書評<古代文明と気候大変動―人類の運命を変えた二万年史>
地球温暖化による危機が叫ばれる昨今だが、ホモ・サピエンスがその歩みをはじめた時から、人類はずっと気候変動に翻弄されてきた。1万5千年前に氷河期が終わったとはいえ、氷河の融解や海流の変化などにより、気候は常に大変動と小変動を繰り返す。人類はそのたびに移動を繰り返しながらも、文明を築き始める。だが、農業が始まり、都市が形成され始めて発展を続けながらも、なおも気候変動が人類に襲い掛かり、そのたびに栄枯盛衰を繰り返していく。本書は世界の気候の変化を丹念に追いながら、ユーラシアと南北アメリカ大陸を中心に気候と古代文明の栄枯盛衰との関係を解き明かしていく。
ホモ・サピエンスがアフリカから長い旅を始めたその当初から、人類は気候変動の脅威にさらされ、移動してきた。本書を読むと、世界への拡散・適応という人類発展の歴史というよりは、むしろ必要にせまられて移動し、定住地を築いてはそれが崩壊することを繰り返した歴史であるとも思える。巨大都市が世界各地に築かれ、機械的生産ともいえる農業と畜産に支えられる現代でも、その脆弱性が変わらないが、人類にもはや移動するところはない。それをどこまでテクノロジーでカバーできるのか?本書は歴史のみを追うが、そんなことを考えさせられる歴史書である。
自分は現在の地球温暖化を声高に叫ぶ論調には疑問を覚える立場だが、本書を読むとますますその思いを強くする。人類はいつだって気候変動にさらされてきたのだ。なぜ今だけ、それが人類だけのせいだとし、危機感を煽るのか。フシギである。
初版2008/04 河出書房新社/河出文庫
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