書評<まだ科学で解けない13の謎>
現代では「宇宙のはじまり」や「生命と死」など、根源的問題も含めてほとんどの事象は科学的に説明できるし、今現在は証明できなくても、いわゆる”常識的な仮説”が打ち立てられている。アインシュタインの特殊相対性理論に疑いを持つ余地はないし、常温核融合なんてできっこない。だが、科学者にはいつも異端が存在する。現に”定説”だけでは説明できない事象があるのだ。本書はその中から13の代表的な事象を取り上げ、”異端の学説”を紹介している。
やっぱり科学は面白いです。例えば”13の謎”の1つ、ホメオパシー。こないだ、ホメオパシーを徹底的に批判するサイモン・シンの<大体医療のトリック>を読んだわけだが、本書は「もしかしたらホメオパシー、効くかも」という説を紹介している。ホメオパシーとは病気の原因物質を希釈して服用する代替医療なわけだが、そのデタラメさの主要因は原因物質の分子1個さえ存在しないほど繰り返す希釈にある。だが、従来考えられていたより水分子の結合は弱く、何らかの分子が入り込んだ分子構造、つまり”水の記憶”が保持され、デタラメな希釈液になんらかの効果があるのかもしれないというのである。もちろん、この説はまだ異端だ。だが、その可能性も検討するのが科学である。そしてそれがパラダイム・シフトにつながるのだ。定説のみを信じ込むのもまた科学的態度ではない、と思い出させてくれる本である。
初版2010/04 草思社/ハードカバー
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