書評<オシム 勝つ日本>
監督として彼が実践するサッカーのみならず、そのメッセージ性溢れる言葉とカリスマ性になんとも魅力を感じさせる全日本代表監督、イビチャ・オシム。彼が日本のサッカー界の現状や、世界のサッカー界を見渡し、彼独特の分析をまとめた1冊。
「Number」その他スポーツ誌の連載などが初出であり、彼の言動を負ってきた者ならば、特別新しい解釈などはない。リスクを背負うことを嫌う日本のサッカー選手たちに喝を入れ、マネーが巡るビジネスの舞台と化したヨーロッパのサッカー界の現状を憂う。
しかしながら、彼の広い人脈とサッカーへの愛ゆえ、常に新しい価値観を提供してくれるのも確かだ。岡田現代表監督はじめとして日本のサッカーは「前線からのプレス」で時代が止まっているような気がするが、パスの正確さやポジショニングなど、サッカーはハンドボールやバスケットボールが持つ要素を取り入れてなお進化中である。彼が日本代表監督のままであったなら、それら新しい価値観を日本サッカー界にいち早く取り入れてくれたのではないか?つくづくも病に倒れたのは痛恨であった。
初版2010/04 文藝春秋/ソフトカバー
« 書評<傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学> | Main | 書評<全体主義> »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 書評<ベリングキャット ――デジタルハンター、国家の嘘を暴く>(2022.08.28)
- 書評<バルサ・コンプレックス “ドリームチーム”&”FCメッシ”までの栄光と凋落>(2022.05.25)
- 書評<冷蔵と人間の歴史>(2022.05.24)
- 書評<ザ・コーポレーション>(2022.05.23)
- 書評<狩りの思考法>(2022.04.19)
The comments to this entry are closed.
Comments