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2010.02.20

書評<代替医療のトリック>

我々が通常受ける医療と違い、独自の理論を基にした代替医療なるものがある。本書ではその代替医療の代表格のホメオパシー、鍼、カイロプラクティック、ハーブ療法について分析し、それが本当に効果があるものなのか、あくまで科学的根拠と統計学についてその答えを探るのが本書である。医療の歴史の中で確立された二重盲検法やデータレビューを駆使し、代替医療にいわゆるプラセボ効果以上のものはまったくない、そのデタラメさを暴いていく。

科学ジャーナリストとして名を知られるサイモン・シンが代替医療についてレビューする。本書がすごいのは、とことんまで科学的・理論的にあろうとしている点だ。例えばホメオパシー。人体に有害な物質の溶液を摂取することにより治療を施すとされているわけだが、特に奇妙なのは希釈すればするほど効果的であるとされている点だ。中学生レベルの物理で、高価な”高度希釈液”には有用とされる物資の分子すら存在しないことが分かるわけだが、本書はそこにとどまらず、様々なデータに基づいて分析にかける。この徹底的な分析の後でホメオパシーなるものをまだ有用だと考える人がいるならば、もはやそれは医療ではなく宗教だろう。

今の主流の医療や製薬会社に問題がないとはいわない。だが、代替医療の有害さに比べれば、我々ははるかに恩恵を受けているといえるだろう。首相はじめ政府や厚労省の一部に代替医療の推進をすすめる勢力があるようだが、ぜひとも本書を読んでほしい。

初版2010/01 新潮社/ハードカバー

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