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2010.02.20

書評<代替医療のトリック>

我々が通常受ける医療と違い、独自の理論を基にした代替医療なるものがある。本書ではその代替医療の代表格のホメオパシー、鍼、カイロプラクティック、ハーブ療法について分析し、それが本当に効果があるものなのか、あくまで科学的根拠と統計学についてその答えを探るのが本書である。医療の歴史の中で確立された二重盲検法やデータレビューを駆使し、代替医療にいわゆるプラセボ効果以上のものはまったくない、そのデタラメさを暴いていく。

科学ジャーナリストとして名を知られるサイモン・シンが代替医療についてレビューする。本書がすごいのは、とことんまで科学的・理論的にあろうとしている点だ。例えばホメオパシー。人体に有害な物質の溶液を摂取することにより治療を施すとされているわけだが、特に奇妙なのは希釈すればするほど効果的であるとされている点だ。中学生レベルの物理で、高価な”高度希釈液”には有用とされる物資の分子すら存在しないことが分かるわけだが、本書はそこにとどまらず、様々なデータに基づいて分析にかける。この徹底的な分析の後でホメオパシーなるものをまだ有用だと考える人がいるならば、もはやそれは医療ではなく宗教だろう。

今の主流の医療や製薬会社に問題がないとはいわない。だが、代替医療の有害さに比べれば、我々ははるかに恩恵を受けているといえるだろう。首相はじめ政府や厚労省の一部に代替医療の推進をすすめる勢力があるようだが、ぜひとも本書を読んでほしい。

初版2010/01 新潮社/ハードカバー

2010.02.16

書評<サッカー日本代表システム進化論>

80年代初期、日本の代表選手たちがアマからプロに変わっていく端境期から、とりあえずはワールドカップ出場常連国になっている現在までの日本代表のシステムはどう変化してきたのか?当時の選手たちやコーチの証言から、監督の個性や選手たちの力の向上まで交えて、その変化を分析していく。

サポティスタでも触れられているが、本題はシステムの変遷を辿ることではなく、日本代表のサッカースタイルの変化を分析することで、いかに日本サッカー協会の方針がブレているかを暴くことなのではないかと思う。それまでの監督の不満点を解消する人事といえば聞こえはいいかも知れないが、肝心の「どんなサッカーを目指すのか」が抜け落ちているので、システムや戦術がガラリと変わる。それでは前監督の積み上げたことが無と化してしまう。監督が変わるごとにリセットしていては、世界に伍する「日本スタイル」の確立など、いつまで経っても無理だろう。
日本サッカー協会は、これまでフランスの強化スタイルを模倣していたが、今年からはそれをスペインに変えたようである。なんというか、協会サイドは反省する気がまったくないな、こりゃ。

初版2010/02 学研パブリッシング/新書

2010.02.15

書評<ザ・ジャグル―汝と共に平和のあらんことを〈1〉>

100年近く続いた地球を覆っていた戦火が止んだ。軌道上のスペースコロニーの国家群や地球上の国家群の複雑な駆け引きの後、軌道エレベーターを中心とした海上都市・オフィールが建設される。復興の象徴である都市の影には、特殊部隊の暗躍があった。テロを手品のように未然に消し去る”ザ・ジャグル”。部隊は闇に紛れて今日も戦いを続ける。

もはや”オリジナル”にこだわることに意味がないとは重々承知している。しかし、限度があると思うんだ。舞台設定はいわゆる平成ガンダム、状況設定はボトムズ、戦後の復興と元兵士たちの苦悩というテーマは初期アップルシードあるいはボトムズ外伝「青の騎士」あたりか。なんだか・・・ねえ。もちろん、いわゆるパワードスーツを使う状況やスタンドアローンの戦いを強いられる状況設定など、いろいろとひねられているのは分かるのだが、やはりどこかで読んだ話であることは否めない。外部の観察者として記者を配置すれど、使いこなしてるとはいえないし。文章自体は、テクニックがあるとは思うのですが。

初版2010/01 早川書房/ハヤカワ文庫JA

2010.02.14

C-17 Day4th&5th

レベルのC-17、悪戦苦闘中です。
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3輪ボギーの主脚が4本分、前脚のダブルタイヤと合わせてタイヤが14個ホイールのホワイト吹いた後でタイヤブラックを筆塗りしたのですが、作業中にマジで気分が悪くなってきました(笑)。
エンジンポッドは最近のエアライナーのごとくカバーがコア部分を隠してくれれば、だいぶん手が抜けるのですが、今回はそうもいかない。そのため、シルバー系統で塗り分けながら、サンディングしながら妥協点を探っていきます。
悪いことに、エンジンポッドの先端部品にひどいヒケ。先週も感じましたが、ドイツレベルにしてはこのキットはやっつけ仕事のようです。うーん、ネットを探っても完成例が出てこないわけだ。

2010.02.13

書評<サッカーを100倍楽しむための審判入門>


とかく批判を受けがちなサッカーの審判。だが、審判が実際にはどんな資格を持ち、試合前はどんな準備をしているのか?あるいは審判委員会の中でどんな評価を受け、ジャッジはどんなふうに変わっているのか?審判の世界の実際について、日本サッカー協会の審判委員長自らが解説する。

日本サッカー協会の審判委員長が、Jリーグの公式戦の”疑問の判定”について説明し、審判個々について実名で批判あるいは賞賛をする。これだけでも、この本を読む価値が思う。サッカーは一瞬で局面が変わるスポーツであり、スピードアップが著しいモダン・サッカーでは、審判の負担も非常に高まっている。そんな中で審判がどんな判断をしているのか、サッカー観戦を見る目が変わる1冊だ。
Jリーグのコアサポータークラスになると、試合当日のマッチデープログラムを見て、相手チームだけではなく主審の名前まで混みで試合展開を予想する。サポーターの観戦レベルも上がり、贔屓目で我がチームをかばうあまりブーイングをしてるのではない。そこのとこも、審判委員長には分かってほしいものである。

初版2009/12 講談社/ソフトカバー

2010.02.08

書評<眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎>


ヴェネチアのとある貴族の一族は、50歳前後になって発症する奇妙な病に取り憑かれていた。不眠からやがて死に至る病<致死性家族性不眠症(FFI)>である。多くの親族をなくしながら、3世紀に渡って正確な病名も分からなかったが、やがて世界に似た病が存在すること、その病に共通するのが<プリオン>なるたんぱく質であることが分かってくる。

<眠れない一族>は物語の切り口にすぎない。本書はプリオンを巡る粗大なノンフィクションである。イギリスでアウトブレイクした<狂牛病>によって一気に名を知られたプリオンだが、そこに至るまでには様々な発見と研究があった。本書を読めば、プリオンを巡る現在までの歴史が一気に理解できる。その歴史をただ書き重ねるだけでは退屈な読み物だが、様々なエピソードの積み重ねによって、著者は本書をプリオンを主題とした一流の”ミステリー”に仕上げている。ヴェネチア貴族の数奇な運命。汚れ仕事をいとわない、有能だがロリコンがたまにキズの科学者のフィールドワーク。傲慢な嫌われ者のノーベル賞学者の研究。対応の遅れで狂牛病被害を広げた、どこぞの国の厚生省のようなイギリスの官僚組織。かなりの長編だが、一気に読み進めた。

本書によると、日本人は狂牛病に対する抵抗力は遺伝的にないそうである。お気楽にマックを食ってる場合ではないのかもしれない。

初版2007/12  紀伊國屋書店/ハードカバー

2010.02.07

C-17 Day2nd&Day3rd

今回のトヨタの大量リコールの問題についての社長の会見はひどかった。特に英語が。なんつーか、ドメスティックで、とても国際企業の社長とは思えん。

そんなこととは関係なく、C-17は主要構成部の切り出しと組み立て。
今回は自分としては珍しく、アフターパーツを用いて一部を改造。
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ウルフパックデザインのC-17用のフラップダウンセットを使用して、前縁フラップと後縁フラップをダウン仕様にします。ウルフパックデザイン、現用機モデラーのこだわりをくすぐるアイテムを発売してるのですが、手に入りにくいのがたまにキズ。札幌在住時代にガネットに入荷待ち注文しておいて、忘れたころに静岡で受け取った次第。
C-17はSTOL性能を確保するために、大面積のスロッテッド・フラップを採用しており、その構造が複雑。なので主翼パーツはこんな構成に。
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本来のパーツはウラオモテ2枚ですが、前縁および後縁をカットしてレジンパーツを組み込みます。普段、あんまり大工事をしないので、カットソーを使った主翼パーツの切断だけで一日がかり。疲れました。
主翼パーツの目処がついたところで、胴体パーツを切り出したわけですが・・・
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これはヒドイ。機首部分にどうやらプラが回りきらなかったようで、一部が欠けています。ドイツレベルは信頼のおけるメーカーのはずだったんですが、ちょっと残念。エポキシパテで補填することとしましょう。
胴体パーツも固定したところで、とりあえず仮組みしてみる。
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1/144ということもあるのでしょうが、C-17の立体を見て印象に残るのは、太い胴体よりもむしろ高い垂直尾翼です。バランスを取るのが大変なんだろうなあ。
次はエンジンポッドですよ。

2010.02.01

書評<世界犯罪機構>

旧ユーゴスラビア紛争の取材をとおして、そこにはびこる犯罪組織の暗躍を深く知ることになった著者が、バルカン半島を出発点に、世界各地の犯罪組織を取材し、その組織の実態と国際的なつながりを明かしていくノンフィクション。

コロンビアの麻薬カルテルの例を出すまでもなく、小国の国家予算をものともしない資産を持った犯罪組織はこれまでもあったし、その犯罪行為が国境を越えることも当たり前であった。だが、本書は犯罪組織が越境を超え、世界を網の目のように覆っている姿を浮かび上がらせる。それはやはり、ソ連の崩壊の影響が大きい。共産主義陣営の急速な体制崩壊とその後の脆弱な国家体制は、法などものともせず金儲けに走る犯罪組織を生み出した。世界の半分を覆うに過ぎなかった犯罪組織が、もう半分ともつながることになったのである。それに、世界経済のグローバル化が拍車をかける。カネのサービスのダイナミックな動き、際限なく拡大し続ける貧富の差、そういった諸々の社会問題が、ダイレクトに犯罪組織の拡大につながっている。違法薬物の販売や人身売買を中心として、各国の犯罪組織が繋がりを強めている実態を本書は描き出している。
新しい犯罪も生まれている。迷惑メールのフォルダをたまに除くと、ブラジルなどいわゆるBRICsと呼ばれる国からのメールが数多くある。これらサーバー犯罪にも、組織犯罪は大きく関わる。
現在のグローバル企業のごとく、拡大と国際的提携を続けていく犯罪組織。市場原理主義の負の一面である彼らの暗躍は、現在の世界情勢が激変しない限りは続くだろう。ゆるやかでもいい、社会構造の変化を望まずにはいられない。

初版2009/11 光文社/ハードカバー

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