的な問題ではなく、日本全体を揺るがすことになりそうだが。
火山噴火は大変な被害をもたらすが、その後は肥沃な大地の形成など恩恵をもたらす、と締めるところが学者さんらしい科学解説書である。

初版2007/11  講談社/ブルーバックス

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