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書評<機龍警察>

非対称戦の常態化に伴う、市街戦あるいは近接戦闘の頻発に対し、戦闘を有利に進めるための回答として開発された二足歩行兵器「機甲兵装」。歩兵戦闘に革命をもたらしたそれは、やがて犯罪の道具として一般社会に登場することとなる。警視庁はその特殊な犯罪への対抗策として、「龍機兵」と呼ばれる装備を用いた特捜部を設立する。外部からの人員を組み入れたその組織に、既存の警察組織は大きく反発する。そこに、機甲兵装を用いた立て篭もり事件が発生。特捜部はSATと対立する。

「踊る大走査線」以来、、何か取り沙汰される警察という特殊かつ閉鎖的組織が抱える問題。犯罪組織がもたらす銃火器を用いた重犯罪。それらとリアルロボオタの夢である二足歩行兵器を組み合わせた警察小説である。傭兵をはじめとした個性的なキャラクターを配しながらも(わるくいえば非現実的な)、現実の警察組織を登場させることで現実感を漂わせる。パターンとしてはパトレイバーそのものだが、ミリタリー感が強く描かれており、個人的には非常に好みである。これは意図してのことだと思うが、本作のワクの外に設定されている世界観などが、Z続編でより深く描かれれば、これは大化けする、かも。

初版2010/03 早川書房/ハヤカワ文庫JA

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書評<天冥の標 2 救世群>

西暦201X年、ミクロネシアのパラオで未知のウイルスによるパンデミックが発生する。「冥王班」と呼ばれるそれは、驚異的な致死率と感染力で世界を恐怖に陥れ、さらに「冥王班」の生存者がウイルスを保菌したままであるその特性から、人類の運命を変えていくこととなる。

10編に及ぶ大長編と予告されている「天冥の標」シリーズ第二作。本作はSFというよりはシュミレーションに近く、未知の感染症に対する医療関係者や各国政府の対応などを現在の延長線上で予測する。よって、本作だけ読んでもウイルス・パニックの恐怖をまざまざと感じることができる。もちろん、第一作につながる固有名詞もいろいろと出てくるが、まだまだ底は見えない。以下、ネタバレありで個人的に今後を予測。


本作では冥王班ウイルスの保菌者が隔離されるところまで描かれているが、このウイルスが人類を二分することになる。ウイルス保菌者は最終的にスペースコロニーへと隔離されることとなり、やがてガンダムでいうところのスペースノイドとアースノイドの対立へ至り、戦争に突入。負けた方が植民と称して宇宙の果てへ旅立つことになる・・・・こんなとこでどうでしょ?浅いわな、やっぱり。


初版2010/03 早川書房/ハヤカワ文庫JA

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F-104G Day5th

天気が良くっても、花粉がすごくて外出する気しないっす。札幌に住んでた間、このことをすっかり忘れていた・・・。
結局、F-104Gで三連休が終わってしまった。
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最終段階であるRocketeerDecal謹製のデカール貼り。すでに何人かのモデラーさんのレポートにもありますが、使用感は良好で、ニスも目立ちません。例えば機首のゴールドラインの間はニスがあるわけですが、写真でもまったくわからないでしょ?ただ、その薄さゆえ扱いは慎重さを要します。台紙から貼る場所に滑らせる基本を守りましょう。守らないとどうなるかはSHSにて。

ここまで順調にきたわけですが、ここにきて机から落下事故。幸か不幸か、ファインディテールの金属製ピトー管から真っ直ぐ落下、釣り針のようにひん曲がりながら、さらに折れることによってショックを吸収し、機体は破損なしで済みました。うーん、このF-104Gはよほどツイているのかも。

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F-104G Day4thあたり

ちょこちょこイジっていたNASA仕様のF-104G、いよいよ全体塗装です。
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けっこうサンディングしたので全体にサーフェイサーを吹いた後、クレオスのクールホワイトを全体に納得いくまで吹きます。グロス仕上げなので塗膜の厚さは妥協します。
マスキングしながらとりあえずの完成形はこう。
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なにも考えずに上から順、ということでコバルトブルー→スカイブルーの順で吹きましたが、後から考えると機首の矢印のマスキングシートも付属しているので、スカイブルー→コバルトブルーの順でマスキングした方がベターでしょう。側面から見ると直線になるように配色されているので、マスキングが案外と難しく何度も吹き直したので、当たり前ですがマスキングは慎重にしましょう。
ツヤを合わせるためにこの段階でも3回ほどクリアーを吹いてます。多少の段差やホコリは残ってしまいましたが、さすがNASA、カッコイイです。早くデカール貼りたい。

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書評<微睡みのセフィロト>

従来の人類である感覚者(サード)と超次元能力を持つ(フォース)の戦争から17年。世界政府準備委員会の要人が300億個の立方体に”混断”される事件が起こる。世界連邦保安機構の捜査官パットは、フォースである少女、ラファエルとともに捜査を開始する。

ラノベ作家の一歩先へ向かっている著者のデビュー作の復刊。後の傑作「マルドゥック・スクランブル」へ繋がる設定も見られるが、「マルドゥック・スクランブル」ほど退廃的な雰囲気は少ない。むしろ正統派のラノベというか、それなりに自己の解放と勧善懲悪の物語である。破滅的な戦争後ゆえ、元兵士である自己に施された思考と能力の制限との葛藤。世界を不安定化しようとする勢力との戦い。充分にカタルシスが得られる物語だ。
超能力少女とノーマルな捜査官のコンビという組み合わせなら、当然のごとく主人公は少女であるはずだが、本作の主人公は捜査官パットであり、その点で、本作はむしろ初出の徳間デュアル文庫ではなく、”ラノベからそのままSFへ向かってしまったオトナ”向けのハヤカワ文庫に向いていたと思う。著者はシュピーゲル・シリーズを最後のラノベとするらしいが、本書のような物語も紡ぎ続けてほしい。

初版2010/03 早川書房/ハヤカワ文庫JA

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書評<「感情」の地政学>

いわゆる地政学とは、その国のおかれた地理的状況を把握し、その状況が政治や外交、あるいは軍事にどのような影響をもたらしているのかを分析する学問だ。本書の著者は大胆に「感情」をもって地政学的分析を行うことにより、現在の国際情勢を分析する。高い経済成長率を維持するインドと中国をはじめとするアジアは「希望」。テロに揺れるイスラム世界は「屈辱」。そしてそれに「怖れ」を感じるヨーロッパとアメリカ。地域を覆う感情が国際情勢にいかに影響をおよぼしているのかを解説する。

本書の3つのキーワードである「希望」「屈辱」「怖れ」は、いずれも人々の「自信」の持ち方に起因する。豊かな生活への希望。世界の文明の中心から滑り落ちた屈辱。世界の中心から滑り落ちるのではないかという怖れ。そういった国民感情が世界を動かすという著者の主題は、個人的には非常に納得いくものであった。
例えばイラク戦争開戦時、反戦派のアメリカの人たちは「政府(あるいは一部のエリート層)が石油獲得のためにイラクに侵攻する」ことに反対していたわけだが(例えばマイケル・ムーア)、個人的にはそこはかとなく違和感があった。経済的理由よりも、ネオコンと呼ばれる人たちが「アメリカ的市場主義・民主主義こそ至上」として、傲慢なまでの自信のもとに戦争を仕掛けたという、本書でいう「感情」的理由の方が割合としては大きいと考えていたわけだが、本書はその裏づけを与えてくれている。
いずれにしろ、経済や軍事バランスだけが要因ではない、現在の複雑な国際関係をよく説明しているといえる。表題から予想されるほどカタい文章でもないので、お奨めです。

初版2010/03 早川書房/ハードカバー

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書評<ケルベロス 鋼鉄の猟犬>

ヒトラーが暗殺され、枢軸同盟が崩れたものの、第二次世界大戦に突入してしまった架空の世界。ドイツでは親衛隊はじめとしてナチス勢力は一掃された。だが、”独裁者の玩具”と呼ばれながらも、大衆の熱狂的な支持ゆえに存続を認められた師団があった。犬にも似たアーマーを装面・装着する<装甲猟兵>である。
一方、国防軍はワイマール体制のもとでその指揮権を取り戻しており、東部戦線で泥沼にはまりながらも、起死回生の撤退作戦をスターリングラードで敢行しようとする。<装甲猟兵>は忌むべき部隊として、その地獄で最後の役割を与えられた。

押井守のライフワークである<ケルベロス・サーガ>の原点としてラジオドラマで放送されたエピソードをノベル化。後に首都警に導入されるプロテクト・ギアを使う部隊の最期を、カメラを抱えた広報部隊の女性監督の目を通して描く。
前作<ASSAULT GIRLS>では、フツーのラノベなみのあっさりとした文章だったが、本作では押井守のクドイ文章が健在。ワルシャワ、ハリコフ、スターリングラードと東部戦線の要衝地を巡りながら、兵器と戦争と映画についてのウンチクを語るのが文章のメインで、<装甲猟兵>の物語はいっそオマケみたいなもの。装甲列車、巨大な列車砲といった異端の兵器、また電撃戦や市街戦の戦術を主人公たちが延々と語る。それでもって最期はメロドラマ。まあいつものパターンですね。信者の方は購入必須、それ以外の方は非推奨ということで。

初版2010/02 幻冬舎/ソフトカバー

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書評<<サッカースカウティングレポート>


サッカーにおいて相手チームの戦力分析をすることをスカウティングという。ある程度は数字の裏づけがある野球などと違って、サッカーはその人の”観る目”がすべてといっていい。では、プロのスカウティング・スタッフは相手チームのどこを見て、何を監督や選手に伝えるのか。日本代表でスカウティング・スタッフを勤め、サンフレッチェ広島などで監督経験もある著者が、それを解説する。

世の中には4-2-3-1といったフォーメーションですべてサッカーを説明しようとする強引なジャーナリストもいるが、もちろんそれは邪道であり、それはいわば”スカウティング・メモ”の1ページ目に過ぎない。守備でいえば、マンツーマンでマークするのか、ゾーンをカバーするのか?フォア・チェックにいくのか、ある程度のラインでブロックをつくるのか?など、様々な要素を観ていかなければならない。もちろんモダン・サッカーは前述したような戦術は二者択一ではなく、それをどう組み合わせるのかが監督の手腕だ(本書の中ではグラデーションと呼んでいる)。そのグラデーションを個々のカラーに分けるのがスカウティングであり、それを少しでも理解することができれば、我々シロウトもサッカーを観る目が養われるわけである。
本書は多くの実例とともにスカウティングのポイントを紹介しているわけだが、それを監督や選手に伝える手法にも多くのページが割かれている。そういう意味では、コーチング・スタッフのための”実用書”ともいえるだろう。

初版2010/02 カイゼン/ソフトカバー

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地球深部探査船<ちきゅう>一般公開に行ってきた

清水港に停泊中の地球深部探査船<ちきゅう>の一般公開に行ってきた。
<ちきゅう>は海洋研究開発機構に所属する海底7000mを採掘可能な調査船。雲に隠れるくらいの巨大なやぐらが支えるボーリングリグが特徴的で、メカフェチ魂をくすぐります。
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全長210mのわりに大きな船に見えるのは、乾舷が高くて横幅が広い船型のせいでしょうか。雨に塗れながら甲板まで梯子をのぼり、まずはブリッジへ。
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採掘船という性格上、船位保持が重要なため、推進システムは船首と船尾に装備されているアジマススラスターを6基装備して、ジョイスティックとトラックボールで操縦。操縦データを支援するGPSも、ロッカーほどの大きさの高級なものが搭載されてました。独特の機関表示が無意味にカッコイイ。
高いやぐらを持つ本質的に不安定な船なので、バラストの調整もこれまた重要。CRTにて厳密に管理されてます。見慣れた?自衛艦のブリッジとは一味も二味も違います。
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ちなみに、ソナーも装備されてます。呉の広報館に陸揚げされているSS<ゆうしお>のそれによく似ていますが、こっちの方が最新っぽい。
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船内には様々な研究施設が配置されてます。
地質学、古生物学、古磁気学などに関する各種装置の中で、一番大規模なのはこのCTスキャン。
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ちなみに船内の階段はすべてフツーの階段で、ブリッジまではエレベーターもありました。やっぱり見慣れた?自衛艦とは違います(笑)。
雨天のためか安全のため、デッキの公開は少なめ。
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ライザー採掘と呼ばれる、泥水を使用した流体採掘のための多量のパイプ類。ミサイルの搭載ラックみたいで萌え。ちなみに、その先にはダイヤモンドのヘッドがついたこのドリルが装着されます。
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これにて見学終了。一般の方よりは船を見慣れてるワタクシですが、もっとゆっくり見たかったと思うくらい、珍しい装置でいっぱいでした。
ちなみに対岸から見るとこう。
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うーん、でかい。全体の船型撮るには周遊船乗るしかないな、こりゃ。

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F-104G Day1st

Twitter界隈で盛り上がっていたF-104祭りに遅ればせながら参加させていただくことにしました。
Rocketeerdacalさんとこのマルヨン用デカールを使ってSHSにて展示するこの企画、ウイングバックは<1/72 F-104A & G "NASA Officers">のF-104Gでいきます。
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レベルのC-17Aにレジンパーツを組み込んでパテ盛ってサンディング、パテ盛ってサンディングを繰り返していたため、パーツを切り出し→ゲート処理→エアブラシで塗装と順調に進むだけでも癒される感じ。当たり前といえば当たり前だが、優秀なキットをストレート組みするのはなんと楽しいことよ。やっぱり、オレはこっちの方が向いてるなあ。

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書評<テストパイロット インジャパン>


航空自衛隊の各務ヶ原ABは飛行開発実験団の本拠地である。新規採用の航空機あるいは装備機材の試験、あるいメーカーから出荷されたそれらの受領試験などを任務とし、そのために様々な航空機が所属している。そしてそこは空自のテストパイロットたちの巣でもある。常に未知の領域に踏み込むことを日常とする彼らを、印象的な写真とともに紹介する。

軍事関係のフィクションも多く手がける鳴海章が、TACネーム”カービー”のインタビューを中心にし、飛行開発実験団の装備や役割の特殊性、あるいはテストパイロットという特殊なパイロットたちの日常を紹介してる。とはいえ、いわゆる”フォトブック”的な形態であり、専門的な記述は少なく、むしろ著者のエッセイ的な部分もあることから、雰囲気重視であることは否めない。飛行開発実験団という特殊性から、”防秘”の壁も厚いだろうが、もう少し具体的な記述が欲しいものだ。そのスジの人には”イカロス出版ぽい”といえば雰囲気が分かってもらえますかね。

初版2010/02 枻出版社/ソフトカバー

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書評<凍った地球―スノーボールアースと生命進化の物語>

地球の気候は、定期的に大規模な変動に見舞われている。プレートテクニクス、太陽の影響、生物の呼吸による大規模な大気構成の変化など、様々な要因によって氷河期が繰り返されていることが分かっている。特に原生代中期に訪れた氷河期は、赤道まで氷床に覆われる全球凍結であったとされる仮説が注目を浴びている。いわゆる”スノーボール・アース”仮説である。本書はその仮説を唱えている科学者と親交があり、自身も地質学者である著者が、全球凍結仮説を平易に解説し、その仮説を巡る論争を紹介する。そのうえで、全球凍結を生物がどのように生き延びたかを検証する。

化石による生物の記録を辿ると、生物は幾度にもわたる大量絶滅を繰り返している。よく知られているのは小惑星衝突による恐竜の絶滅だが、それをはるかに超える絶滅が起こっているのだ。恐竜の絶滅についても、証拠とされるメキシコのユカタン半島の衝突跡より前の地層に、恐竜の絶滅が始まっている証拠が見つかっている。ひらたく言って、小惑星の衝突はとどめの一撃に過ぎないのだ。
それでは、何が生物の大量絶滅を引き起こすのか?それが地球の気候その他の大変動である。前記したプレートテクニクスその他の理論によって気候や地軸の大変動の発生が証明されつつあり、そのもっとも大規模なものがいわゆる”スノーボール・アース”仮説である。著者はその理論を唱える科学者らと懇意にしており、おおむね肯定の姿勢で全球凍結仮説を紹介しているが、あくまで仮説であり、仮説にやや破綻があることも指摘している点は、科学解説書として正しい姿勢といえるだろう。

ちまたでは”地球温暖化の危機”が叫ばれているが、長期的に見れば現在は”間氷期”であり、ゆるやかに寒冷化の方向に向かっているとされる。このあたりの中長期の気候変動とつき合わせて地球温暖化を考えるためにも、参考となる一冊だ。

初版2009/01 新潮社/新潮社選書

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