書評<生命 最初の30年億年>
生命史や進化論に興味を持つ人でも、たいていその興味の先はカンブリア紀、つまり三葉虫以後の生物の歴史ではなかろうか?しかしながら、生命の歴史はむしろその発生から多細胞生物にいきつくまで、”最初の30億年”の方が圧倒的に長い。その30億年については専門的な研究もなかなか進んでいないが、微細な化石の発掘などにより、その謎が明らかになりつつある。本書では世界中をカンブリア紀以前の生命の痕跡を発掘してまわっている著者が、現在明らかになっている生命の最初の30億年の歴史を組み立てる。
本書は生命史の本というよりは、むしろ地学の本であると思う。20億年とか15億年前とかいうオーダーの生命の痕跡となると、その地層そのものを探すことがもはや冒険であり、化石というよりも岩石の分析がメインとなるからだ。岩石の組成にいかに生命の跡を見つけることができるか?そこに、地球の歴史において何が起こったかを見出すか?科学的分析を積み重ね、事実を推測していく。
最初期のバクテリアがどのように生まれ、どのように今の細胞構造を成すようになったか。そのバクテリアが世界に伝播していくことにより、どのように地球環境が変化していったか?謎はまだ多いが、地球環境の形成の基本的歴史が見えてくる。生命の最初期の研究の最前線を知ることができる良書である。
初版2005/07 紀伊國屋書店/ハードカバー
« 書評<水ビジネス 110兆円水市場の攻防> | Main | 書評<オルタード・カーボン> »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 書評<ベリングキャット ――デジタルハンター、国家の嘘を暴く>(2022.08.28)
- 書評<バルサ・コンプレックス “ドリームチーム”&”FCメッシ”までの栄光と凋落>(2022.05.25)
- 書評<冷蔵と人間の歴史>(2022.05.24)
- 書評<ザ・コーポレーション>(2022.05.23)
- 書評<狩りの思考法>(2022.04.19)
Comments