書評<<サッカースカウティングレポート>
サッカーにおいて相手チームの戦力分析をすることをスカウティングという。ある程度は数字の裏づけがある野球などと違って、サッカーはその人の”観る目”がすべてといっていい。では、プロのスカウティング・スタッフは相手チームのどこを見て、何を監督や選手に伝えるのか。日本代表でスカウティング・スタッフを勤め、サンフレッチェ広島などで監督経験もある著者が、それを解説する。
世の中には4-2-3-1といったフォーメーションですべてサッカーを説明しようとする強引なジャーナリストもいるが、もちろんそれは邪道であり、それはいわば”スカウティング・メモ”の1ページ目に過ぎない。守備でいえば、マンツーマンでマークするのか、ゾーンをカバーするのか?フォア・チェックにいくのか、ある程度のラインでブロックをつくるのか?など、様々な要素を観ていかなければならない。もちろんモダン・サッカーは前述したような戦術は二者択一ではなく、それをどう組み合わせるのかが監督の手腕だ(本書の中ではグラデーションと呼んでいる)。そのグラデーションを個々のカラーに分けるのがスカウティングであり、それを少しでも理解することができれば、我々シロウトもサッカーを観る目が養われるわけである。
本書は多くの実例とともにスカウティングのポイントを紹介しているわけだが、それを監督や選手に伝える手法にも多くのページが割かれている。そういう意味では、コーチング・スタッフのための”実用書”ともいえるだろう。
初版2010/02 カイゼン/ソフトカバー
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