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2010.07.25

書評<地球温暖化スキャンダル>


日本ではあまり報じられることのなかった、クライメートゲート・スキャンダルを扱ったノンフィクション。クライメートゲート・スキャンダルとはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)にて発表される報告書を作成する科学者たちのメールのやり取りが大量に流出し、自らの理論に不利なデータを無視して不正確な気候変動グラフを作成したり、いわゆる”温暖化懐疑派”の論文を掲載しないよう、科学誌に圧力をかけたりした事実が発覚した事件である。本書はメールのやり取りから”肯定派チーム”の科学者たちの行動や心理状態を時系列に推察し、それに”懐疑派”の中心である科学者のブログと対比することによって、IPCCで発表された報告書の不正確さを告発する。

英語の略語や登場人物の多さ、また当然のように頻出する専門用語のせいで、決して読みやすい本ではない。しかし、地球温暖化やインターネットに対し、様々なことが印象に残る。一つめはブログと”ネット上の匿名集団”がIPCCのような国際機関に圧力をかけられること。例えば、ブログの読者たちは気温観測のデータがいかに不正確かを暴くために、何百とある気象観測点に実際に出向き、その”ひどさ”を暴く。例えばコメント欄で政府への情報開示請求の結果を報告する。同じネットの住民として、何か誇らしげですらある。二つめは、科学者たちも結局は”政治家”であること。研究費の助成を得るために、なんとしても自説の正しさに固執し、意図的にデータを無視する。それはもはや科学者ではない。しかしながら、そのような声の大きな科学者たちが危機感を煽ることによって、世界の流れが変わるのである。
科学と政治の関係をもっと考えなければなるまい、と考えさせられ、またネットという道具は政治家と科学者にとって厄介な道具なんだろうな、とつくづく感じさせるノンフィクションである。

初版2010/06 日本評論社/ソフトカバー

2010.07.21

書評<押井守の映像日記 実写映画 オトナの事情>

押井守カントクが、スカパーの映画チャンネルで流れている映画をテキトーに見て、その映画に関して書いたレビューをまとめたもの。3年ぶりの続編となる。あくまで日常の中でテキトーに見た(しかも全部見てないものがほとんど)映画の感想をつぶやいたものであり、後半はヨーロッパサッカーに話がとぶなど、まあカントクの日常エッセイであり、押井信者以外にはお薦めできない。しかしながら、映画監督という人種がどのように映画というものを捉えているか、それとなく分かるのが面白いし、自分自身の映画を見る目がさほど異端でもないのかな、と感じさせるエッセイだ。
・・・などと思うのも、オレが押井信者だからですね、たぶん。

初版2010/06 徳間書店/ソフトカバー

2010.07.20

書評<土の文明史>

ホモ・サピエンスがいわゆる農業を始めて以後、その歴史は常に”土”とともにあった。早くも紀元前のローマ帝国時代には、人々はその土の持つ力と、それを保つ方法を掴んでいた。だが、無雑作に開墾を進める人々はそのことを顧みずに土地を”使い捨て”し、いくつもの文明が土の滋養を失うことにより滅亡していった。それは何も古代のことだけではなく、欧米が植民地のプランテーションを抱えていたごく最近まで起こっていたことである。本書は農業の創成期から現代の”緑の革命”まで詳細に分析し、幾多の文明の盛衰と、人類と農業の行く末を解説していく。

先日は気候の変動が人類の歴史を変えていくことを解説した本を取り上げたが、本書は”土”と文明の関わりを解説していくものである。農業に疎い読者にも分かるように解説されている箇所があるかと思えば、「緑の革命」といった重要事項をサラリと流すなど、内容にややアンバランスな面もあるが、土が文明の発展に果たしてきた役割が詳細に分かるし、それを他分野の学問とも結びつけることができる。例えば、今現在の世界情勢では今一歩、一昔前の領土拡張への欲望が理解できないが、本書を読めば肥沃な土地を確保することがいかに国力に必要なことか理解できる。
個人的に印象に残るのは、やはり化学肥料の使用と品種改良という「緑の革命」だ。産業革命は世界の工業化を推し進めたが、また「緑の革命」にも必須だった。産業革命がなければ窒素の固定化といった技術も確立できなかったであろう。人類の歴史は、どんな分野も互いに密接につながりがあると再確認した本であった。

初版/2010/04 築地書館/ハードカバー

2010.07.19

書評<環境活動家のウソ八百>

グリーンピースに代表されるNGOから国連の内部部局まで、世界は”環境保護”が絶対正義のようにうたわれている。しかしながら、その活動に勤しむ人たちは科学的データを意図的に無視し、世界に危機を煽る。本書はそうした環境保護活動家たちの現実を、その思想から彼らの提供する科学的データの意図的なねじ曲げを明かし、彼らの偽善を暴いていく。

原著の著者はイタリア人。なので環境保護活動家の偽善を明かすにしても、まずは優生学に基づくバース・コントロールから始めていくあたりが、カトリック的な宗教的背景が見えて面白い。アフリカの人口爆発を一部でカトリックのせいにされていることへの反論的な部分もあるのだろう。
それと、「環境活動家のウソ八百」と言い切るには、やや矛盾をはらんでいるところもある。例えばアマゾンの熱帯雨林伐採により、いかにも世界の森林面積が減少しているかのような印象を受けるが、実際には森林面積は増加している。このことを扱った章ではヨーロッパでは「植林や保護計画により」森林が増加した、とある。保護活動家が声を上げたから保護計画が生まれたことは否定できまい。このことから、むしろ環境保護活動家がウソ百百を並べているというより、もはやその役目はもはや終了しつつある、というべきであろう。革命家や政治運動家が本来の目的を見失っていくのは、サヨク的活動の常であるとつくづく感じる。

書評2008/08 洋泉社/洋泉社新書

2010.07.12

書評<ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり〈1〉接触編>


<BERSERGAさん推奨>

平和ボケした日本の東京・銀座に、<ゲート>と呼ばれる異世界への門が突然、開かれた。なだれ込む異世界の兵隊と怪物たちは白昼の都会で虐殺を繰り広げたが、やがて自衛隊は反撃。ゲートの”向こう側”に突入、橋頭堡を確保し、守備を固めた。異世界の兵隊たちは橋頭堡に何度か総攻撃を仕掛けるが、自衛隊の火力がこれをしりぞけ、とりあえず事態は落ち着いていた。
その駐屯部隊に所属する伊丹二尉率いる小隊は、敵地域の偵察中、小さな村がドラゴンに襲われるところに出くわし、ドラゴンを撃退、村人たちを助けた。この出来事以後、伊丹たちの異世界の少女たちの奇妙な交流が始まることになる。

「ファンタジー世界で自衛隊はどのように戦うか」を描く仮想戦記。明らかにどこかで見たようなキャラや台詞回し、いわゆる中二病的なキャラクター設定(オタクな自衛隊員である主人公が実はレンジャー資格持ちとか)と、いかにも同人誌的な物語。だが著者が元自衛隊員ということで、ディテールにはこだわりがあるし、政治的なメッセージも濃い。世界観が受け入れられれば、しごく楽しめる物語だ。

初版2010/04 アルファポリス/ソフトカバー

2010.07.11

陸自富士学校・富士駐屯地記念行事に行ってきた

今にも雨が降りそうな天気でしたが、陸自富士学校駐屯地56周年記念行事に行ってきた。
富士学校は「普通科、野戦特科、機甲科及び普通科部隊・特科部隊・機甲科部隊の相互協同に必要な知識・技能を修得させるための教育訓練」、つまるところ特技訓練や上級幹部教育課程を履修する学校で、ミリオタには陸自で最高の技量を持つ教導隊が所属することで有名な駐屯地です。
備忘録を兼ねているので、前置きにお付き合いください。自宅を6:15に出発、当地の駐車場に7:30に到着。開門の8:30には少し早すぎたかと思ったら、すでに正門前には長蛇の列。開門が繰り上がったのか8:00から列が動き、8:30くらいにはすでに観閲行進会場に到着。会場正面の一般席はグランドまで距離がありそうなので、90式戦車が近くにパークしていたグラウンドサイドに陣取ります。
霧が出てきたりして、天気に気をもみながら、しばし待つこと約2時間。エライ人の訓辞の後、ようやく観閲行進が始まります。このとき、ポジションに大誤算があることが判明。観閲行進する車両はグラウンドを一周すると思ったら、遠くの観閲席の前を通り過ぎるとそのままグラウンド外へ。300mmをかまえてもようやく車両が捉えられるくらい。今日の主役もこのパターンだったらどうしよう・・・と音楽隊の演奏を聴きながらドキドキしていたら、ようやく今日の主役が登場。新装備として、わざわざ別途にプログラムを立てて、10式戦車の走行展示が始まりました。
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ノーマルの車両とフロントにドーザーを取り付けた車両の2台が登場。ちゃんとグラウンドを周回してくれました。
実車を見た第一印象は、ギュッと凝縮された車両だなあということ。車体の幅の割に砲塔が大きく(車体が小さいというべきか)、北海道で90式戦車を見慣れた目からするとコンパクトなMBTです。10tの差は大きい。90式と同口径・口径長の120mm滑腔砲を搭載していますが、鋭い角度を持つ増加装甲のせいか、砲身が短く見えます。
さらにグラウンド中央でスラロームと急停止、バックを見せます。
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機動性は見る限りは90式と大差なし。主砲発射時の反動をやわらげ、命中率を上げるためにアクティブ・サスペンションが機能するといわれていますが、90式との差は素人目には判断がつかず。
ここで走行展示が終了。いやはや、いざとなると慌ててロクな写真が撮影できず。でも、来た甲斐がありました。
お次は模擬訓練展示。特科部隊が目の前に陣取り、特科の射撃の他は硝煙であんまり動きがよく分からず。
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目の前でFH70と203mm自走榴弾砲がバンバン空砲を射撃。見事な連携でした。
そんなこんなで式典が終了。富士学校、意外と施設がせまいので、訓練展示場で午後から装備品展示ということでしたが、雨がポツポツきていたので、早々に撤収。意外と渋滞もなくスッと帰宅できました。

初めて行った駐屯地、しかも首都圏から観光バスが数十台詰め掛けるという人の多さから、よく撮影ポイントが分からず、撮影できたものが少なかったです。しかし、ベスポジも分かったので、来年への糧ということで。
とりあえず、10式戦車を見ることができてよかったっす。

2010.07.10

TORNADO F.Mk.3 Completed

パナビア・トーネードF.Mk.3<イタリア空軍仕様>、完成しました。
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パナビア・トーネードはイギリス・西ドイツ(当時)・イタリアが共同開発した戦闘攻撃機です。本来はVG翼とスラストリバーサーの採用により、全天候低空侵攻能力とSTOL性能を追及した攻撃機(IDSと呼称)ですが、イギリス空軍向けにADVと呼ばれる防空型も開発されました。これがトーネードF.Mk.2/3で、機首部分が延長されややスマートな外形となっています。
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イタリア空軍はIDSと電子偵察型のECRを運用していましたが、F-104Sの退役とユーロファイター・タイフーンの開発遅延による配備の遅れのギャップを埋めるため、イギリス空軍からトーネードF.Mk.3をリースしました。ところが、度重なるトラブルと高い運用コストに音を上げ、トーネードを返却し、アメリカからF-16ADFを再リースしています。イタリア空軍の整備体制がよくなかったと信じたい・・・。
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キットはハセガワの限定版をストレート組み。ピトー管のみホビーデカールの金属製挽き物に交換しています。あっさりスジ彫りのハセガワ・スタンダードで組み立てには難なしですが、ヒケと突き出しピン跡多し!全部が全部は修正できていません。主翼は可動式ですが、塗装とパイロンの都合により、一部をカットして差し込み式にして固定。そのパイロンにはサイドワインダーのランチャーをジャンクパーツから追加しています。
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塗装は2002年のタイガーミート参加機をカルトグラフのデカールにて再現。12°Gruppo/351Fright所属機です。上面クレオスC334/下面C332の制空迷彩をビン生で吹きつけ、記念塗装機ということで、ウェザリングは最低限にしています。
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これにてHME2010の統一テーマ”タイガー”向けの作品はとりあえず終了。準備は整いました。
さて、次もVG翼でいきます。一人可変翼祭り、継続中です。

2010.07.08

書評<神父と頭蓋骨>

ときは20世紀初頭、科学の発展により、ヨーロッパの人々がキリスト教のくびきから徐々に逃れようとしていた時代。とはいえ、まだまだ協会は絶大な影響力を有しており、その先兵たる神父が、聖書に反する科学、すなわち進化論を認め、それを人々に広めることなど、許されることではなかった。しかし、敬虔なイエズス会士であったピエール・テイヤール・ド・シャルダンは一流の地質学者、古生物学者であり、進化論が正しいことを認識しており、それは彼の中で聖書と矛盾するものではなかった。しかし、協会は彼を危険思想を抱く神父として警戒し、フランスから中国へ一種の”流刑”に処す。しかし、ティヤールはそこでも研究を続け、人と類人猿のミッシング・リンクたる北京原人の発掘に関わることとなる。

カトリック教会に危険視され、そのころの文化の中心地であるパリを追われながらも、自分の信念を貫いて研究を続けた神父兼古生物学者の伝記である。しかしながら、ティヤールの波乱に満ちた人生を追うのに精いっぱいで、読者が一番知りたいと思われる、宗教的信念と科学的信念の彼の心の中での葛藤はさらっと流されており、不満の残る内容だ。また、ティヤールは物圏、植物圏、動物圏、精神圏といった階層的な”スフィア”で地球圏が成り立っているという独自の観念を持つことで知られているが、ここらへんもさらっと流されている。「神父と頭蓋骨」というタイトルなら、ティアールの恋愛話などにページをさかず、ここらへんに伝記の中心をおいてもよかったのではないか。少々不満の残る内容であった。

初版2010/06 早川書房/ハードカバー

2010.07.06

TORNADO F.Mk.3 Day4th

ダラっとしたい振り替え休日にムチ打って、イタリア空軍仕様のトーネードF.Mk.3はデカール貼り。
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このキットはカルトグラフ製のデカールが付属しており、質そのものは高いのですが、胴体上のウォークエリアを示す点線が全体を覆う仕様のため、シルバリングに気を使います。乾いたころを見計らってデカールソフターを塗布することを2、3回繰り返し、徹底的に空気を抜きます。カルトグラフの強靭なデカールだからできることですが。
それと、垂直尾翼のタイガーさんは小翼にかかるため、小翼は後付がお薦め。自分の場合は何も考えずに接着して塗装していたので、現状合わせでカッターで切り込みを入れて、なんとか密着させています。
カルトとはいえ、やはりクリアーを塗布して塗面を平滑にして貼らないと、時間ばっかり消費するとちょっと反省。今週末には完成までもっていきましょう。

2010.07.05

書評<世界の駄っ作機 番外編〈2〉―蛇の目の花園>

スケールエヴィエーション誌に連載中の岡部いさく氏のエッセイをまとめたもの。モデルグラフィックス誌の「世界の駄っ作機」とのつながりで「番外編」になっているが、本書はメジャー機も含めて”知られざるイギリス機”を紹介している。自分的には仮想機だがTSR.2の湾岸戦争仕様や、アードヴァークのイギリス空軍仕様であるF-111Kなんかが面白かったし、プラモの製作意欲をそそる。てゆうか、連載中にそのエッセイを読んで製作を始めたものの、TSR.2はエアフィックスの新キットのあまりの出来に途中で投げ出しちゃったんだよね。個人的にはちょっと反省を促された一冊でした。

初版2010/06 大日本絵画/ハードカバー

2010.07.04

TORNADO F.Mk.3 Day3rd

暑さが本格的になってきました。コンプレッサーに常時装備のレギュレーターに加えて、エアブラシ側にドレン&ダストキャッチャーを追加してトーネードの全体塗装開始。
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端折ったDay2はサンドペーパー掛けに費やしています。後部胴体に大きなヒケがあるのですが、見て見ぬふりしてる部分もあり。目立たないかと思ってたら、塗装したら案外と目立つので、みなさんは根気よく処理してください。ピトー管はホビーデカールというたぶん韓国のアフターパーツメーカー製に交換。

さて塗装ですが、コクピット付近、ギア・ベイはあらかじめ塗装、マスキングしています。トーネードは戦術戦闘機には珍しくスラストリバーサーを装備しているので、ジェットノズル付近の塗り分けが意外と面倒。クレオスのスーパーアイアンを中心に先に塗装してマスキングしています。
全体塗装はレドームがクレオスC334にC336を20%ほど加えたもの。下面はC332、上面はC334と、当たり前ですがイギリス空軍の現用制空迷彩です。
今回は大きな塗り直しをすることなく無事終了。夏に向けて仕事が忙しくなりそうなので、手早く進めます。

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