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2010.01.03

書評<空軍創設と組織のイノベーション>

第一次世界大戦後、航空機が戦争に与えたインパクトはとてつもなく大きく、様々な航空機による戦略理論が提唱された。それを受け、第2次世界大戦との戦間期にドイツあるいはイギリスといった国で空軍が創設されることとなる。
日本でも空軍創設に関する議論が巻き起こったが、陸軍と海軍の意見の隔たりが原因で頓挫。皮肉にも敗戦の色濃い太平洋戦争後期に、日本本土爆撃が激しくなってから、防空の必要上からそれが一部実現する。一方、敗戦後の再軍備にあたり、比較的スムーズに航空自衛隊は誕生した。この2者の違いはどこにあったのか?組織のあり方、状況判断、政治的上位者の介入などを検討し、それを解明していく。

空軍創設がテーマということなのだが、実際にはタイトル後半の”組織のイノベーション”が主題であり、その意味ではビジネス書なんかに近い内容。ちょっと不思議なスタンスなので検索してみると、この「ストラテジー選書」シリーズ自体が軍事とビジネスの戦略をクロスさせて考える、みたいな感じらしい。
なので、空軍創設にまつわる歴史やエピソードはほどほどに、そもそも新しい組織の立ち上げとはいかなるときに必要になるのか、どんな抵抗にあうのか、その抵抗を拒否するにはどんな方法があるのかといった組織論に終始する。ミリタリー的なものとして読もうと思うと、そこらへんはちょっと退屈。そこをがんばれば、航空自衛隊が旧軍のどんな失敗を踏み台にして立ち上げられたかが理解できる。

本書だけの感想ではないのだが、日本の太平洋戦争敗北の一因として、陸軍と海軍の対立は大きかったとつくづく思う(そもそも、開戦もここらへんに主要因が潜むと個人的には思う)。おのおのもプライドも大切だが、どうか自衛隊はこんなに愚かな官僚同士の対立をして欲しくないものである。


初版2008/12 芙蓉書房出版/ソフトカバー

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Comments

その本、欲しかったのですが
片付けとか大掃除とか本棚の整理とかあって
迷っていました。
面白そうですねえ。
ポチってしまおうかしらん><

>Mach0.9さん
仕事もうえでも参考になる本だと思うので、ぜひドゾー。

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