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2010.03.02

書評<凍った地球―スノーボールアースと生命進化の物語>

地球の気候は、定期的に大規模な変動に見舞われている。プレートテクニクス、太陽の影響、生物の呼吸による大規模な大気構成の変化など、様々な要因によって氷河期が繰り返されていることが分かっている。特に原生代中期に訪れた氷河期は、赤道まで氷床に覆われる全球凍結であったとされる仮説が注目を浴びている。いわゆる”スノーボール・アース”仮説である。本書はその仮説を唱えている科学者と親交があり、自身も地質学者である著者が、全球凍結仮説を平易に解説し、その仮説を巡る論争を紹介する。そのうえで、全球凍結を生物がどのように生き延びたかを検証する。

化石による生物の記録を辿ると、生物は幾度にもわたる大量絶滅を繰り返している。よく知られているのは小惑星衝突による恐竜の絶滅だが、それをはるかに超える絶滅が起こっているのだ。恐竜の絶滅についても、証拠とされるメキシコのユカタン半島の衝突跡より前の地層に、恐竜の絶滅が始まっている証拠が見つかっている。ひらたく言って、小惑星の衝突はとどめの一撃に過ぎないのだ。
それでは、何が生物の大量絶滅を引き起こすのか?それが地球の気候その他の大変動である。前記したプレートテクニクスその他の理論によって気候や地軸の大変動の発生が証明されつつあり、そのもっとも大規模なものがいわゆる”スノーボール・アース”仮説である。著者はその理論を唱える科学者らと懇意にしており、おおむね肯定の姿勢で全球凍結仮説を紹介しているが、あくまで仮説であり、仮説にやや破綻があることも指摘している点は、科学解説書として正しい姿勢といえるだろう。

ちまたでは”地球温暖化の危機”が叫ばれているが、長期的に見れば現在は”間氷期”であり、ゆるやかに寒冷化の方向に向かっているとされる。このあたりの中長期の気候変動とつき合わせて地球温暖化を考えるためにも、参考となる一冊だ。

初版2009/01 新潮社/新潮社選書

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Comments

類書を読みましたがおもしろかったです。

日本の科学プロジェクトである、全地球史解明の中にも、
同様のトピックはありますけど、スノーボールアースほど大きく扱っていません。
そういうことに近いことがあった痕跡はある、という認め方でバランスを取る立ち位置もありそうです。

京都モデルによる太陽系生成から、全地球史解明あたりを含めて、
非常におもしろいので注目しています。

>Mach0.9さん
地質学の調査は実際には地味な作業なのでしょうが、非常に学問として面白い分野ですよね。
もう少し突っ込んだ本も読んでみます。

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