« 書評<「感情」の地政学> | Main | F-104G Day4thあたり »

2010.03.18

書評<微睡みのセフィロト>

従来の人類である感覚者(サード)と超次元能力を持つ(フォース)の戦争から17年。世界政府準備委員会の要人が300億個の立方体に”混断”される事件が起こる。世界連邦保安機構の捜査官パットは、フォースである少女、ラファエルとともに捜査を開始する。

ラノベ作家の一歩先へ向かっている著者のデビュー作の復刊。後の傑作「マルドゥック・スクランブル」へ繋がる設定も見られるが、「マルドゥック・スクランブル」ほど退廃的な雰囲気は少ない。むしろ正統派のラノベというか、それなりに自己の解放と勧善懲悪の物語である。破滅的な戦争後ゆえ、元兵士である自己に施された思考と能力の制限との葛藤。世界を不安定化しようとする勢力との戦い。充分にカタルシスが得られる物語だ。
超能力少女とノーマルな捜査官のコンビという組み合わせなら、当然のごとく主人公は少女であるはずだが、本作の主人公は捜査官パットであり、その点で、本作はむしろ初出の徳間デュアル文庫ではなく、”ラノベからそのままSFへ向かってしまったオトナ”向けのハヤカワ文庫に向いていたと思う。著者はシュピーゲル・シリーズを最後のラノベとするらしいが、本書のような物語も紡ぎ続けてほしい。

初版2010/03 早川書房/ハヤカワ文庫JA

« 書評<「感情」の地政学> | Main | F-104G Day4thあたり »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 書評<微睡みのセフィロト>:

« 書評<「感情」の地政学> | Main | F-104G Day4thあたり »

My Photo
August 2022
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

Twitter


無料ブログはココログ