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書評<犬の力>

DEA(アメリカ麻薬取締局)の捜査官、アート・ケラーはメキシコでの捜査で部下を失い、復讐にも似た捜査を続ける。だが、一度回り始めた悪事の歯車は止まらない。繰り返される裏切りと殺人。そこに、南米での革命ドミノを恐れるアメリカ政府の工作活動が絡み、事態は複雑化していく。70年代から00年代まで、30年にならんとする執念の捜査を描くフィクション。

物語の印象としては映画「トラフィック」に似ている。復讐に憑かれ、強引な捜査を進める捜査官。麻薬カルテルの中で、裏切りを繰り返しながら幹部に上り詰めていくディーラー。街場のワルからのし上がっていくギャング。ヘロインやコカインをとおして、彼らの個別のエピソードがときおり絡み合いながら終端に向かう。30年に渡る物語ながら、まったく失速することのない、みごとなほどの疾走感だ。
その背後に蠢くのがCIAのエージェントだ。革命ドミノの阻止といいながら、野盗に等しいゲリラを支援し、麻薬ディーラーと取引する。イラン・コントラ事件やノリエガ将軍逮捕などの史実からして、まったくのフィクションではないだけに、麻薬ディーラーたちとどちらが”巨悪”か分からなくなる存在が、物語を分厚くしている。
久々に、読むのが止まらなかった作品。評価が高いのもうなづけます。

初版2009/08 角川書店/角川文庫

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