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2010.02.08

書評<眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎>


ヴェネチアのとある貴族の一族は、50歳前後になって発症する奇妙な病に取り憑かれていた。不眠からやがて死に至る病<致死性家族性不眠症(FFI)>である。多くの親族をなくしながら、3世紀に渡って正確な病名も分からなかったが、やがて世界に似た病が存在すること、その病に共通するのが<プリオン>なるたんぱく質であることが分かってくる。

<眠れない一族>は物語の切り口にすぎない。本書はプリオンを巡る粗大なノンフィクションである。イギリスでアウトブレイクした<狂牛病>によって一気に名を知られたプリオンだが、そこに至るまでには様々な発見と研究があった。本書を読めば、プリオンを巡る現在までの歴史が一気に理解できる。その歴史をただ書き重ねるだけでは退屈な読み物だが、様々なエピソードの積み重ねによって、著者は本書をプリオンを主題とした一流の”ミステリー”に仕上げている。ヴェネチア貴族の数奇な運命。汚れ仕事をいとわない、有能だがロリコンがたまにキズの科学者のフィールドワーク。傲慢な嫌われ者のノーベル賞学者の研究。対応の遅れで狂牛病被害を広げた、どこぞの国の厚生省のようなイギリスの官僚組織。かなりの長編だが、一気に読み進めた。

本書によると、日本人は狂牛病に対する抵抗力は遺伝的にないそうである。お気楽にマックを食ってる場合ではないのかもしれない。

初版2007/12  紀伊國屋書店/ハードカバー

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