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2010.01.06

書評<英国のダービーマッチ>


少しでもサッカーに詳しい人なら、英国のダービーマッチのアツさはよく知っていると思うし、そこにはイギリスの階級社会やキリスト教の宗派対立が反映されていることも知っているだろう。だが、著者は部外者が抱きがちなその見方を否定しないまでも、単純すぎると指摘する。それでは、マンチェスターあるいはリバプールといった街でどのようなことが原因で、同じ地区にあるチームがいがみ合うことになってしまっているのか?本書はオフィシャルな情報だけに頼ることなく、サポーターたちのインタビューなどを絡めて、英国8都市のダービーマッチがどんな歴史を持ち、現状に至るかを解説する。

日本では”ホーム&アウェイ”の概念でさえ希薄なのに、ダービーマッチともなると、なかなかその真相は理解し難い。それもそのはずで、本書を読むと、100年以上の歴史の中の”恨み辛み”があってこそ、はじめて”ダービー”といえるのだとつくづく思う。よく言われるような宗教差別やチームの出自ゆえの対立もある。だが、スター選手の移籍をはじめとした、クラブを巡る事件の積み重ねがダービーマッチをアツくする。近年では、プレミアリーグのその金満ぶりに群がる富豪たちへの逆恨みなど、事態はますます複雑だ。
サッカーはそのプレーそのものが面白いのはもちろん、その周辺のカルチャーも興味深い。本書を読むとその思いがますます強くなる。

初版2009/09 白水社/ハードカバー

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