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書評<全体主義>

現在、”全体主義”という言葉は、ファシズム、ナチズム、スターリニズムを含んでいる。それぞれに民族・国家・イデオロギーなど、根幹とする思想が違うのにも関わらず、ひとまとめにして象徴的に”民主主義の敵”とされている。本書はファシズム、ナチズム、スターリニズムそれぞれがどのような歴史を辿り、アーレントをはじめとした批評家たちがそれをどのように批判してきたかを探る。

”強制収容所”をはじめとして、いわゆる全体主義体制には多くの共通点があるものの、それぞれに特徴を抱える。例えばナチズムはその暴力を国家の外側に設定したのに対し、スターリニズムは国家の内側、つまり自国民に向けたことなどだ。著者が全体主義体制がもたらした”結果”を問うのではなく、その起源を辿り、それぞれの思想を問うているのは、現在の民主主義・資本主義体制を擁護するための一種の方便として全体主義が使われる危機感を持っているからだ。民主主義にも欠点があるのにも関わらず、「全体主義に比べれば」と思考停止してしまうと、欠点を隠蔽することになる。そのためにも、著者はあらためて全体主義体制の内容を問うているのである。

初版2010/05 平凡社/平凡社新書

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書評<オシム 勝つ日本>

監督として彼が実践するサッカーのみならず、そのメッセージ性溢れる言葉とカリスマ性になんとも魅力を感じさせる全日本代表監督、イビチャ・オシム。彼が日本のサッカー界の現状や、世界のサッカー界を見渡し、彼独特の分析をまとめた1冊。

「Number」その他スポーツ誌の連載などが初出であり、彼の言動を負ってきた者ならば、特別新しい解釈などはない。リスクを背負うことを嫌う日本のサッカー選手たちに喝を入れ、マネーが巡るビジネスの舞台と化したヨーロッパのサッカー界の現状を憂う。
しかしながら、彼の広い人脈とサッカーへの愛ゆえ、常に新しい価値観を提供してくれるのも確かだ。岡田現代表監督はじめとして日本のサッカーは「前線からのプレス」で時代が止まっているような気がするが、パスの正確さやポジショニングなど、サッカーはハンドボールやバスケットボールが持つ要素を取り入れてなお進化中である。彼が日本代表監督のままであったなら、それら新しい価値観を日本サッカー界にいち早く取り入れてくれたのではないか?つくづくも病に倒れたのは痛恨であった。

初版2010/04 文藝春秋/ソフトカバー

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書評<傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学>

擦り傷・切り傷は止血した後、消毒薬をふりかけた後にガーゼや絆創膏を貼って乾燥させて治癒を待つ、というのが常識だった。しかしながら、最近は「湿潤療法」と呼ばれる、消毒薬を使うことなく、傷口を乾燥させることなく治療する方法が徐々に広まっているようである。
ジュクジュクとした浸出液に覆われた傷はいかにも不潔そうで、消毒をして浸出液をふき取りたくなる。しかし、消毒液は皮膚の常在菌をも殺して皮膚の再生を妨げ、傷の乾燥を保つのも治癒に逆効果となる。ゆえに、サランラップなどで傷を覆って傷の湿度を保ったほうが、治癒が早く後も残らない。かさぶたを作らないという”革命”なのだ。著者は、こういったこれまでの常識を覆す「湿潤療法」を確立した医師であり、科学的な見地に基づいてこの療法の効果を紹介し、医師と我々にパラダイムシフトをせまる。

個人的なコトながら、本書を読み進んでいる途中で後頭部にできた「粉瘤」なるデキモノが破裂、大量の膿が噴出し、皮膚に大穴が開いた。この「粉瘤」、クセになっているのか、2年前にも外科で切開して膿を出して縫合している。今回も本来は皮膚科なりに行くべきところだが、本書がいうところを試してみたくなり、著者推薦の「キズパワーパッド」で湿潤療法を実践してみた。確かに化膿することなく1週間ほどでほぼ治癒した。前回は縫合して1週間で抜糸している。厳密にいうと2つの「粉瘤」を比べることはできないが、それでも従来の治療に対抗するくらいの治療法であることは確かなことのようだ。少なくとも怪しい民間療法のたぐいではない。
しかしながら、もはや地球で一番清潔といって過言ではない日本だけで通じる治療だけのような気もするし、著者の皮膚常在菌へのこだわりは過信のような気もする。シロウトでも医療に対するパラダイムシフトは難しいと感じるのに、医師ならなおさらだろう。この湿潤療法については、もう少し経過を見守りたい。

初版2009/06 光文社/光文社新書

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RF-4E(JASDF 50th Anniversary) Completed

SHS2010用の吶喊工事第2弾は空自のRF-4Eの空自50周年記念バージョンです。
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キットはハセガワの限定バージョンをストレート組み。ピトー管のみファインモールド製に交換しています。
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この機体、勝負はいうまでも塗装。クレオスのメタリックブルーをビン生で吹いています。シルバー系ということで、隠ぺい力があるのかと思いきゃ、思いっきり下地の影響を受けるカラーでした。TwitterでB!Mのメンバーからアドバイスをいただき、コバルトブルーを下地に吹いた後、メタリックブルーを吹いてようやく満足。
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さらに問題なのがカルトのデカール。主翼前縁やタンクの先端など、デカールが届かないところ以外はシルバー含めてほぼデカールです。デカール貼り始めて分かったことですが、メタリックブルーの塗装面は意外なほど荒れていて、シルバリングしまくり。さらに乾燥時間が足りなかったのか、クリアー吹くとポツポツと気泡が・・・(泣)。
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塗装下地やデカールの乾燥時間など、まだまだ勉強が足りないとつくづく思う製作でした。まあ一番の教訓はあわてないことでしょうか。接着剤や塗装の乾燥時間を舐めてはいけないと、あらためて思う今日この頃です。

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F-4E(AUP) Completed

ゴールデンウィーク中に吶喊工事で作った静岡向けの作品をアップします。

昨今のユーロ通貨危機で話題のギリシャ空軍のF-4Eの近代化改修バージョンです。
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キットはハセガワの1/72のF-4Fを小改造。アメリカ海軍仕様に取り付けられていたインテイクサイドのECMアンテナを追加、機首のIFFアンテナをファインモールドのF-18用エッチングパーツから持ってきて追加しています。
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迷彩に使われているカラーはF-16Nアグレッサーの指定色と一緒で、ハセガワの説明書を信じるならばブルー系がC73エアクラフトグレー、他の2色のグレーがC324ビン生および、C334バーリーグレー+C317グレー。しかし、実記写真と雰囲気が違うため、彩度に差が出るように適当に調整しています。エアブラシの吹きっぱなしですが、ちゃんとマスキングすれば、もっとハッキリした迷彩になったかも。
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デカールはギリシャのイカロスデカール。部隊名は339AWS/117CWとなっております。F-16系統もそうですが、ギリシャ空軍の機体は相当汚れていて、きつめのフィルタリングおよび、タミヤのウェザリングマスターのススをこすりつけてます。これでもまだ足りない気が(笑)。
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トルコとの険悪な関係のせいで意外なほど航空戦力が充実してるギリシャ空軍ですが、冒頭述べたような財政危機のための緊縮予算のせいで、せっかく近代化したF-4Eの先行きも怪しいかも。ファントムファンとしては、長生きしてほしいものです。

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静岡ホビーショー2010に行ってきた その③

SHS2010合同作品展のレポート、最終回はワタクシが所属しているBlog!Modelersの展示ブースのご紹介。あらかじめですが、全部は掲載できないのでご容赦のほどを。
全体図はこんな感じ。
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今年もYDCCさんとの合同展示となりました。ガンプラから各ジャンルのスケールモデルまで、幅広いラインナップでお子さんからベテランさんまで幅広いお客さんに来ていただけました。
まずはリーダー、KazuさんのP-61ブラックウィドー。
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グロスの塗装と排気煙のウェザリングの対比が素敵。すでにジオラマ化への構想も練られているようです。
次はかぽうさんの1/72ニムロッドAEW.3。
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エアフィックス改造の大物ということで注目を集めていました。小さい子供さんは「アヒルみたい」との評価。
次も大物、apuroさんのマーキュリー。
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個人的にディスカバリーチャンネルのNASAのドキュメントを見た後だったので、グッときましたよ。カプセルの中のワイヤーは天井から吊るして塗装するんだって。すげー。
次はご近所さん?になった作佐御大のサボイア。
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いい雰囲気のジオラマです。今度、在庫を引き受けに訪問します(笑)。
次はrocketeerさんのNASAトランスポーター・クローラー。
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自宅に帰って、サターン・ロケットを持ってきて立てたい出来栄え。
次はヒロシさんのロータスF1。
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”漢の1/12”ということで、リベットまで打ってある細かさ。凄い工作です。
今回もご一緒させていただいたYDCCからは、会長でMGのライターでもあるYUKIさんの1/48アイマス機。
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F-2はディテールアップパーツを使わないで超絶作り込み。F-22Aは塗装せずにデカールのみ。いろんな手法を駆使されてます。塗装しない方が、するよりも数倍手間がかかるのだとか。人工精霊さんのフィギュアと合わせて、プロモーションフォトのよう。
YDCCのブースではRocketeerさんプロデュースのデカールを使用したNASA F-104のコンペも展示。
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チェイサーとして様々な塗装もさることながら、ハセガワとイタレリとエレールの違いを楽しんだり、普段はカーモデラーの方との仕上げの違いを楽しんだり、有意義なお祭りとなりました。
最後は拙のロングノーズ・ファントム。
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相も変わらずファントムですが、数を並べて違いを楽しむ1/72派なので、これで良しとします。

今年は懇親会の幹事と司会もさせていただき、充実した2日間でした。特に懇親会では、つたない司会ながら、皆様のご協力により楽しい宴席となったと思います。
来年もまた、よろしくお願いします。


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静岡ホビーショー2010に行ってきた  その②

SHS2010の報告第2弾は合同作品展の個人的注目作品をアップ。
まずは毎年、お声をかけさせていただいているモデラーズクラブH.U.Dさん。
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今回は銀幕の搭乗機たちを展示されてました。なかでも注目はコレ。
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Mig-31”ファイア・フォックス”。フルスクラッチかと思いきゃ、レジンのムクのガレキを個人輸入されたとのこと。作者さんいわく「ホワイトメタルの脚が歪んだ」とか。次回に向けての仕込をすでに始められているそうで、今から楽しみです。
次は渡辺さん(ごめんなさい、クラブ名のメモをなくしちゃいました)のカマンHH-43Eハスキー。
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他にも1/32から1/72まで、いろんなヘリのローターが回っていて壮観の一言。1/72のテイルローターはギヤではなく摩擦力で回してるんだとか。すごいっす。
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KWAT師匠はエースからレベルまで古今東西の1/72のF-101ブドゥー。意外や意外、最新のレベルも難儀だったとか。ご苦労様です。
マクロス関係ではVF-1RidersさんのハセガワのYF-19試作6号機。
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カラーリングのセンスが抜群。ところで、発売延期になっていたYF-19のムック、ようやく発売されるみたいです。
吃宙線の会では、いろんな宇宙戦艦ヤマトシリーズの艦船が並んでいたわけですが、
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白色彗星、カコイイ。思えば、特攻というものを知ったのは宇宙戦艦ヤマトⅡだったなあ。
つぎはひやめし会さんのTKX。
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まさに世界最速モデリング。スマートなスタイリングですなあ。
次はK2Cさんのブリティッシュ・ファントム。
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エレベーターデッキの可動もさることながら、このエクストラダークシーグレイの色合いはマネしたい。でもできない(笑)。名人芸です。
AFVでは台湾迷彩会さんのストライカーICV。
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先端の付属物はIEDおよび地雷除去装置でしょうか。さすがAFVクラブの母国、最新仕様でせめてきます。

このほかにもキリがないくらい、熱のこもった作品が満載。年に一度のモチベーションの補給をさせてもらいました。お話を聞かせていただいた方々、ありがとうございました。

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静岡ホビーショー2010に行ってきた  その①

今年も年に一度のお祭りの日がやってきました。静岡ホビーショー2010(以下SHS2010と略)およびクラブ合同作品展に、BlogModelersの一員として参加。今年は地元・静岡からの参加ということで、札幌という一番遠いところから一番近いところからの参加。おかげで一人だけスケジュールがラクチンです。
今年も何度かに分けてレポートします。まずは速報性ということで、独断と偏見にもとづいた新商品情報。
まずはハセガワから。
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5月25日とすでに近日発売の1/72のF-16Iサファ。レギュラーパッケージでの発売ということで、1/48と同じように各国バージョンでの発売も期待されるところ。
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アイマス機の第2期シリーズはレベルの1/48のキットを使ったA-10Aが一番のトピックでしょうか。
JMCだかどこだかでF-35の開発発表があったのですが、ここでは続報はなし。
続いてフジミ。
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もはやヒコーキの新規開発はやめたと勝手に思っていたところに、7月に1/72F-22Aラプター発売。もちろん新金型で、¥3,900という予価から考えると本格的なキットになるのでしょう。その他、フジミに関してはブログモデラーズの皆さんはF-1の新キットに興味津々。
お次はプラッツ。
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ドラゴンと提携して、スペースドラゴンと称する完成品のシリーズが展開。スペースシャトルはまあいいとして。
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日本人の魂、H-ⅡBロケットも開発してくれるらしい。楽しみっす。
さらに1/72のT-33Aの開発が発表。
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グローバルホークあたりと同じで東欧製のキットになるんですかね。こちらも楽しみです。
東欧つながりでエデュアルドのエッチングパーツの実演をやっていたビーバーコーポレーション。
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間の悪いことに、キネティックから1/72のF-16Iの発売が発表。発売日を社長におたずねしたところ、「こちらが訊きたいです」との返事。この発売時期のズレがハセガワにとっての救いか。KWAT師匠おっしゃるように、ウェポン満載での発売を期待。
さらに一部の話題を独占?した発表が。
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世界限定発売だったはずの1/72のTSR.2が、まさかのストラトスフォーとのコラボとして再販。買いたい人はすでに買っているので、時すでに遅しの感は否めないと個人的には思うのですが。
アオシマの注目はやっぱこれですかね。
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6月発売予定の小惑星探査機<はやぶさ>。<はやぶさ>の帰還を待ちながらコイツを作るのもオツなもの。単発の企画モノかと思われたこのシリーズ、さらに続きが。
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宇宙ステーション補給機、HTV。日本の技術力をアピールするラインアップ、いい感じです。てゆうか、太陽電池って何色を塗るんだ?
最後は東京マルイ。
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エアガン・ガスガンは相変わらずの特殊部隊仕様のライフル・ハンドガン全盛仕様。とはいえ、御殿場の駐屯地祭で展示されたUSMCのライフルもこのくらい、ゴテゴテとオプション装着してたもんな。もう、オプション装着は特別じゃないのかも。残るは、アンチマテリアル・ライフルの発売か。ところで、
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アメリカ空軍の次期ハンドガンがベレッタのPx4(とのウワサ)とは知らなかったなあ。いかにもイタリアンなデザインが武器であることを忘れさせるようなデザイン。

個人的に気になったのはこんな感じでしょうか。スペースドラゴンにアオシマの<はやぶさ>、その他にも参考出品ですがタカラトミーの食玩にISS(宇宙ステーション)があったりと、宇宙がちょっとブーム気味。その熱を冷まさせないためにも、無事に帰って来いよ、<はやぶさ>。

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書評<謎解き超常現象 II >

映画「2012」の公開あたりから、またぞろ終末論がちまたの話題にのるようになっている。この世に超常現象のねたはつきない。本書は新ネタとして「2012」関連のトピックをはじめとして、最近の超常現象を科学的に検証する。

短いトピックで超常現象の謎をといていくシリーズ第2弾。本シリーズは、実際に現場に足を運んで取材しているところに好感が持てる。だが正直、新鮮味がなくなっているのも本当のところ。「2012」関連もさほどのインパクトはない。またぞろ「太陽系の直列」とか「ノストラダムス」とか持ち出さなければならないとは、超常現象肯定論者もつらいところだろう。否定論者としても、なにかこうインパクトがあることが起きないかと期待してしまう今日この頃である(笑)。

初版2010/04 彩図社/ハードカバー

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書評<まだ科学で解けない13の謎>

現代では「宇宙のはじまり」や「生命と死」など、根源的問題も含めてほとんどの事象は科学的に説明できるし、今現在は証明できなくても、いわゆる”常識的な仮説”が打ち立てられている。アインシュタインの特殊相対性理論に疑いを持つ余地はないし、常温核融合なんてできっこない。だが、科学者にはいつも異端が存在する。現に”定説”だけでは説明できない事象があるのだ。本書はその中から13の代表的な事象を取り上げ、”異端の学説”を紹介している。

やっぱり科学は面白いです。例えば”13の謎”の1つ、ホメオパシー。こないだ、ホメオパシーを徹底的に批判するサイモン・シンの<大体医療のトリック>を読んだわけだが、本書は「もしかしたらホメオパシー、効くかも」という説を紹介している。ホメオパシーとは病気の原因物質を希釈して服用する代替医療なわけだが、そのデタラメさの主要因は原因物質の分子1個さえ存在しないほど繰り返す希釈にある。だが、従来考えられていたより水分子の結合は弱く、何らかの分子が入り込んだ分子構造、つまり”水の記憶”が保持され、デタラメな希釈液になんらかの効果があるのかもしれないというのである。もちろん、この説はまだ異端だ。だが、その可能性も検討するのが科学である。そしてそれがパラダイム・シフトにつながるのだ。定説のみを信じ込むのもまた科学的態度ではない、と思い出させてくれる本である。

初版2010/04 草思社/ハードカバー

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書評<神様のメモ帳1~4>

神様のメモ帳〈2〉 (電撃文庫)

神様のメモ帳〈3〉 (電撃文庫)

神様のメモ帳〈4〉 (電撃文庫)

内向的で友達もいない高校一年生、鳴海は何でもないきっかけで彩夏と知り合い、園芸部に所属することになった。そして彩夏のバイト先で、路地裏に集う”ニート”たちと、”ニート探偵”を名乗る美少女と出会った。彼らとの出会いと、彩夏が巻き込まれたトラブルが鳴海を変えていく。

2ちゃんねるのおすすめラノベに常にタイトルが上がる傑作らしいので、連休中に一気読みしてみた。そして見事にハマリました。物語のスタートで単なるボーイ・ミーツ・ガール的なライトなお話かと思いきゃ、ストーリーが進めば進むほど、物語は重くなっていくと同時に、読むのを止められなくなる。ラノベの読者層にありがちな、情動の薄い少年の成長物語と、ちゃんとした探偵物語(つまり推理モノ)が同時に味わえる。さらに社会不適応者ながら特殊な技能を持つニートの仲間たちが協力して事件を解決していくことで”友情”、引きこもりニートのアリスで”萌え”をしっかりと押さえる。見事である。

初版2007/01 メディアワークス/電撃文庫

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書評<去年はいい年になるだろう>

2001年9月11日、24世紀の未来から<ガーディアン>と名乗るアンドロイドたちが突如、出現した。圧倒的な技術力で世界の軍事力を無力化した彼らの目的は、「人類を不幸から守ること」であった。犯罪や事故には未然に介入し、それを防ぐ。地震などの天災はそれを通告し、避難に協力する。
SF作家の山本弘は<ガーディアン>の少女の訪問を受け、彼らの目的と、未来の自分からのメッセージを受け取る。当初は<ガーディアン>に肯定的だった彼も、やがて捩れていく人生に翻弄されるようになる。それは人類全体も同様であった。

本のオビに「SF私小説」とあるが、それが本書を一言で表現していると思う。著者自身の家族や人間関係がほぼ実名で登場し、自身がSF的状況に置かれたときにどのような感情を抱き、どのような行動をとるかが描かれる。もともと、著者の作品は自身の価値観が如実に現れているものが多い。例えば、論理的な結論ではなく感情で動く人間の愚かしさや、物理法則を無視して”自分理論”を組み立てる”トンデモさん”への否定的な思いだ。だが、本作品では自分も愚かな人類の一員であり、”トンデモさん”と紙一重であることを内省する。まさに私小説だ。そしてそれが、SF的な状況を読者の身近に引き寄せる効果を上げている。
もちろん、SF的要素も手は抜かれてない。徐々に悪化していく世界情勢とラストのどんでん返しはなかなかのもの。エンターテイメントの要素もしっかりした、バランスのよい作品だ。

2010/02 PHP研究所/ハードカバー

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