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2010.06.17

書評<これからの「正義」の話をしよう>

NHK教育でも放映されている、著者であるサンデル教授のハーバード大学での講義をまとめた政治哲学の本である。カントやアリストテレスといった古典的な哲学から、ロールズに代表される現代思想を、それぞれの思想をアメリカが現実に抱える問題に当てはめて、分かりやすく解説されている。アファマーティブ・アクション、代理出産、志願兵制といった論争がある問題について、哲学の巨匠たちが生きていたらどんなふうに”正義”を見出していたか、著者が解説していく。

当たり前の話だが、”正義”はそれぞれの立場でまるで異なる。著者は哲学者たちの思想の根本を噛み砕いて解説した後、実際の問題に当てはめて、それぞれの主張の有利・不利をみていく。その中心がいわゆる”最大多数の最大幸福”の「功利主義」、アメリカでは保守派である「自由至上」主義、ロールズの平等思想である。それぞれの思想は正しく、また間違っている。著者は解答らしきものをちらつかせるが、それとて絶対的なものではない。だが、読者自らの価値観はどの思想に近く、それがどんな問題があるのかはみえてくるだろう。例えば自分は功利主義に非常に近いが、それに限界があることがみえてくる。自分の考えを整理するうえで、有益な本であるといえるだろう。

初版2010/05 早川書房/ハードカバー

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